2014 Fiscal Year Research-status Report
公共複合施設における運用段階の機能変更の検証と長期利用空間モデルの構築
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26420632
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
池添 昌幸 福岡大学, 工学部, 准教授 (90304849)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 公共複合施設 / 長期利用 / 機能変更 / 空間改変 / コミュニティ施設 / 文化施設 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、公共複合施設のリスト化、施設整備の全体傾向の分析と機能変更事例の抽出、機能変更事例に対する現地調査による機能変更経緯と空間改変の実態把握、以上の研究を行った。 まず、公共複合施設のリスト化は、1993年から2007年までは雑誌「公共建築」を基礎資料とし、1973年から1992年までの20年間は、文化施設およびコミュニティ施設の用途を対象に建築作品データベースを基礎資料として、建築系雑誌の記事内容をもとに作成した。結果として、公共複合施設として346事例を選出した。 次に、346事例の基礎データをもとに、①用途構成、②規模、③構造、④複合化タイプの項目について全体傾向の分析を行った。その結果、複合化タイプではフロア別の用途区分を基本に一部のフロアで複数の用途が配置されているタイプが約半数を占めることを示した。また、公共複合施設の平面構成を分析し、専用空間を一定的構成とする共用空間の平面タイプとして、内部連続型、内部ホール型、外部型の3つを示した。この3つの平面タイプは導入用途に特徴があり、また共用空間の役割が異なることを明らかにした。さらに、運用段階における機能変更の有無についてはアンケート調査を実施し、機能変更を行った施設として、1993年以降が17事例、1992年以前が11事例の合計28事例を把握した。 続いて、機能変更事例の内、施設全体で機能変更されている施設として、愛知県内の3つの施設に注目し、銀地観察調査と自治体担当者へのインタビュー調査を行い、機能変更の経緯と空間改変の方法について詳細に把握した。これらの調査によって、機能変更に伴う空間改変特性として、複合施設の特徴である共用空間が改変対象となり当初の計画意図が変更されていること、複合用途の融合化、単独用途化、一体的管理といった複合化を解消する変更が行われる傾向にあること、以上の可能性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究は、概ね当初計画通り進展している状況にある。 まず、これまで公共複合施設に特化した事例リストが既存の資料として整理されていないため、建築系雑誌を基礎資料として独自にリスト化を行う作業を行った。当初、用途に関係なく複合化した公共施設を対象としていたが、公共施設の対象の絞り込みが難しいため文化施設およびコミュニティ施設の2つの用途に限定し、リスト化することとした。1970年代、1980年代の複合化はこの2つの用途を中心に行われていることを既往研究および文献で把握していたため、分析対象施設の選出の点で本研究の目的に適していると判断した。その結果、346事例の公共複合施設のデータベースを作成した。 さらに、公共複合施設の全体傾向の分析作業は、研究計画通り雑誌掲載記事を収集し、これを基礎資料として規模および構造、複合化タイプ等の定量的分析と平面プランの分類等の定性的分析を行うことができた。特に、平面プランの分析における専有空間と共用区間の空間構成分類では、内部連続対面型、内部連続貫入型、内部ホール緩衝型、外部囲み型に分類できることを示し新たな知見を得ることができた。 最後に、本研究の中心課題である機能変更の実施の有無については、アンケート調査によって28事例を抽出できた。アンケート調査の回答率を上げるため、電話による簡易インタビュー調査を行っている。アンケート調査では、機能変更の内容と主な空間改変について質問することで、機能変更を室レベル、用途レベル、施設レベルの3段階に区分し、その後の実態調査の事例抽出の判断材料としている。平成26年度では特に施設全体の変更を行っている3つの事例に対して現地調査を行った。この調査で得られた知見は、平成27年度に実施する機能変更事例の現地調査において予備的知見として位置づけられるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の実施は、当初の計画通り推進する予定であり、現在の所遂行上の大きな課題は存在しない。 平成26年度に把握した機能変更事例に対して現地調査による機能変更と空間改変の実態把握を引き続き行う。特に、1980年代、1990年代の時期別の変更の特徴を分析視点として調査を実施する。具体的には、①機能変更の理由と検討プロセス、②空間改変の内容と検討プロセスを明らかにし、機能変更の特徴を用途タイプおよび経過時期との関係から分析する。 さらに、長期利用の視点から公共複合施設の運用段階における機能変更と空間改変の対応性を検証する方法を提案し、抽出した機能変更事例に対して運用段階の機能変更と空間改変の対応性を評価し、公共複合施設の機能耐用性の計画条件を明らかにする。 以上の検証評価を総括し、公共複合施設に共通した空間計画上の構造的な問題点とこれを解決する計画技術を考察・提示する。加えて、特定の用途タイプもしくは経過時期における運用段階の機能変更の要求を一般化するともに、これに対する空間改変手法を提示し長期利用を可能とする空間モデルを構築する。
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Research Products
(5 results)