2015 Fiscal Year Research-status Report
アルコキシド法を用いた新規な多孔性粒子合成プロセスの開発
Project/Area Number |
26420675
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小島 隆 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70333896)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ナノ材料 / 金属酸化物 / 粒子 / 多孔性 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応条件を精査し、アルコールへの溶出によるマクロ孔の形成と、低温での結晶化が可能な水和酸化物粒子の調製条件の検討を行った。本年度は特にタンタル系の粒子について詳細に検討した。まず、アルコキシド法を用いて均一な外形を有し、かつ重縮合度の低い水和酸化物粒子を合成し、粒子表面部の部分的な溶出によるマクロ孔の構築を試みた。また、合成した多孔性水和酸化物粒子の温水または水熱処理による結晶化および様々な複合酸化物への変換も試みた。さらに、調製した粒子上への銀ナノ粒子の担持も試みた。以下に具体的な実績を挙げる。 1. タンタルとチタンの複合水和酸化物粒子を合成し、チタンの部位を選択的に溶出することにより、主にタンタルの水和酸化物からなる多孔性粒子の合成を可能とした。 2. 酸化チタン系の粒子について結晶化条件を精査した。その結果、通常の球状粒子は結晶化にともなって崩壊するにも関わらず、多孔性の粒子は粒子内のマクロ孔が結晶子の成長に伴う歪みを吸収し、球形のまま結晶性を上げることが可能であることが判明した。 3. 多孔性の水和チタニアまたは水和酸化タンタル粒子を原料とし、温水処理による複合酸化物粒子への変換を試みた。チタン酸ストロンチウム系においては、原料の球形は崩れるものの、これまでの5倍程度の高比表面積を有する粒子合成を得ることができた。水和酸化タンタル系においては、球形を維持したままタンタル酸カリウムへの変換を可能にした。また、原料粒子の化学安定性によって、生成する相が変化することも判明した。 4. アナターゼ型チタニアに結晶化させた粒子を銀のアンミン錯体水溶液中に分散し、さらに高濃度のブドウ糖を加えることにより、多孔性チタニア粒子上に銀ナノ粒子を担持することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、水和酸化物粒子の多孔化に関する検討においては、複数の金属種のアルコキシドを用いて粒子を合成し、粒子中の化学的安定性の低い金属種のみを選択的に溶出することにより、これまでは多孔化が困難であった系の多孔化を可能とした。当初の予定では加水分解条件の制御のみで多孔化を達成する予定であったが、タンタル系では多孔化が達成できなかったため、それに変わる手段として本手法を開発した。 水和酸化物粒子の結晶化に関しては、多孔質の水和酸化物が、反応性が良好であること以外に、結晶化に伴って発生する粒子中の応力の緩和にも有効であるという新たな知見を見出すことができた。これにより、目的に応じて高温・長時間の温水・水熱処理が可能となり高い結晶性が必要となる場合にも本手法が有効であることが見いだせた。 多孔性粒子の複合酸化物への変換に関しては、チタン系、タンタル系において複数種の複合酸化物の合成を新たに達成できた。水和酸化チタンを原料に用いた複合酸化物においては、原料の仕込み組成の調整によって高比表面化が可能であることも新たに判明した。タンタル系においては、当初目的としていた球状の複合酸化物粒子の合成を、タンタル酸カリウム系において達成できた。また、酸化タンタルナノリボンや、タンタル酸ナトリウムの正八面体状粒子等の粒子が、比較的粒径が揃った状態で合成できることも判明した。 銀ナノ粒子を担持した多孔性チタニア粒子の調製に関しては、平成28年度に行う予定であったが、若干予定を前倒しで開始した。その結果、研究計画で予定していた手法が、銀ナノ粒子の担持に適用可能であることが確認できた。 以上の様に、若干想定と異なる結果も生じたものの、目的とする物質の合成および粒子の微構造制御は達成されており、研究全体としては、概ね順調に進展していると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に引き続いて、複合酸化物の新規探索および合成条件の最適化を行う。また、多孔性粒子表面への金属ナノ粒子担持に関しても本格的に検討を開始する。また、今年度が研究の最終年度であるため、年度の後半は、合成した各種多孔性粒子の評価を中心に行う。具体的には、以下の3点について検討する。 1. 反応性に優れる水和酸化物粒子を主たる原料とし、多孔性の複合酸化物粒子への変換を試みる。チタン系の複合酸化物においては、各種触媒への応用を目的として高比表面積化手法の検討を中心に行う。また、半導体材料としての応用に向けて、少量の金属種の均一な添加手法についても検討する。タンタル系の複合酸化物においては結晶相および粒子形状の制御を中心に検討する。平成27年度に合成手法を確立した多孔性のTa-Ti系水和酸化物粒子を原料とすることで、細孔の存在が複合酸化物への変換に与える影響を精査する予定である。また、当初の予定通り、ジルコン酸カルシウム等のジルコニウム系複合酸化物の合成に関する検討を開始する。 2. 光触媒活性等の向上を目的とし、各種チタン系多孔性粒子への銀ナノ粒子担持について、さらに検討を進める。銀ナノ粒子の担持による性能向上が不十分である場合は、白金等の他の金属ナノ粒子の担持も試みる。 3. 本研究で合成した各種粒子の評価を行う。チタン系、タンタル系の酸化物および複合酸化物に関しては、比表面積等の粉体としての性質と共に、光触媒活性等の評価を行う。また、必要に応じて多孔性粒子の部分窒化処理等を行い、可視光応答型光触媒としての可能性も検討する。比表面積が大きく、かつ反応性に優れる多孔性の粒子は、窒化処理がより容易に可能であると予測している。最終的には、高機能を有する酸化物系多孔性粒子の新規合成法として成果のとりまとめを行う。
|
Causes of Carryover |
本年度は約6万円の次年度使用額が生じているが、前年度の残額である約20万円をむしろ消費した形であり、ほぼ計画通りに予算を執行している。前年度の実施状況報告書に記載したとおり、これまでの残額は平成28年度に行う予定であった金属ナノ粒子の担持に関する研究を前倒して進めるために使用している。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は少額であるため、実験用試薬等の消耗品費として使用する予定である。
|
Research Products
(8 results)