2014 Fiscal Year Research-status Report
近代期麗水地域の民家に関する調査研究―海洋文化圏の影響の視点からみた考察―
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26420607
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
金 貞均 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (10301318)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 伝統民家 / 近代民家 / 海洋文化圏 / 麗水地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近代期の韓国南部地方麗水地域の近代民家について日本の海洋文化圏の影響の側面から究明しようとするものである。そのために、①伝統民家が近代期の社会文化的変革の過程でどのように変化・発展してきたか、麗水地域の民家を対象に究明し、②麗水地域の近代民家の成立と実態を明らかにする、③麗水文化のアイデンティティは海洋に根拠を置くといわれており、麗水民家の海洋的性格を確認する、④近代民家の成立における日本の影響について考察し、麗水圏と九州圏をつなぐ海洋文化圏の検証につなげる知見を得ることを目的とする。今年度は研究の初年度としてまず文献により、「海洋文化圏」「民家」「麗水地域の伝統民家」「近代民家(近代期に建てられた民家)」など、本研究で用いる用語の意味を明確にした。麗水地域の調査対象民家は1970年代まで建てられた民家で、時期区分は1930年代以前、1945年代以前、1970年代以前の3区分した。調査資料等を通して考察した麗水地域の伝統民家は一列型平面で草家三間の小規模型が一般的である。近代期麗水地域の発展の様子をみると、天恵の漁場としての条件を備える麗水には、1915年愛知県移住漁村、1918年広島県移住漁村の助成で日本人の移住が増加し、1942年4262名まで増えている。その間日本の資金による水産関連会社の設立、麗水-釜山港の開設が麗水発展の起爆剤となる。麗水地域の伝統民家の変容実態を把握するため麗水地域の内陸の集落(召羅面)と一部の島嶼集落(華井面)に対して、基本資料の収集および現地調査(間取り、木架構造や部材率の確認および実測、外観・配置・建築材料の確認、マダン(庭)の構成方式等)を実施した。そして生活の変化を受容する内的空間要素として平面構成、配置形式など、空間構成要素の変化に注目して考察した。調査初年度でまだ比較考察までは至っていないが次の調査研究につながる有効な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究キーワードである「海洋文化圏」の範囲を韓国南部地方の海岸地域と地理的に近い九州圏と設定し、調査を進めていたが、資料調査で植民地期麗水地域に助成された愛知県と広島県からの漁民移住集落の存在が明らかになった。したがって愛知県と広島県の漁村集落とのつながりを確認する必要があり、九州圏の調査を見送った。
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Strategy for Future Research Activity |
日本植民地期麗水地域における愛知県と広島県の漁村集落とのつながりを確認したうえ、九州圏の漁村調査を行う。近代期日本九州圏の漁村民家の特徴と近代的要素に焦点を合わせ、以降の日韓比較研究の基盤となる近代的要因を明確にする。なお、前年度に引き続き韓国麗水地域の近代民家調査を実施する。次年度は概ね次の通り研究を進める。 ①近代期九州圏の漁村民家の特色について(文献考察、図面調査、現地調査):関連文献や調査資料等を用いて、近代期九州圏の漁村民家の伝統性と空間変容の実態を考察し、代表的漁村集落を選定する。選定集落の現地確認調査を行い、考察結果を用いて、韓国の近代民家分析の尺度を設定する。②韓国麗水地域の海岸地区を中心に研究対象民家の資料収集及び現地調査:麗水地域の海岸地区の漁村集落を対象に、基本資料の収集および確認を行う。なお、現地調査(間取り、木架構造や部材率の確認および実測、外観・配置・建築材料の確認、マダン(庭)の構成方式等)および写真撮影等を実施し、近代期に建てられた民家の様子を明らかにする。現地調査の際に居住者へのインタビューを行い、先祖と日本との交流事実、日本経験等を聞き取りする。③日本住宅の影響の視点から分析および考察:これまでの調査結果を用いて近代民家における日本の影響を、「空間拡大」「間取りの変化(複列化傾向、集中式平面)」「部屋の機能分化」「板の間の室内化」「廊下の導入」「建具の変化(カラス窓等)」「住棟配置およびマダン構成」「付属空間(便所、浴室)の導入」「近代的建築材料および建築構法」「生活動線と家事労働の軽減化」の側面から分析・考察する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた九州圏の漁村現地調査が研究計画の調整上実施できなっかたので、調査経費として計上した旅費が残ったのが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に実施できなかった九州圏の漁村調査に使う予定である。
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Research Products
(2 results)