溶融塩電析と自己組織化による拡散障壁能を有する耐酸化コーティングの創製

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 26420695
• Research Institution: Akita University
• Principal Investigator: 原 基 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50156494)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 福本 倫久 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20343064)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2017-03-31
• Keywords: 溶融塩 / 電析 / サイクル酸化 / ニッケルアルミナイド / ニッケルーハフニウム合金 / アルミニウム / 拡散障壁 / アルミナ皮膜

Outline of Annual Research Achievements

純Co基材上に，水溶液を媒体としたNi電析と溶融塩を媒体としたHf電析，さらに水溶液を媒体としたNi電析と溶融塩を媒体としたAl電析により，Niアルミナイド/Ni-Hf合金2層コーティングの作製を試みた。その結果，表面層がNi2Al3，内層がNi-Hf合金の2層コーティングが形成された。Ni-Hf合金はNi7Hf2相とNi3Hf相により構成された。比較のために，Ni電析とAl電析によりNiアルミナイド（Ni2Al3）単層コーティングが作製された。両コーティング試料について，1373Kの大気中においてサイクル酸化試験を200サイクルまで行った。その結果，両コーティングともきわめて高い耐サイクル酸化性を示したが，酸化による質量増加は2層コーティング試料の方が単層コーティング試料よりも小さくなった。次いで200サイクル酸化試験後のコーティング層の断面を観察した。その結果，単層コーティング試料では5μmのやや厚い酸化皮膜が形成され，コーティング層中にも内部酸化物の形成が認められた。一方，2層コーティング試料で生成した酸化皮膜は単層コーティング試料よりも薄く，コーティング層中に内部酸化物の形成は認められなかった。コーティング層の断面を線分析した結果，単層コーティング試料ではコーティング層中のCo濃度が30～80at%と高くなり，Al濃度が20at%以下に減少した。一方，2層コーティング試料では，コーティング層中のCo濃度は20at%と少なく，Al濃度は30at%と高くなった。この結果は，Ni-Hf合金層が基材からNiアルミナイド層へのCoの拡散とNiアルミナイド層から基材へのAlの拡散を抑制したことを示している。したがって，2層コーティング試料において酸化皮膜の成長が抑えられたのは，コーティング層中のAl濃度が高濃度に維持され，その結果保護性の高いアルミナ皮膜が維持されたことによる。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

Coを基材試料として，Ni，Hf，Ni，Al電析の4段階電析によりNiアルミナイド/Ni-Hf合金から成る2層コーティングを作製することができた。この2層コーティング試料は1373K，200サイクルの酸化試験で高い耐酸化性を示した。酸化試験後の質量増加がNiアルミナイド単層コーティング試料に比べ小さいことから，Ni-Hf合金層の耐サイクル酸化性に対する有効性が明らかになった。酸化試験後のコーティング層の断面を線分析した結果，2層コーティング試料では単層コーティング試料に比べNiアルミナイド層中のCo濃度が低く，Al濃度が高いことがわかった。この結果から，Ni-Hf合金層が基材からNiアルミナイド層へのCoの拡散を抑え，Niアルミナイド層から基材へのAlの拡散を抑えていることがわかった。これより，2層コーティング試料では，Niアルミナイド層のAlが高濃度に維持され，これにより保護性の高いアルミナ皮膜の形成が維持されたことがわかった。

Strategy for Future Research Activity

平成26年度に基材として低Cr合金のNi-10mass%Cr-2mass%Al合金を使用した。この合金上にNiアルミナイド/Ni-Hf合金2層コーティングを作製することに成功した。1373Kのサイクル酸化試験の結果，Ni-Hf合金層は直接接触しているNi-10mass%Cr-2mass%Al合金に対し組織的安定性が高く，10サイクルまで分解しなかった。高Cr系Ni基合金がタービン・ブレード材に使用されることから，平成28年度は基材合金をNi-20mass%Cr-2mass%Al合金に変え，この合金上に2層コーティングを作製する。平成26年度と同条件でサイクル酸化試験を行い，耐サイクル酸化性を調べるとともに，Ni-Hf合金の高Cr合金に対する組織的安定性や拡散抑制層としての有用性を明らかにする。また，基材からCrがNiアルミナイド層に混入したときの耐酸化性への影響についても明らかにする。

Causes of Carryover

溶融塩電析の電源装置であるポテンショ・スタットを購入予定であったが，他の研究プロジェクトで未使用のものを使用することができたので，購入しなかったことによる。

Expenditure Plan for Carryover Budget

Ni-20mass%Cr-2mass%Al合金を作製するためのNi，Cr，Alの購入，溶融塩電析用セル容器（透明石英管）の新規作製費，溶融塩電析用消耗品（試薬，ムライト管，アルミナ管，白金線，銀線，アルゴンガス）の購入，基材合金の切断，研磨用消耗品（カッター刃，研磨紙，研磨剤）の購入，成果発表用旅費（日本金属学会秋期大会，大阪）