2015 Fiscal Year Research-status Report
讃岐国善通寺における伽藍構成の近世的変容過程に関する研究
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26420655
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Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
山之内 誠 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (40330493)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 善通寺 / 大衆参詣空間 / 開帳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主に善通寺保管されている近世資料の調査分析を通じて、善通寺における近世伽藍の形成過程を明らかにしていくことを目的としている。平成27年度の調査研究では、善通寺宝物館において、江戸時代中・後期に善通寺内で行われた居開帳に関する記述がみられる古文書(善通寺文書15,宝7,土蔵13箱に整理されている数十点)の調査を行い、建築の飾りつけや使用方法が読み取れる資料を中心に撮影も行った。これらの資料から、居開帳の主要会場となった御影堂をはじめとする建築群がどのように飾り付けられ、どのように利用されたのかを知る手がかりを得ることができた。また、同じく善通寺文書2-4箱に収められている雨乞い関連の300点に及ぶ史料にも、雨乞いの儀礼に伴い開帳を行った記録が多数おさめられていることを確認できた。これらの史料から、開帳というイベントが、善通寺においては多様な機会に実施されていた様子を窺うことができた。これらの一連の情報は、開帳という非日常の舞台が、どのような大衆参詣空間を演出したのかを知る手がかりになるものと考えている。 なお、平成27年度には、前年度までの資料調査内容にもとづき、17世紀における善通寺西院伽藍(誕生院)の変遷とその性格についての分析を論文として取りまとめ、発表した。ここでは、寛永11年(1634)に描かれた『善通寺西院之図』の分析を中心に行い、御影堂が17 世紀の間に、方三間から方五間、方六間へと順次規模が拡大され、17 世紀末までに礼堂の背後に奥殿を持つ複合仏堂へと発展したこと等、西院伽藍が大衆参詣空間として充実していく過程を明らかにした。 以上のように、平成27年度は、17世紀の善通寺西院伽藍の発展過程を取りまとめて発表できたことに加え、開帳時の非日常的な伽藍の様子を知る手がかりを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね予定通りに進行している。 平成27年度の調査研究においては、善通寺宝物館の開帳関連資料の調査をすすめ、善通寺伽藍の非日常的な賑わいの場の様相を窺える近世資料を数多く発見・確認することができた。前年までに確認した御忌の機会を中心とした伽藍の恒常的維持に関する情報とあわせて分析することで、大衆参詣空間としての性格の全貌が見えてくるものと考えている。 また、平成27年度は、前年度から当年度にかけて行った調査成果として、17世紀における善通寺西院伽藍の発展過程を取りまとめ、発表することができた(山之内誠「17世紀の讃岐国善通寺における西院伽藍の変遷について」神戸芸術工科大学紀要「芸術工学2015」)。当年度史料調査した開帳関連の資料分析についてはまだ十分でなく、発表には至っていないが、これらについては平成28年末までに論集に成果をまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の調査研究は、前年度から実施している御開帳関連の資料の分析を中心に進める予定である。また、すでに発表している17世紀の伽藍発展過程に加え、18世紀以降の善通寺伽藍の変遷についてもまとめ、近世を通覧した伽藍史として、最終報告を取りまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
その他項目の支出が見込みよりも少なかったため、僅かながら残金が生じました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残金は繰り越して、報告書印刷費の一部として使用する予定です。
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