2015 Fiscal Year Research-status Report
事業継続の実効性を高める復旧時間の予測法に関する研究
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26420566
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
山岸 邦彰 金沢工業大学, 環境・建築学部, 教授 (70553189)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 立地リスク / フラジリティ曲線 / ハザード曲線 / 自然災害リスク / 事業環境リスク / イベントツリー解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では以下の5項目について研究・検討を行った。 (1)複数分岐を有するイベントによる理論構築および(2)イベントツリー解析との比較および精度確認⇒⇒⇒理論の構築を行った。しかし、計算結果は2分岐イベントとそれほど大きな差異が見られなかった。寧ろ、各イベントの発生確率を規定する被害率(フラジリティ曲線)の精度が重要である。(5)とも関係するが、強風リスクを中心に表記検討を行った。 (3)生産設備等の耐震強度実験⇒⇒⇒2011年東北地方太平洋沖地震の後に実施した事業アンケート調査によれば、生産施設(工場)において地震に起因する事業中断理由の最大要因は生産設備の故障などであった。しかし、これらの設備を床などの固定部分の破損や、固定したことにより生じた大きな加速度が慣性力となり設備等を破損させている。本実験では、設備の固定を解除した場合の設備の地震時挙動、およびそれに伴う建築物の挙動を実験で確認した。 (4)フラジリティ曲線の作成⇒⇒⇒地震を対象としたフラジリティ曲線は概ね完成したため、他の災害のフラジリティ曲線の考案を行った。ここでは洪水、津波、積雪、強風の各フラジリティ曲線を構築した。しかし、計算結果が実況を反映していない結果も見られ、フラジリティ曲線の修正が必要である。 (5)立地リスク予測法の確立⇒⇒⇒(4)と関連するがフラジリティ曲線と同時にハザード曲線を作成し地震を含めた5種類の災害に対する立地リスクを計算した。計算結果が実情とずれていると思われる部分もあり、研究成果を発表するには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前記(1)~(5)に着手し、概ね所期の課題の把握と技術的解決に向けた研究を行えている。しかし、平成28年度が最終年度であることを考え、範囲を限定し、本テーマの着地点を明確にする必要がある。また、これまでの研究から方向性を変えるべきものが生じたため、一部研究内容を変更している。前述の(3)について、実際は設備固定の耐力の実験予定であったが、フラジリティ曲線を検討している過程で、固定していない設備や什器の移動(すべり)がそれらの被害率、さらには建築物の被害率に影響することが分かった。そこで、設備などの重量物のすべりがフラジリティ曲線に与える影響を主に研究を行っている。また、最終的には(5)を発展させてプログラムを公開するところを平成28年度に予定している。現在プログラム作成に着手しているが、昨年度の研究進捗状況を踏まえて、対象災害などを限定する可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では以下の2点について明らかにすることが期首の目標である。しかし、前述の変更点を踏まえ、今後の推進方策を以下のとおりとする。 (1)前年度までの結果を反映したロジックの修正およびプログラム作成 修正点が想定していたものよりやや多い状況である。今後は、雷、火山噴火、土砂災害を自然災害リスクの対象に加えて実施するが、以上を限度とし、これ以外の自然災害リスクの研究には着手しない。また、事業環境リスクについては物流リスクについて検討を行ったが、それ以外には送電リスクを加えるのみとする。また、研究者(学部生や院生)を増員し、平成26年度では4名、平成27年度では1名だった研究者を8名に増員し、課題解決に取り組む。また、プログラムを検証するためのツールを複数購入し、同時並行で研究課題に取り組む予定である。 (2)プログラム公開 平成28年度中に、前述のプログラムをホームページを通じて公開する。ただ公開しても利用が促進されないと考えられるため、学協会等への情報発信や、地元企業が集まる会合を通じて、プログラムの紹介や利用方法の伝達を行う。また、本申請研究とは別に地元企業を対象とした事業継続に関する研究会を開催する予定である。この研究会における参加企業を対象として,本予測法の適用を図ることも視野に入れている。しかし、研究者(学部生、院生)のプログラム作成スキルは高くない。現在、ゼミなどを通してプログラム作成スキルの学習を行い、各リスク算定において研究者のポテンシャルを上げていきたい。また、適切な時期にプログラムの外注化も視野に入れる。 以上のことを平成28年度の主な研究推進方策とする。
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Causes of Carryover |
本来、振動実験用のジグ類を購入する予定で予算化していたが、実験の必要性を検討した結果、当初予定していた実験を実施しないことになった。その金額が突出しているため、次年度使用額が増加している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、昨年度予定していた実験に変わる、新たな実験を実施する予定である。そのため、次年度使用額をすべて消化する予定である。具体的には、前述した設備機器の滑動(すべり)による変位を推定するための実験と、滑動により付随的に生じる建築物の応答低減を推定するための実験を予定している。5~6月にこれらの実験を行う予定であり、10~11月に部材の摩擦実験を行う予定である。また、実験計画を変更しているために予算に過不足が生じる可能性がある。予算に残金が生じる場合は、実験を補充するために解析プログラムの購入費に充当し、実験を補充する研究を行う予定である。
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Research Products
(3 results)