2015 Fiscal Year Research-status Report
公共複合施設における運用段階の機能変更の検証と長期利用空間モデルの構築
Project/Area Number |
26420632
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
池添 昌幸 福岡大学, 工学部, 准教授 (90304849)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 公共複合施設 / 機能変更 / 空間改変 / 地域文化広場 / 拠点機能 / 運用段階 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究で明らかにした3つの機能変更事例のうち、2つは愛知県地域文化広場事業によって整備された施設であった。 そこで、平成27年度は、まず、愛知県地域文化広場事業の整備施設について調査を行った。その結果、この事業は愛知県内の13地域で1980年代、1990年代に整備された複合文化施設であること、県と市の共同で実施した事業であり、複合文化施設として独自性が高く先進的な事例であることが分かった。 次に、愛知県地域文化広場事業のうち、平成26年度に調査した2つの事例を除く11施設を対象にアンケート調査を実施し、運用段階における機能変更及び大規模改修の有無とその内容、運営管理の変更について把握した。その結果、愛知県地域文化広場は、文化会館、体育施設、展示施設、科学館など独自性の大きい用途構成となっていることを示した。さらに、運用段階の機能変更は田原、碧南、一色の3つの施設を行われていることを明らかにした。 続いて、機能変更された3つの施設を対象に、現地観察調査および運営担当者へのヒアリング調査により機能変更の経緯と空間改変の内容を分析した。その結果、3つの施設の機能変更は独自性がみられた。田原では図書館の新設とそれに伴う既存施設の機能変更であること、一色では生涯学習機能や防災機能といった社会的ニーズの変化に対応する単独施設としての変更であること、碧南は、複合施設として機能の独自性と親和性の大きく、学習教育効果の高度化を目的とした発展的な機能変更が段階的に進んでいることを指摘した。以上より、機能変更の特徴として、①文化教育施設としての拠点機能の拡充、②複合用途の独自性の強化、以上の異なる特徴を持つことを示した。また、前者では地域文化広場の特徴である歴史民俗資料の展示機能が失われており、生涯学習施設として一般化される傾向にあることを指摘した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究は、概ね当初計画通り進展している状況にある。 まず、1980年代の公共複合施設を対象に機能変更事例を新たに抽出し、運用段階における機能変更と空間改変の対応性を詳細に分析することができた。特に愛知県地域文化事業については、既往の研究でも少数の研究報告が整備当初に行われているのみで、これらの施設の検証を行った研究は全く見られないことから、新たな知見を得ることができた。 また、文化施設としても先進的な事例であり、その運用段階の機能変更過程の特徴は、長期利用を前提とした複合施設の計画モデルの構築に対して、有用な成果が得られた。 また、補足的な知見として、公共複合施設が現在の公共施設マネジメントの策定においてどのように再編されるかという点も確認することができた。ここでは、公共施設再編では展示機能、文化機能は集約化の方向にあり、文化複合施設は複合性が解消される傾向にあることが指摘できた。このことより、複合施設はその用途よって長期利用性が影響することが考えられ、考察の視点が新たに得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の実施は、当初の計画通り推進する予定であり、平成28年度は最終年度として研究成果を総括する。 まず、平成27年度に引き続き、これまでのアンケート調査で把握した施設全体の機能変更事例を対象として現地調査を実施し、①機能変更の理由と検討プロセス、②空間改変の内容を明らかにする。これらの機能変更事例の分析結果を整理し、公共複合施設の機能変更プロセスを提示する。さらに、現在の公共施設マネジメントにおいて公共複合施設が再編方針がどのように位置づけられているかをまとまる。 以上の検証評価を総括し、公共複合施設に共通した空間計画上の構造的な問題点とこれを解決する計画技術を考察・提示する。加えて、用途タイプによる長期利用性の差異を考慮し、運用段階の機能変更要求を一般化するとともに、これに対する空間改変手法を提示する。
|
Research Products
(3 results)