2015 Fiscal Year Research-status Report
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26420670
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
関戸 信彰 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料ユニット, 主任研究員 (10462516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沼倉 宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40189353)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 拡散 / 固溶限 / 軽元素 / グロー放電発光分光分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
Bは、微量添加で鋼の焼入れ性を著しく向上させる効果を有するものの、過剰に添加すると焼入れ性向上効果は薄れ、さらに延性・靱性が低減する取り扱いの難しい元素である。Bの挙動を理解し、その元素機能を最大限に引き出すことができれば、鉄鋼材料分野で大量に消費されるレアメタルの消費量を削減できる。しかしながら、Bは分析が困難であり、固溶状態が侵入型か置換型かも明確でない。本研究の目的は、Fe中におけるBの固溶限や拡散係数など基礎的知見を拡充し、Bを活用した合金設計に資することである。 H26年度(一年目)は,希薄B合金の試料作製法とrf-GDOESを用いたBの定量分析法を確立した。検出下限として3 wt.ppmを達成し、さらに10 wt. ppm以上の濃度域ではICP-AESと同程度の定量精度を確保することができた。 H27年度(二年目)は、拡散対実験をベースとしたBの拡散挙動調査を行った。Fe2B粉末をSPSで焼結してFe2Bのバルクを作製した。純Fe箔とFe2Bバルクを拡散接合し、接合界面近傍での濃度をrf-GDOESで分析した。FeとFe2Bの両相には極微量のAlが不可避的不純物として混入しており、両者のAl濃度の違いで接合初期界面の位置を特定できることを見いだした。また、接合初期界面近傍にはFe-Fe2B二相域が形成していることが示唆された。この二相域と単相域の境界の濃度からFe中のBの固溶限を計測できることが判明した。具体的には、977℃のγ域のおけるBの固溶限は20 wt.ppmである。一方、800℃以下のα域域のおけるBの固溶限は10 wt.ppm以下であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目(H26年度)の目標である「希薄B合金の試料作製法確立」と「rf-GDOES定量分析手法確立」は26年度中にクリアーした。二年目(H27年度)の目標である「rf-GDOESにおけるスパッタ条件の最適化」はクリアーしており、これにより深さ方向に対する分析精度が向上している。さらに、二年目のもう一つの目標である「Fe中Bの固溶限測定のための実験条件の最適化」についても、977℃におけるBの固溶限が20 wt.ppmであるとの結果が得られており、おおむねクリアーしていると考える。今後は、得られた結果の妥当性を検証する。
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Strategy for Future Research Activity |
H26、H27年度までに、微量Bの分析技術、希薄B合金の作製法、分析の最適スパッタ条件の確立しており、Fe/Fe2B拡散対実験によりBの固溶限が決定できる可能性が見いだされている。今後は、Fe-Fe2B二相組織の形成を組織観察により確認し、同時に二相組織形成の理論的考察を行う。さらに熱処理温度、熱処理時間を変えて、得られた結果の妥当性を検証し、投稿論文にまとめる。さらに、同手法をFe-Ni-B系に拡張して、比較的低温での評価も行う。
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Causes of Carryover |
年度当初は拡散対実験で用いるサンプル作製に予想以上の時間がかかり、学会発表の水準に達しなかったため、当初予定していた学会参加の旅費が発生しなかったことがあげられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度後半からデータが取れ始めており、学会発表、論文発表が十分な段階に来ており、それを積極的にを行う。また、当初の予定では予算の関係上組み込むことができなかった、他研究機関の装置を利用する費用に充てる。
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