2014 Fiscal Year Research-status Report
待機児童解消のための規制緩和による高層建築物内保育園設置に対する避難安全の検討
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26420627
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐野 友紀 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70305556)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 避難 / 保育所 / 高層建築物 / 規制緩和 / 防災 / 法規 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 公開データおよび現地調査から見た保育施設の実態の把握 ・保育施設公開データの集計による、保育施設分類別の施設数の実態調査:厚生労働省の保育所設置基準の改正により、高層建築物内に保育施設を設置する際の屋外階段設置義務が撤廃され、規制が緩和された。この状況において、法改正以前および改正後における保育施設の設置実態や位置づけについて調査を行った。具体的には、各地方自治体において公開されている設置階数を含む住所、保育受入年齢、園児の定員等のインターネット上のデータを元に、その設置数等の実態を整理した。その対象として、人口が集中し、特に問題が顕在化している首都圏の一都三県(東京、神奈川、埼玉、千葉)について、低層および高層保育施設の設置数、設置階数、保育人数等の現状データを累積・整理し、実態を把握した。 ・保育施設への防災安全に対するヒアリング調査:保育園への現地調査および自治体の担当者に対するヒアリングを行った。これにより、現状把握にとどまらず、自治体が考える保育行政の方向性について把握した。 (2) 保育施設に関する各省庁の防災関連法規の整理 保育施設に関連する法規はその観点から複数のものがある。建築の面からは建築基準法に規定され、保育の観点は厚生労働省の管轄である。また、東京都のように地方自治体の基準を持つものもある。また、類似する児童施設である幼稚園は学校施設であり、文部科学省管轄である。このように、これら保育施設の枠組み・基準は複雑に絡み合っている。ここでは、特に防災関連の基準に特化し、厚生労働省の保育所設置基準、国土交通省の建築基準法、総務省の消防法について、関連基準を調査・整理した。特に、厚生労働省の保育設置基準における避難規定の改正が行われたことから、これに関する部分について、重点的に検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した (1) 公開データおよび現地調査から見た保育施設の実態の把握、(2) 保育施設に関する各省庁の防災関連法規の整理について、予定どおり研究を実施した。具体的には、実態の整理および関連法規の整理を行い、研究を進めるにあたっての前提について、整理が進められた。加えて、平成27年度に実施予定の保育園調査対象について、研究に関する打診を行い、避難訓練等の予備調査を行った。また、(1)に関連して、実際の地方での保育園の状況について現地調査および自治体の担当者に対するヒアリングを行った。このため、当初の計画にもとづいて、研究がおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
・保育施設における避難訓練調査 消防法の基準により、月に1回避難訓練が実施される保育所の避難訓練を調査することで、園児および保育士の避難の実態を把握する。具体的には、予備調査を行っている埼玉県川口市に設置された高層に存在する認可保育所に打診し、調査協力を得られることが決定している。避難能力については、事前検討により、自力避難ができない0、1歳児については、保育士が抱えて避難する方法、自力避難が可能な2歳から5歳については、歩行速度が遅く、付き添いや見守りの必要性の有無について、ビデオカメラ撮影等を通じて調査する。加えて予備調査から、0、1歳児について特に保育士の介助の必要性が高く、火災時対応の行為が多数存在することが確認されたことから、これらの保育士の行動に着目して、調査、分析を行う予定である。また、保育士の行動の前提となる災害に対する考え、意識を捉えるために、ヒアリング調査を行う。 ・国内外における保育施設における避難計画の実態調査 平成26年度の予備的な検討により、福祉、保育の先進事例である北欧、および防災計画が充実している西欧において、日本とは異なる保育が実践され、また、防災計画が行われていることが認められた。このため、この点を重視して研究計画を修正し、国内外において、保育所避難検討の参考となる保育施設の調査を重点的に行うことを追加する。具体的には、保育の先進事例であるスウェーデンおよび防災計画の先進事例を持つ英国、ドイツにおける保育施設の防災計画について現地調査、分析を行う。また、保育施設においては、園児の避難時に保育者の介助が重要であることから、国内において、保育者の避難安全および避難訓練に対する考え方についての現地でのヒアリング調査を行う。なお、当該調査は研究費申請の計画に付加して行うものとし、現状の計画は予定通り実施する。
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Causes of Carryover |
当初の計画通り、設置実態、法規関連のデータ収集、調査分析は進められた。厚生労働省の保育所設置基準の改正が行われることとなったことを受けて、現地調査として、改正前の平成26年度ではなく、改正後の実態を捉えることが必要であると考え、調査の実施を次年度に移行することとした。このため、現地調査の実施を控えたため、次年度への研究費の繰越を行っている。関連して、関連データの分析等の謝金も次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の通り、厚生労働省の保育所設置基準の改正後の実態を捉えるために、国内で重点的に保育施設での現地調査およびヒアリングを行う。また、平成26年度の予備的な検討により、福祉、保育の先進事例である北欧、および防災計画が充実している西欧での事例調査が重要であることが認められたため、本研究の国際的な展開についても加味し、これらの諸外国において、調査研究を行う。この調査を通して、日本とは異なる保育が実践され、保育所避難検討の参考となる保育施設の調査を重点的に行う予定である。加えて、その内容を国際会議等で発表し、保育施設避難の関連研究者との研究交流をはかる予定である。
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Research Products
(6 results)