2015 Fiscal Year Research-status Report
中世禅院における建築造形の流通と空間の意味に関する建築史的・対外交渉史的研究
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26420639
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野村 俊一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40360193)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 禅宗様建築 / 折衷様建築 / 中世仏堂 / 柱高 / 床高 / 組物 / 架構 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度から引き続き日本・中国における折衷様建築および禅宗様建築、関連する歴史的建造物を対象に現地調査を行った。日本では山口県における禅宗様建築や折衷様建築のほか、千葉・福島を中心に東国における折衷様建築を調査した。中国では西安・韓城・運城における宋代から元代の歴史的建造物の調査を行った。いずれも建築の架構システムなどの技法や、組物や梁にみる意匠など、建築の部分の特徴に関する情報収集に努めた。この作業に併せて、昨年度から引き続き、各種文化財建造物の修理工事報告書・『中国絵画全集』・『中国絵画総合図録』を調査し、現存遺構や表象された建築を対象に検討を進めた。また、絵画にみる空間を主題とした研究会を美術史の研究者と協同で開催し、建築における山水受容の枠組みについて意見交換を行った。 東国の折衷様建築に限定して、柱高と床高のプロポーションと、来迎柱後退の計画システムとについて検討を進めた。概要は次の通りである。 東国における方三間の中世折衷様建築では、円覚寺舎利殿と同様に、礎石下端からの寸法取りを基準に正方形のプロポーションがみられる事例が複数例確認できた。他方で、来迎柱の台輪上端で寸法取りをする場合、床上で寸法取りをする場合、中世和様建築の事例と類似する場合など、円覚寺舎利殿とは異なる寸法取りで同様のプロポーションが成立する事例が多数みられた。とくに延命寺地蔵堂は、床上での寸法取りにおいて、円覚寺舎利殿と同様の形式がうかがえた。 また、既往研究で指摘するような来迎柱の後退分が脇間の半間分となる事例は少数しか存在しなかった。来迎柱の位置は平面の計画体系に則り決定されたものが多く、完数制に従い背面側柱からの幅を完数として配置する事例や、枝割制に従い背面側柱から何枝分か移動させた事例などが複数例みられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の東国における折衷様建築や、中国四川省・山西省における歴史的建造物などを中心に、現地調査をおおむね順調に進めることができた。併せて、研究会を開催し、隣接領域の研究者と情報共有をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も引き続き、研究全体に関わる基礎的研究として、既往研究の確認と、各種文化財建造物修理工事報告書や絵画をはじめとする画像資料などの情報収集・検討を進める。併せて、東国武蔵国における該当建造物のほか、西国の瀬戸内地方における該当建造物、中国山西省における唐代~南宋代の該当建造物の調査を進める予定である。並行して研究会を開催し、隣接領域の研究者と情報交換を進める。
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Causes of Carryover |
昨年度に購入予定だったパーソナルコンピュータを、今年度購入する計画に変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度に購入予定だったパーソナルコンピュータを、今年度購入する予定である。
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Research Products
(5 results)