2014 Fiscal Year Research-status Report
津波浸水想定に基づく津波避難施設のあり方に関する研究
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26420601
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
安藤 尚一 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (90716292)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 津波避難ビル / 津波浸水想定 / 東日本大震災 / 南海トラフ地震 / 防災集団移転 |
Outline of Annual Research Achievements |
3カ年の本研究の目的は、避難施設となる学校、庁舎や病院の立地、津波避難ビルの指定が、新たな津波浸水想定でどのように変化するか事例研究する。また、既存の津波避難施設が果たした役割を東北地方太平洋沖地震による津波被災地で検証し、その教訓を南海トラフによる巨大地震・津波の可能性の高い地域に適用する方策を研究することである。 初年度である平成26年度には、(1)東日本被災地における津波避難施設の果たした役割、(2)新たな津波浸水想定による水深5m以上の地区の状況、(3)津波避難ビル等の全国実態の把握分析を行い、特に(1)及び(3)については研究成果を得てそれぞれ学会等の場で発表した。特に2014年8月時点での津波避難施設の実態を整理分析し、対象とした東北被災地を含め全国事例から、津波避難ビルの取組みや施策、制度等の現状を明らかにした。 まず、(1)の東日本被災地における津波避難施設の果たした役割については、2014年10月に「東日本大震災被災地の津波避難ビル実態分析」を地域安全学会宮古WSで発表し、(2)の津波浸水想定改訂の全国調査を行いつつ、(3)の全国実態の把握を行った。その結果を2014年12月に「全国の津波避難ビルの実態と動向分析」にまとめ、地域安全学会全国大会で発表したところ、毎日新聞の第1面で紹介された。 さらに、2015年1月に東京大学で行われたTokyo Conference on International Study for Disaster Risk Reduction and Resilience にてTrend of Tsunami Evacuation Buildings in the Affected Regions by 2011 Tohoku (Great East Japan) Earthquake and Tsunamiと題して(1)を発表し、2015年3月に仙台で行われた国連防災世界会議でもその成果を建築研究所との共同出版物の形で紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、以前に科研費以外を使って別研究として行っていた「津波ハザードマップ」の全国調査をもとに始めており、全国の津波ハザードマップを集めた所から始まっている。2011年の東日本大震災以降、全国の海岸部を持つ自治体で急速に津波ハザード(避難)マップの作成が始まっていることを2013年に明らかにした際に、津波避難ビルの棟数情報を集めており、それが役に立った。 ただし、ハザードマップ調査の際から自治体ホームページに頼る調査の限界があり、本研究ではまず、情報収集の仕方を検討した。次に、様々な名称があることが分かっていたので、実態を正確に把握するために津波避難ビルの定義を明らかにした。中には高台の上にしかない施設を津波避難ビルと称している自治体もありそれらは対象から除外している。 事前と本研究の初期に、定義と資料を含めしっかりと集めたため、あとはパソコン上での集計分析作業を中心に初年度の研究のまとめを行っている。この作業だけでも3カ月かかったが、その間に地域ごとの特性、自治体の取り組み姿勢の違いなど様々な特徴が理解できた。成果は最初に地域安全学会で発表し、日本建築学会や2015年3月に仙台で行われた国連防災世界会議の場でも紹介した。英語でも論文としてまとめ、国際的に紹介できたことは計画以上の進展といえる。 さらに、東日本大震災被災地にも、岩手県、宮城県、福島県と一部ではあるが訪問する機会があり、津波からの復興と津波避難ビルのあり方について考察ができた。また次年度に向けて調査対象地域を絞ることも、全国調査の中から行え、特に南海トラフ地震津波のおそれの高い地域(のうち津波浸水想定が5m以上)で、今年度以降の調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は計画通り、南海トラフ地震津波のおそれの大きい地域の内から数県を選び調査を行う。また同時にこれまで2回実施し、国土交通省・内閣府のそれ以前の調査と合わせると合計4回実施されている津波避難ビルの全国調査を、本年度も同様に実施し、計4年間の津波避難ビルの動向を市町村ごとに把握する。 これまでの研究から、数では大都市圏に増加傾向がみられていたが、昨年調査では地方都市でも南海トラフ地震防災対策推進地域内の県庁所在都市などに顕著な増加傾向がみられていたので、その傾向が続いているかを調査する。その中から個別調査対象都市を選定し、詳細調査することも本年度実施する予定である。 最終的な目標である、津波避難施設のあり方については、自治体ヒアリング等を通じてその課題を体系的に分析することが必要である。特に制度面では土地利用規制や都市計画との関係の他、文教施設、医療福祉施設のそれぞれの行政分野ごとに、津波対策が開始されており、それらの整合性をどう図るかも自治体の課題になっていると思われる。 研究は物理的な側面から主に入っているが、今後はいくつか事例で、建設コスト、維持管理コストや自治体予算、国庫補助等の経済面からの調査分析を行い、課題を抽出するとともに解決方策も検討したい。
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Causes of Carryover |
国連防災世界会議の場でパブリックフォーラムの実施が認められたため別会合で来日していた外国の専門家を仙台まで連れて行くための旅費が計画外で生じた。その成果は以下のWebにも残り、国際的にも津波対策の重要性を訴えることができ、併せて海外のデータも入手できた。 http://www.wcdrr.org/conference/events/558 Disaster Management Policies - Preparedness against Large Tsunami and Earthquake
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後、旅費総額のうち今回予想を超えた約30万円を他の経費から調整をすることで、今年度以降の南海トラフ対象地域等への旅費を確保する予定です。
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Research Products
(10 results)