2014 Fiscal Year Research-status Report
サスティナブルハウジングに向けてのセルフ・リノベーションの計画技術と社会性
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26420615
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
横山 俊祐 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (50182712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳尾野 徹 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80237065)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | セルフリノベーション / 賃貸システム / 原状回復義務 / 改修承認 / 事業性 / 改修サポート |
Outline of Annual Research Achievements |
住み手自らが住戸の改修を行なうセルフ・リノベーション(以下SR)を対象に、今年度はSRを可能とするハード・ソフトの賃貸システムの特性を解明し、効果的なSRを誘導し、一般化するための賃貸システムのあり様を考察した。 SR賃貸を運営している関東・関西・九州の18の事業者を対象に、SRを可能とする賃貸契約と住み継ぎの仕組み、住戸空間の初期設定、SRのサポート体制、事業性に関するヒアリング調査、並びに資料収集を行なった。 SRの促進要件は、改修申請手段の簡便化、自由なSRを促進するハードの条件(SRを動機付ける余地性のある空間、幅広いSR可能範囲の設定、未承認でも改修可能な部位の設定)やSRのサポート体制である。改修承認では、承認主体が居住者の申請内容に可能な限り対応しながらも、未承認を含めて住戸の価値を高めるSRは残し、建物性能・法的適合性・安全性を損なう内容は取り除き、あるいは、厳密に原状回復や補修費を請求することが必要である。そのためには、契約面では「造作買取請求権の放棄」が効果的で、居住者の円滑な退去、次の居住者へのSRの継承が可能となる。また、承認記録の正確性も、SRの質的向上と退去時のトラブル抑制に作用する。SR賃貸住宅では、空室率の低減、家賃の増額、事業者と入居者の良好な関係づくりなどが生まれ、事業性を高める手法である。 SR賃貸システムの要件は、事業者・居住者・次の居住者の希求する多様なSRの質(次への貸しやすさ、建物性能、法的適合性、安全性の維持向上、事業性、自由なSR、容易な施工、入退居のスムーズさ)を同時に高めていくような契約・空間・住戸継承の仕組みの整備である。 以上より、SRの促進と質的向上、次の居住者への容易な継承、事業者の負担低減と事業性向上に寄与する賃貸システムの必要性と要件を解明し、SR賃貸住宅普及に向けての基盤を提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目的である、SRを可能とする賃貸システムの計画技術のあり様を提起することに関して、①賃貸共同住宅においてSRを効果的に運用するために、SRの制約となる原状回復義務の扱い方、住まい改修の承認基準や承認方法などの過剰な改修による住みつぶしを防ぎ一定の質を確保する方策、退去時の条件設定などのSR住戸を住み継ぐ方策などの契約実態を明らかにし、SRを可能とし、SR住戸の質的向上・継承・発展を図る契約上の仕組みを解明する。②入居時における壁・水回りの位置などの空間的な特徴や内装状態などの空間状況とSRへの意欲・出来映えとの関係を解明し、入居時の空間状態・改修可能な部位や範囲の設定・内装や設備の老朽度などの実態を明らかにし、SRの実態との関係をみることで、住み手に対してSRを動機付け、促進する入居時の空間条件を解明する。③SRに向けての意欲や技術を高めるためのSRサポートシステム(DIY技術や知識の提供、モデルルームの設置、SRの呼び水となる建物所有者による入居時の改修など)の実態を把握し、SRに対する意欲の喚起とSRの質的向上にどのように作用しているかを明らかにすることからSRサポートシステムの構築を図ることを予定している。 18の事業者を対象にしたハード・ソフトの賃貸システムの実態と工夫、課題に関するヒアリング調査と資料収集を行ない、その定性的な分析を中心にした研究方法によって、SRを可能とし、その質的向上に寄与するようなSR賃貸の計画技術に関する知見を析出し、当初の目的を達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究も当初の計画通りに進める予定である。2015年度は、特に、居住者によるSRの取り組み実態の解明に重点を置く。そのために、①SRの実態(内容・方法・目的・入居時の原状の継承や経時的変化)、SRの評価(改修内容・現在の住まい・制度)、SRの促進要因などを戸別訪問によるヒアリング調査、並びに、時系列に配慮しながら改修箇所の図面採集(平面図・展開図)や改修内容の写真撮影によって把握し、居住者によるSRの取り組みのプロセスを描出する。②SRの程度や内容に基づいて分類[機能重視・意匠重視、間取り改変・仕上げ改変]を行い、各分類からSRを創出・促進する要件を整理し、比較検証することから、SRの質を上げ住み継ぎを可能にする仕組みを構築する。③入居経緯、SRへの積極性の変化、住まいへの意識の変化(愛着・自信・メンテナンス意識など)、集住意識(近隣関係、団地内の活気、住み心地など)などの実態を把握し、それら住意識とSRによって即応的にカスタマイズされた住空間との対応関係を検証することから、SRが住み手の住まい方や住まいへの意識にもたらす効果を明らかにし、SRの必要性・有意性を解明する。④住まい方(住まい方の変化・来客や接客への意識・住まいの設えなど)やコミュニティ(SR導入による新旧居住者の付き合い・新居住者同士の付き合い・SR技術や知識の交換などによる人的つながりなど)のSRを媒体とした意識の変様に関する実態を把握し、新旧居住者のコミュニティ形成によるソーシャルミックス・道具の貸し借りによる相互扶助など新たな共同住宅コミュニティ形成・住まいが開かれることによる社会性の獲得などに向けてより良い効果をもたらす要件を検証・発見を図るとともに、SRの必要性と有意性を解明する。 以上、4つの目的の達成に向けて全国の事例調査を進める。
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Research Products
(1 results)