2015 Fiscal Year Research-status Report
職員の負担軽減と入居者の活力ある生活を両立する高齢者施設の計画
Project/Area Number |
26420605
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
毛利 志保 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60424941)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 特別養護老人ホーム / 介護職員 / 労働環境 / 福祉機器 / 身体的負担 / 精神的負担 / 施設運営 / 活力ある生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的である「介護職員の負担軽減と入居者の活力ある生活の両立に向けた高齢者施設計画のありかた」に向け、一昨年度は「介護職員の身体的側面の負担軽減策」を把握するため、介護職員の動線の詳細分析(①)と福祉機器活用に関する実態調査(②)を行った。特に、①では、施設の平面形態により移動距離に大きく差が出るなど、施設の動線計画について新たな知見を得た。また、要介護度が進んだ場合の設備計画(トイレ、洗面の配置)について再検討の必要性が示唆された。②については、身体的負担を訴える職員は多いものの、介護方法に合致した福祉機器の活用は未だ浸透していないことが把握された。 こうした状況を受け、昨年度は、特に「浴室・脱衣室」に着目し、その計画実態の把握(38施設)を行ったうえで、抽出した3施設の全タイプの浴室について運営と介助手順の調査分析を行った。その結果、入浴介助は時間を要し介護職員の負担感に大きく影響を与えるにも関わらず、浴槽の規模面積がその介助動作に照らして過小・過大であるものが非常に多く、脱衣室が2つの浴室に接続しており入浴時の動線が交錯したりプライバシーが守れないものが3割以上あることが明らかとなった。また、運営面ではユニットケアを実践していながら専用の浴室を持たない施設では、利用調整のための職員負担が大きくなることが明らかとなった。 一方で、身体的な負担と同等以上と感じられている精神的負担およびその軽減策についての実態把握を行った(4施設へのヒアリング)。その結果、特に負担と感じる状況は、単独で業務に従事している夜間や翌朝であり、見守りができない、入居者からの心ない言葉や暴力を受けた際に強かった。負担軽減策としては、休憩空間の充実、死角空間の軽減が挙げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画に照らし、計画より遅れている内容があることから、総合的には「やや遅れている」と判断した。しかしながら、昨年度の計画内容においては既にデータ取得済みの箇所もあるうえ、今年度の総括に用いる際には計画段階以上の知見も得られていることから、総括には大きな影響を及ぼさないと思われる。 1)計画より遅れている箇所は、成果発表(計画系論文集)と「精神的負担要素の実態把握」であり、予備調査は実施済みだが、定量的調査を行う必要がある。 2)データ取得済みの箇所は、「入居者の生活時における姿勢データ」であり、当該年度については、遅れを取り戻すとともに、取得済みデータの分析を進めることとする。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の今年度は、介護職員の精神的負担軽減策の提示および入居者の活力ある生活を両立する施設モデルの提示を目的とし研究を遂行する。そのため、以下の調査研究を行う。 1)介護職員の精神的負担に関する定量的・質的把握 アンケート調査(M県下施設)については、昨年度得られた精神的負担軽減に関する空間・運営の工夫について、施設での実態調査を行い、その様相を探る。また、単独勤務時(早朝)の行動観察:特に負担の大きい時間帯に限定し行動観察を行う。職員の効率的な動きに配慮した施設とそうでない施設の比較から、行動と空間の関係を分析し、その差異を把握する。 2)入居者の活力の有効活用と介護職員の負担軽減の両立モデルの提示 生活リハビリの実践面での先駆的事例のケーススタディ(2施設)と理論的裏付けの確立のための文献調査を行う。ケーススタディについては、行動観察とヒアリングより、活力ある生活の要素について概念を整理する。また、理論的裏付については、北欧および英国の論文より分析を行い、それらを合わせて両立モデルについて提言を行う。
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