2015 Fiscal Year Research-status Report
変容過程からみた雁木町家の相隣関係と街路との相補的関係 -上越市3町の比較検討
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26420602
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| Research Institution | Niigata University |
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Principal Investigator |
黒野 弘靖 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80221951)
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| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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| Keywords | 雁木 / 水路 / 井戸 / 地縁組織 / 屋敷構え / 平面 / 変容過程 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は伝統的な街路空間である〈雁木〉について、近代以降に町家の更新されるなかで相隣関係が保持され、街路や主屋と一体となって相補的な空間システムが維持されてきた過程を把握することを目的としている。
平成27年度は、上越市内の城下町〈高田〉のうち、直線状の雁木通りと背割水路を特徴とする大町3丁目の1街区を選定した。さらに湊町〈直江津〉と街路村〈稲田〉について連続平面図を採取し、雁木と境界に表れた相隣関係を把握した。
城下町〈高田〉大町3丁目において屋敷裏側の水路と畑の利用を聞き取りし、上越市が保管する1978年の区画整理従前図から各戸の敷地裏側を含めた家屋配置を図面化し、水路利用や相隣関係に依拠する空間配置の型を把握した。湊町〈直江津〉については、前年度に選定した裏砂山町の3軒の並びについて現況連続平面図を作成し、1960年代の平面を聞き取りし、変容過程を分析した。街路村〈稲田〉については、前年度に選定した稲田1丁目について旧用水を挟んで向かい合う4軒の連続平面図を作成し、1960年代の平面を聞き取りし、変容過程を分析した。旧用水に沿いに雁行する町家の平面の出隅と入隅の利用、ならびにトオリニワと洗い場との位置関係を把握した。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度当初の研究実施計画では、城下町〈高田〉における屋敷裏側の小河川の共同利用の把握と連続平面図実測対象地の選定、湊町〈直江津〉裏砂山町と農村集落〈稲田〉稲田1丁目それぞれの連続平面図に表れた相隣関係の把握、湊町〈直江津〉裏砂山町における段差のある雁木と雁木下の共用井戸の設えの把握、街路村〈稲田〉稲田1丁目における雁行する雁木と入隅と出隅の利用の把握を予定していた。いずれも達成することができた。城下町〈高田〉については、現在も雁木通りが連続し、裏側に背割水路のある大町3丁目を選定し、利用と空間配置の型を把握できた。湊町〈直江津〉裏砂山町においては、通り中央の共用井戸と各戸の井戸との使い分け、ならびに井戸組と雁木通りの対応を把握できた。〈稲田〉については、当初在郷町と位置づけたが、連続平面図とその変容過程の分析により、農業を兼ねる雁木町家の自律的な働きかけにより用水沿いの街路景観がつくられてきたとわかった。また、史料により対象とした旧用水沿い雁木通りは町立てされた稲田竪町とは異なるとわかった。これにより位置づけを街路村に修正することができた。
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| Strategy for Future Research Activity |
当初計画で平成28年度に予定していたとおり、以下の4項目についての実測調査と実測データ図面化と分析を進める。まず、城下町〈高田〉では、大町3丁目を対象に連続する3軒の平面図を作成する。平成27年度に入手できた1978年区画整理従前図と比較分析する。つぎに連続立面図（現況と1960年代）にみられる採光方法の変化と相隣関係を把握する。城下町〈高田〉大町3丁目では、隣家側面に高窓を設けた雁木町家が隣家の建て替えに伴い天窓を設置するという採光方法の調整を確認できた。連続立面図を作成し、この変容過程を〈直江津〉や〈稲田〉とも比較する。第三に祭礼時の設えの図化による雁木空間の行動場面として把握する。城下町〈高田〉の日枝神社祭（5月）と寒修行（2月）、湊町〈直江津〉の祇園社祭（7月）、街路村〈稲田〉の諏訪社祭（5月）において、雁木空間における設えと行動を平面図･断面図・立面図中に図化する。最後に雁木通の相隣関係と相補的関係の比較による公共性の根拠を把握する。3地区の雁木通に共通する個性的な街路景観をもたらす根拠を把握するため、相隣関係と相補的関係を比較検討する。連携研究者が進める棚田の水利システムや柳川市の堀割水路の相補的関係、ならびに中国広州市の騎楼の調査結果とも比較し、雁木通の特性すなわち私領域に属する雁木空間がどのように都市の構成要素として公共性を獲得しているかを把握する。
平成28年度が最終年度にあたるため、申請者が研究成果をホームページに掲載し建築学会に論文を投稿する。報告書に係る資料整理と図面CADデータ化は、申請者が大学院生3名と学部生6名の補助を得ておこなう。
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| Causes of Carryover |
平成27年度には研究代表者が連携研究者と互換性のあるCADソフトウェア、パンフレット作成用ソフトウェア、ホームページ作成用ソフトウェアを購入しなかった。この理由は、当該ソフトウェアがクラウド型にアップデートされる予定と知ったことによる。平成28年度に図面の電子データ化が終了し、連携研究者とのデータの互換性を確認したうえでソフトウェアを購入すれば確実と判断したことによる。この結果、初年度から繰り越した消耗品費の支出が次年度使用額として生じた。
また、図面の電子データ化の作業については、町ごとに行うよりも複数の町のデータの揃った段階で行うことにより、比較分析を明快に進められると研究代表者が判断した。そして図面作成と図面整理に関する大学院生や4年生への作業依頼を最終年度にあたる平成28年度にすることにした。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度前期で実測作業は終了する。その後に図面作成と図面整理に関する大学院生や4年生への作業依頼をする（謝金）。図面化が終了した時点で、間違いなく連携研究者と互換できるソフトウェアを購入する（消耗品）。
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