2014 Fiscal Year Research-status Report
水ミスト噴霧による快適空間の創出のための設計手法の構築
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26420588
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
成田 健一 日本工業大学, 工学部, 教授 (20189210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三坂 育正 日本工業大学, 工学部, 教授 (30416622)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒートアイランド / 蒸発冷却 / 体感温度 / 暑熱緩和 / 音仮温度 / 超音波風速温度計 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、日本工業大学のキャンパス内に実験サイトを作成し、主に物理量の計測を行なった。実験サイトは、幹線道路の歩道空間を念頭に幅3.6m、日除けを設置する高さを3mとし、長さ方向は14.4mとした。風の影響を考慮するために、片側にプラスチック製の透明な波板を組み合わせて取り付けた。屋根面には、布製の遮蔽材を取り付けた。ミストノズルは2.5m高さに1.8m間隔で2列、計16個取り付けた。今回の噴霧量はノズル1個当たり約45g/minである。ノズルにビニールチューブをかぶせることで、圧力と噴霧量を変えずに、ノズルの数を変化させながら実験を行った。今回は、超音波風速温度計を9台用いて、微細水ミスト噴霧による気温低下領域と気温変動(1秒毎)を測定した。 1秒毎のデータでは、弱風時に最大5℃程度の気温低下が起こっていた。しかしながら10秒平均では最大低下量は3℃、1分平均では2℃となっており、気温低下が非常に瞬時的な現象であることがわかった。経時変化を詳細に検討すると、3℃を超える気温低下は大半が数秒の持続時間となっていた。ただし、一時的に静穏となった条件では、高さ0.75mで数分間3℃を超える気温低下が持続する現象も見られた。 水平風速による風下方向への気温低下領域の広がりを検討した結果、ミストを噴霧しているノズルの直下付近では、無風条件で気温低下量が大きくなるが、風速が大きくなると気温低下はほとんど見られなくなった。一方、風下側の各センサーでは、無風時には気温低下が見られないのに対し、成分風速が大きくなるにしたがって気温低下が現われた。なお、気温低下量の大きさはノズルからの距離とともに小さくなっていた。 以上のように、音仮温度を用いた気温計測により、微細水ミスト噴霧による気温低下の瞬時変動と、その空間的な広がりを把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、実験で変化させる要素として、ミスト噴霧高さ、ノズルの密度、ミストの粒径、を考えていた。ノズルからの距離(噴霧高さ)とノズルの密度については実験できたが、ミストの粒径変化についてはデータ取得ができていない。また、ミスト蒸発に及ぼす日射熱の影響を把握するため、遮蔽率が異なる日除けを設置した状態での計測もあわせて実施し、気温低下量から日射影響の検討を試みるという予定であったが、これについてもデータ取得に至らなかった。さらに、皮膚に付着したミストの蒸発冷却効果を検討するため、赤外線放射カメラの高周波計測も予定していたが、系統的なデータ取得には至らなかった。 以上のように予定した実験データが取得できなかった背景には、使用した超音波風速温度計の温度目盛りの経時変化が予想外に大きく、その補正に手間取ったという点があった。以前使用していた超音波風速温度計では、絶対目盛の補正は不可欠ではあったが、一旦校正を行えば、連続的にそのキャリブレーション値を用いることができた。しかしながら今回使用した測器では、バックグラウンドの気温との差が1日の内でも大きい場合には数度ずれるという結果となった。しかも9台使用した測器のずれ方に系統性がなく、気温や湿度など、様々な誤差要因を検討したが、明確な原因は把握できなかった。そのため、2時間おき程度に温度目盛り校正用のデータを取得しながら実験するという対応をとらざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に計画した実験の一部についてデータ取得ができていないという点を踏まえ、2年目の平成27年度は、当初梅雨明けから予定していた実験スケジュールを繰り上げ、5月初旬から昨年度実施できなかった追加実験を行うこととした。 平成27年度は、人体の快適性評価につなげるため、初年度の物理実験を踏まえた被験者実験を実施する予定である。初年度の成果として、ミストによる気温低下がかなり瞬時的であることが把握されたことから、そのような気温変動を踏まえた被験者実験を計画する。また、皮膚の濡れの影響についても、赤外線放射カメラの高周波計測から表面温度変化の動画を取得することで検討を試みる。 自然環境下の屋外被験者実験であるため、被験者の継続的な確保がなかなか困難であるが、当初計画通り8名程度の固定被験者による繰り返し実験を予定している。
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Causes of Carryover |
未使用額は、予算の0.3%であり、おおむね予定の予算が執行されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験期間を予定より長くするため、当初計画よりレンタル費が増額となる。未使用額はその一部として補てんする。
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Research Products
(1 results)