2016 Fiscal Year Research-status Report
酸素透過性セラミックスにおけるヤーン・テラーイオンの導入効果
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26420680
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
籠宮 功 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40318811)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酸素透過性セラミックス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、酸素透過性を示すLa-Sr-Fe系ペロブスカイト混合導電性酸化物について、700℃および900℃において酸素分圧を変化させ全導電率測定を行い、丸いイオンであるFe3+が多い領域、ヤーンテラーイオンと考えるFe4+が多い領域を調べた。いずれの温度においても、高酸素分圧領域(PO2=10-1~10-5 atm)では、酸素分圧の低下とともに導電率も低下する典型的なホール伝導の挙動を示した。従って、この領域では、ヤーンテラーイオンFe4+の存在割合がFe3+に比べ大きいことが分かった。一方で、低酸素分圧領域(PO2=10-5~10-20 atm)では、酸素分圧の変化に伴う導電率の変化が小さいことや、酸素分圧の低下に伴い導電率が上昇する挙動を示していることから、Fe3+あるいはFe2+の存在割合が大きいことが示唆された。これら二つの領域に注目し、化学拡散係数の酸素分圧依存性を測定した。低酸素分圧領域(PO2=10-20→10-5 atm)と比較して、高酸素分圧領域(PO2=10-5→10-1atm)における化学拡散係数の方が高い値を示した。この領域は、上述のようにヤーンテラーイオンであるFe4+が多い領域である。従って、ヤーンテラーイオンが酸化物イオンの拡散を促進したことが示唆された。これは、ヤーンテラーイオンが局所的な構造に歪みを発生させることで、酸化物イオンの拡散に影響を与えた結果であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を遂行する過程において、導電率緩和法でイオン拡散を評価することが、当初予定した手法に比べより有効であることが分かったため、その装置をハンドメイドで立ち上げるのに新たに時間を要した。また、その立ち上げ途中による不具合の改善や、精度の高い測定を実現するための改良に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に調べた試料に加え、その他の本研究で対象とするFe系混合導電性酸化物のFe4+, Fe3+の割合を変化させた各試料について、上記で立ち上げた測定手法によりイオン拡散を系統評価する。これより、ヤーンテラーイオンであるFe4+がイオン拡散に与える影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究を遂行する過程において、導電率緩和法でイオン拡散を評価することが、当初予定した手法に比べより有効であることが分かったため、その装置をハンドメイドで立ち上げるのに時間を要した。実際の対象試料全てをこの装置で測定するまでには至らなかったため、その測定に必要な消耗品費が一部未使用となった。また、この実験結果に基づいた成果発表が延期となったため、当初予定していた旅費が一部未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
立ち上げた装置による追加実験で必要となる消耗部品類の費用に充てる。また、これより得た実験結果について成果発表するための旅費などに充てる。
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