2014 Fiscal Year Research-status Report
アジア庭園基礎研究その2-韓国民家庭園における自然観の表現と空間形態に関する研究
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26420640
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
三谷 徹 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (20285240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
章 俊華 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (40375613)
鈴木 弘樹 千葉大学, 工学研究科, 准教授 (50447281)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 庭園 / 韓国 / 別墅 / ランドスケープ |
Outline of Annual Research Achievements |
1、庭園第1回調査:7月31日-8月5日、プレ調査として、韓国湖南地方を中心に調査対象の適宜を判断する基礎資料を得る。調査事項は次の通りである。1)現地調査の結果、別墅庭園と呼称されているものにも、新旧、異タイプのものが混合している。本調査の対象として、集落内住宅に付属しない独立建築型、山腹東屋型のものに絞り込む。2)各庭園を訪れ、本調査での着目点を考慮する。丘陵地形との関係、各庭園建築に掛かる文学表象の記録、建築開口部に特化した形態測量を全ての庭園で行う事を決定する。 2、庭園第2回調査:11月25日-30日、プレ調査から、調査対象を、潭陽瀟灑園、甫吉島尹善道園林洗然亭、順天超然亭園林、臨對亭園林、康津丁若鏞遺蹟茶山草堂、鳴玉軒園林の6カ所とする。これらの庭園は、地域的には一地方にまとまり、建立年代も朝鮮時代と比較的同時代であり、今後研究対象として同列に扱えると判断した。(集落内住宅庭園に付随する別墅庭園、咸安舞沂蓮塘と三可軒荷葉亭も主人の好意により開放されたので、参考調査として拝観する)。調査項目:a) 建築と庭園の立地特徴を表す指標として、周囲に見える山稜、遠望される山容の見え方を把握する。特に建築内居室の主軸開口方向の景観を撮影する。b) 庭園における文学的表象を全数記録する。特に主亭の扁額、対聯、その他の額の文字表記を記録する。c) 主建築の空間構造と景観の関連を今後分析する基礎資料として、主軸開口部を中心とした、内部空間、軒下縁空間のディメンジョンを測量記録する。 3、試行的分析の開始:1月以降収集したデータの整理、試行的分析を行う。立地特性を把握するため、別資料としてGIS地形データを購入し、景観特性をデータとして表示するGIS分析を並行して行なう。また建築開口部の測量データを整理し、模式断面図等の作図にとりくむ。文学表象分野は扁額内容の整理と配置図作成を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、上記研究実績に示した調査の後、研究グループは計画のように3班に分かれ、以下の作業を進めた。 1)庭園立地特性に着目する研究:別墅主亭からの主軸に展開する景観、特に山容景観において共通性を認識したため、それらを数値的に解明するため、GIS地形データを購入し、景観特性を視覚データとして表示する方法を模索する。現在までに、Viewshed解析により一定の定性的傾向を認める。 2)建築形態特性に着目する研究:現地測量に基づく平面図および断面図の作成に着手。ほぼ図面化を完了している。本研究の前研究である中国蘇州庭園での開口景の分析手法が、本研究対象で有効か試験的に解析を始める。 3)文学表象特性に着目する研究:調査庭園内の全建築における全扁額内容を整理するため、内容ー配置対応表を作成しそれを現況図におとしこむ。 2、成果と展望:調査方法に関する知見:本研究の建築・立地・景観の関連を調査するためには、木立が全て葉を落とした冬期が好ましいことが、夏、冬の2回調査の比較から理解される。多くの別墅庭園研究書が夏期景においてまとめられているのに対し、本研究が冬期景に着目する意義も認識する。
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Strategy for Future Research Activity |
1、調査計画:1)本年度の調査計画:本年度は夏期調査をとりやめ、冬期景における特性に集中して調査を行う事とする。また天候により調査内容が左右されやすい対象地であるため、本年度は天候と調査時期の微調整が行えるよう留意する。2)調査対象の再考:湖南地方、朝鮮時代庭園までは対象を絞り込んだが、さらに対象の並列性に留意したい。昨年度は一般的に別墅と呼ばれる庭園を、住宅併設型と山野内独立型に分類し後者にアプローチしたが、本年度はさらに後者を庭園内付属別墅と山野内独立別墅に分け、この後者の型の対象数を増やす事を試みる予定である。 2、分析計画:各研究班は現在のところ試行的分析にとどまっているので、本年度は各々発表可能な網羅的分析に取り組む。a)立地特性:現在はGIS分析にとどまっているが、さらに、本年度の現地景の定量撮影と組み合わせることで実際の空間体験に近い形での数値的記述が可能か試みる。b)建築形態特性:これまでに作成した図面と昨年度撮影資料をもとに、建築と庭園の結合部に類型、特性が現れるか考察する。また建築内からの庭園および山容景に対しSD法心理実験から数値化をおこない、中国蘇州庭園研究と同列に扱える特性が現れるか試みる。c)文学表象特性:まず全扁額の意味、表象を解釈し整理する。それを庭園の造営意図と関連させる資料を求める。可能であれば立地特性と扁額内容の間の関係性を分析する。 3、成果のまとめと発表:今年度内、あるいは来年度での学会発表を視野にいれ、発表論文の作成に取り組む。
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