2015 Fiscal Year Research-status Report
1950年代北朝鮮におけるバウハウス卒業生K.ピュシェルの咸興市戦災復興計画
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26420659
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
冨田 英夫 九州産業大学, 工学部, 講師 (80353316)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バウハウス / 東ドイツ / 北朝鮮 / 戦災復興 / 都市計画 / 咸興 / 興南 / 社会主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の今年度は、ピュシェルが主導した復興都市計画における2点の特徴的な計画項目、すなわち(A)農業生産共同組合、(B)近隣区、に注目し重点的に研究を行った。 まず、農業生産共同組合(Landwirtschaftliche Produktionsgenossenschaft)については、ピュシェルの経歴との関係から考察し、ソ連のコルホーズおよび東ドイツにおける農業生産共同組合からの影響について研究を行った。その研究成果の一部を、国際会議『XIII. International Bauhaus Kolloquium』に2016年3月に投稿した結果、発表に採用された。 次に、咸興・興南地区の都市復興における「近隣区」(Wohnkomplex)について、同様にピュシェルの経歴との関係から考察し、ソ連とりわけオルスクにおける計画との共通点を指摘した上で、前年度に明らかになったピュシェルの計画の方法論と対照することでピュシェルの計画の独自性について研究を行った。その研究成果の一部を、国際セミナー『MAPPING THE NEIGHBORHOOD, The Multiple Ways of an Urban Vision in the 20th Century』(2015年6月)において発表した(アブストラクト査読有)。さらに発展させた内容を国際会議『11th International Symposium on Architectural Interchanges in Asia』に2016年3月に投稿した(現在審査中)。 資料調査としては、2015年8月にベルリンのバウハウス資料館におけるバウハウス卒業生についての資料収集、およびドイツ連邦公文書館にてピュシェルが所属したドイツ人技術団の定期報告書類の閲覧を行い、必要資料をデジタルデータとして収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、北朝鮮の咸興の戦災復興におけるピュシェルの建築活動について、1.朝鮮の伝統的建築・都市の分析、2.咸興・興南の気候風土への対応、この2点から明らかにすることを目標としている。「研究実績の概要」に示したように、今年度はピュシェルが主導した復興都市計画における2点の特徴的な計画項目(A)農業生産共同組合および(B)近隣区に関する内容を重点的に研究し発表できたため「おおむね順調に進展している」と評価した。 平成27年度は主として、(1)前年度の研究成果の対照および総合的考察、(2)追加の資料調査と研究成果の議論を予定していたが、すべて実施できた。加えて平成26年度に実施できなかったバウハウス資料館における資料収集も今年度、実施できた。 具体的には(1)前年度の研究成果の対照および総合的考察については、前年度の方法論全体についての研究成果と、今年度の個別のテーマである農業生産共同組合および近隣区についての研究成果を対照することで、より総合的な考察を行うことができた。 (2)追加の資料調査と研究成果の議論については、1)前年度にピュシェルが残した資料のみを基に分析を行ったため、今年度はドイツ人技術団が東ドイツに報告した報告書という客観的な資料について特に追加調査を行った。そして、2)ミラノ工科大学における20世紀における近隣計画をテーマとした国際セミナーにおいて成果報告し、研究成果の議論を行った。 前年度に、マイアー時代のバウハウスの建築教育の内容とピュシェルの設計手法の対照を行えなかったため、比較のために本年度はマイアー時代のバウハウスの建築教育の内容の論文を発表し、今後の比較のための材料を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、北朝鮮第二の都市・咸興の戦災復興におけるピュシェルの建築活動について、1.朝鮮の伝統的建築・都市の分析、2.咸興・興南の気候風土への対応、この2点から明らかにすることを目的としており、平成26年度は1について、平成27年度は2について成果を挙げた。そのため、最終年度の平成28年度は、(1)以上の成果の総合から建築史的な位置付けを行い、(2)学術雑誌への投稿と成果発表を行う。 まず、(1)成果の総合と建築史的な位置づけについては、投稿中の国際会議での発表を通して、前年度のまでの成果の総合を行う。建築史的な位置づけとしては、ピュシェル自身の経歴との関係を探りつつ1930年代以降の社会主義圏におけるモダニズム建築の一つの展開として論じ、社会主義圏における近代建築史の上に本研究の成果を位置づける。 次に、(2)学術雑誌への投稿と成果発表については、本研究はソ連・東ドイツ・北朝鮮と複数の国での活動を論じるため、国際的な学術雑誌への投稿を構想している。
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