2015 Fiscal Year Research-status Report
超伝導臨界電流の一軸圧縮/引張歪依存性とその非対称性=工業化技術の完成に向けて=
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26420669
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Research Institution | Research Institute for Applied Sciences |
Principal Investigator |
長村 光造 公益財団法人応用科学研究所, その他部局等, 研究員 (50026209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町屋 修太郎 大同大学, 工学部, 准教授 (40377841)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超伝導材料 / 量子ビーム産業応用 / 臨界電流 / 熱残留歪 / 一軸歪依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
超伝導複合線材の臨界電流の歪依存性は2つの要因から負荷歪に対して非対称となると考えられる。最近の理論的取扱いによれば臨界電流は超伝導成分に生起する歪がゼロを中心に圧縮歪と引張歪に対して非対称に変化することが予測されている。提唱される理論がすべての超伝導材料で可逆歪領域における臨界電流の歪依存性を統一して説明できるかどうか検証することを目的とした。さらに圧縮破断歪、引張破断歪、可逆負荷歪範囲等の機械―超伝導特性を体系的に調べ、その制御・改良方法を考案し産業応用に資する基礎データを収集を行った。本年度は次のような研究成果を得た。Superpower, SuNAM等の実用REBCO超電導線の臨界電流の一軸歪依存性を (a)単純に引張歪を印加する方法、(b)springboardに貼り付けて圧縮から引張の全一軸歪を印加する方法で測定した。A>0の領域で両者の臨界電流の印加歪依存性を見ると、その依存性に違いがあることが解る。Tape on SBでは臨界電流の歪依存性に極大が現れている。この顕著な相違は試料テープをスプリングボードにハンダ付けすることによりREBCO超電導層に生起する局所歪が変化したことに起因すると考えられる。そこでTapeそのもの、スプリングボードにハンダ付けしたTapeの各々について室温で測定した局所歪をもとに計算により77 KにおけるREBCO超電導層に生起する局所歪AREBCOを求めた。一方計算により(a), (b)の条件により生ずる77Kにおける超電導層に加わる熱歪を考慮した局所歪に対して臨界電流をプロットすると(a),(b)の両データを合理的に説明することができた。つまり臨界電流の真の歪依存性を知るためには、超電導層そのものに加わる局所歪に対する考察が必要であることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨界電流の一軸応力依存性の実験に関して応用科学研究所において圧縮側から引張側まで一軸性の応力を負荷して、無磁場のもとで臨界電流を測定する方法を完成し、これによりBSCCO系およびREBCO系実用超伝導線について測定を実施した。その成果を2015年12月4日に低温工学・超電導学会で口頭発表するとともに、2016年4月に、Supercond. Sci. Technol.誌発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
応用科学研究所に初年度で整備した圧縮側から引張側まで一軸性の応力を負荷して無磁場のもとで臨界電流を測定する装置を用いて、前年度に引き続き臨界電流の一軸歪依存性を調査するとともに、磁場印加装置の製作を完了して磁場中一軸応力負荷環境下で試料に貼り付けた歪ゲージにより負荷歪の関数として臨界電流を測定することを計画する。機械―超伝導特性予測モデルの構築のため、複合材料である実用超伝導線材の力学特性、熱特性をもとに複合体の弾塑性挙動を求め、可逆負荷歪を推定し、その範囲における臨界電流の変化の予測方法を開発する。 大同大学において実測された応力―歪関係を定量的に解析し、ヤング率、弾性限、0.2%耐力、引張強度、破断歪を試料毎に整理する。これらのデータを上記の機械―超伝導特性予測モデルの構築に反映させる。 J-PARC「匠」において前年度で整備したスプリングボードで置きかえた低温引張試験機により臨界電流を測定したと同じ温度でBSCCO, REBCO, Nb3Sn線材中の超伝導成分に生起する局所歪の測定を行う。本提案による理論的予測を実証するため負荷歪と超伝導成分に生起する歪の関係を明らかにし、重要なパラメータであるAaff, Aacf, Aatf等を決定する。
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Causes of Carryover |
研究分担者である大同大学町屋准教授は超電導線の熱膨張測定のため当該装置の改良のため治具の設計を行い業者にその製作を発注したが、製作が遅れ平成27年度内に治具の納入がなかったため支払が遅延した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に治具の納入が行われた時点で前年度に予算化した経費を支出する予定である。
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Research Products
(3 results)