2015 Fiscal Year Research-status Report
欧州中都市における都市農業の戦略的意味に関する研究 ―スペインを中心に
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26420600
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡部 明子 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70361615)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 都市農業 / 縮小都市 / サラゴサ / バレンシア |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、スペイン地方中都市のサラゴサとバレンシアとデンマークの首都コペンハーゲンにて現地調査を行い、都市農業の「戦略的意味」に関する研究を発展させた。 サラゴサは、市当局、民間企業、市民が上手く連携し都市農業事業を展開させている。①市当局は、都市農園の立地条件として、各地区に1か所、また都市を囲むグリーンベルト周辺に設けるよう規定している。②市街地全域を市当局が担当している一方で、旧市街地で民間企業が公共空間再生プロジェクトの一環として都市農園を建設したり、河川敷には市民がインフォーマルに都市農園を建設したり、多様な主体による都市農園事業が共存していることもサラゴサの特徴として挙げられる。サラゴサの都市農業に関する一連の研究は、「佐倉弘祐:『都市農業による空き空間の再編-スペイン地方中都市サラゴサを対象に-』、龍谷政策学論集第5巻第2号、龍谷大学、2016年3月」として公表した。 バレンシアでは、前年度の現地調査を踏まえ、本研究の代表研究者、連携研究者2名とバレンシア工科大学の教授2名、建築家1名の計6名がバレンシア工科大学に集結し、「縮小都市時代における都市農業の在り方」についてラウンドテーブルを開催し、意見を交わした。また6名で、市民が主体となり行う都市農業について「ベニマクレット町内会」へのヒアリング調査、現地視察も行った。市当局によるトップダウンの都市農業政策には限界があり、市民が自ら都市農園を建設させていくことで、実際にその地域が変わってきている現状を把握した。 コペンハーゲンでは、都市農業を持続的に推進させるために、ビジネスとして定着させる取り組みとして、「Tag Tomato」と「Ostergro」という団体へのヒアリング調査を実施した。屋上菜園にレストランを併設、ベランダ菜園用の優れたアイテムの販売など巧みなビジネス戦略によって都市農業を推進している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)今回のバレンシア、サラゴサ調査によって、「今後都市が縮小していく中で、どの空き空間を優先的に都市農業として転用していくべきか?」という我々が設定した課題に対し、市当局が主体となる場合と市民が主体となる場合の選定条件をある程度明確にすることができた。 2)申請当初では想定していなかったが、コペンハーゲンの現地調査により、都市農業をビジネスとして定着させるための術についても研究することができ、申請当初より広がりを持った研究へと展開できている。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね計画の変更はなし。 前年度までの現地調査、入手した文献、ヒアリング調査の録音データを最大限に活用し、欧州諸都市、特にスペイン地方中都市における「都市農業の戦略的意味」について研究・分析を行い、「研究の目的」の達成を目指す。 代表研究者、連携研究者による研究会の開催、海外共同研究者との情報共有、国際シンポジウムによる成果の公表を行う。
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Research Products
(4 results)