2014 Fiscal Year Research-status Report
ボイラー水中における高強度低合金鋼のSCC発生機構の解明および発生条件マッピング
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26420704
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
礒本 良則 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40127626)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Stress corr. cracking / Low alloy steel / Boiler water environment / SCC mechanisms/analyses |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,超々臨界圧ボイラーの水壁管や高温・高圧ボイラー水環境など,実際に用いられるボイラー水環境を再現し環境的・腐食的に等速試験を行いながら,この環境で生じる高強度低合金鋼の腐食現象および応力腐食割れ機構の解明を行うものである. 研究の初年度には試験装置,試験片治具の組立を主とするため,(1) 対流式浸漬試験装置の設計・試作,(2) 容器への試料電極タップの取付,(3) 試料熱処理装置の設計・試作,(4) 浸漬試験装置,熱処理装置の組立および試運転,および(5) 試料三点曲げ治具の作製を目指した.この内(1),(5)はほぼ試作されたが,その他の計画は未完成に終わった.(1)については,高温(200℃),高圧(2 MPa)の容器であるため,試料,試験液を出入れする部分をフランジ形式とした設計を行い,SUS316Lステンレス鋼を用いて試作した.フランジ部に試験液注入口,取出口,温度測定用スリーブ挿入口を取り付けた.また,対流式の補助容器をユニオンを用いて接続した.リボンヒーターを容器に巻き付けて試験液を加熱する.温度制御用の熱電対を挿入した.(5)については試料の基本寸法を29 mm×4 mm×3mmに決定し,ステンレス製三点曲げ治具を作製した.支点には直径6 mmのジルコニア棒を切断し用いた.試料の(3)については,真空熱処理炉の石英ガラス内径を40 mmとしたが,赤外線を用いた加熱後の冷却法が難しく,高い冷却速度が確保できないために工夫を必要とすることが分かった.(2)についてはフランジの仕様を変更し設計し直すことにした.(4)については,試運転には至らなかった.ボイラー水環境は高温・高圧の環境であるため,設計・作製特にフランジ部など接合部の溶接が難しいため,設計の段階で簡易な形状にするなどの配慮が必要であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度達成度としては,およそ40%とみている.やはり,思いの外試験装置の設計・製作に時間が掛かり,設計の見直しが必要であったため,さらに遅延した.また,低合金鋼の機械的性質が作成した試料毎に異なるため,再現性のある結果を出すことが難しい.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方法については,引き続き試験装置の設計・試作および組立てを行っていき,試運転を始めることにする.一方で,三点曲げ試験方法について,再検討を行うことを考えている.本研究では,低合金鋼に生じる応力腐食割れの発生度を腐食試験前に試料にかけた負荷応力の緩和量から求める方法である.応力腐食割れの発生量が少ない場合には負荷応力の緩和量も少なく,検出できない可能性がある.ノッチを入れることで応力を集中させることができるが,それによりノッチ底部に生じる応力の把握が難しくなる.そこで,三点曲げ試験において,腐食試験の前に任意にかけた応力が,試料の破断応力の何割分に相当するのか,また,負荷応力割合をいかに正確に把握することができるかについて検討を行う.しかし,試料を完全に破断させるまで応力をかけたのでは,その後の腐食試験に供することができなくなる.また,同一の管材から取出した試料にあっても,それぞれ試料で破断応力が異なる可能性がある.そこで,三点曲げ試験における応力―ひずみ曲線を求め,試料毎の曲線の違いを把握した後に,試料毎に異なる曲線の類似性を求める.また,試料毎の応力―ひずみ曲線と簡易に測定できる機械的性質として硬さに注目し,両者の相関を行うことにする.これらの結果から負荷応力の緩和量を正確に求められる応力範囲の存在を確認することができ,負荷応力割合を正確に求めることができる手法を確立する.
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Causes of Carryover |
工学部第三類研究棟のリニューアル時期に当たり,試験装置を思ったように設計,組立を行うことができなかった.リニューアル移転の完了が5月末の予定なので,それ以後実験を再開させる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主な設備備品は購入しているので,今後は試験装置の設計,組立を加速させて行く.
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