2014 Fiscal Year Research-status Report
断面TEMによる金属/酸化物界面高機能化のためのナノ構造・化学状態解析
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26420707
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
田中 康弘 香川大学, 工学部, 教授 (10217086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 知彦 香川大学, 工学部, 教授 (90285718)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 異種界面化学構造ナノ解析 / 生体用チタン表面改質 / 耐熱合金耐酸化被膜 / 電炉鋼赤熱脆性抑制 / 透過型電子顕微鏡 / 化学状態分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)α+β2相型Ti-6Al-7Nb合金に、フッ化物イオン含有電解液で陽極酸化処理を行い表面にナノチューブ構造を作製した。ナノチューブ内にリン酸カルシウムを充填した構造の作製段階である。酢酸カルシウム電解液でマイクロアーク酸化(MAO)すると酸化皮膜中にCaイオンが取り込まれるので、さらにリン酸イオンをMAO皮膜に入れ込むことでリン酸カルシウム含有表面皮膜の作製を行っている。電解液中イオンの酸化皮膜中及びチタン合金との界面での分布状態をSTEM-EDXで明らかにしており、今後、EELSによる化学状態分析を行い、化学状態の解明を行う。 (2)TiAl耐熱合金表面の耐酸化シリサイドコーティング被膜はTiAl合金表面にNb箔を放電プラズマ焼結(SPS)で融着させた後にシリコン含有塩浴でシリケート処理を行い、表面に耐酸化NbSi2被膜を作製している。TiAlの(γ'+α2)ラメラ構造を維持するため1050℃のSPSプロセス温度で融点2469℃のNbがTiAlに融着する機構が不明であった。界面のSTEM-EDX分析の結果、界面にアルミナと金属Nb、Tiの細粒が生じていることが判明した。Nb箔表面の自然酸化皮膜は融点が低く、1050℃でTiAlと接するとAlと酸化皮膜中の酸素が結合し、Nb, Tiが還元され細粒化し、自然酸化皮膜が言わば糊の役割を果たしているメカニズムを見出した。 (3)1%Cu-0.15%Sn含有鋼の地鉄/スケール界面に生じるCu濃化層に対するNi添加量の影響を調査した。STEM-EDX分析の結果、Ni無添加鋼ではCu濃化層はほぼCuとSnを含むのみで僅かなFeが濃化相中に析出していた。Ni添加量の増加と共にCu濃化相中にFeが固溶するようになり、Cu, Ni, Feがほぼ当量ずつ雇用する状況を見いだした。酸化時間によって濃化相中の成分割合の変化を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)硬組織代替材となるα+β2相型Ti-6Al-7Nb合金の生体親和性向上を図るためにナノチューブ構造中にリン酸カルシウムを充填した構造作製が進行している。Caイオン含有MAO酸化皮膜中にリン酸イオンを取込、リン酸カルシウム含有表面MAO酸化皮膜の作製を行っている。これらの酸化皮膜中及びチタン合金との界面での元素分布状態をSTEM-EDXで明らかにしている。 (2)TiAl耐熱合金表面の耐酸化シリサイドコーティング被膜は形成過程で不明であったTiAlとNb高融点金属同士が1050℃で接合できるメカニズムを解明した。 (3)1%Cu-0.15%Sn含有鋼の地鉄/スケール界面に生じるCu濃化層に対するNi添加量の影響を調査した。STEM-EDX分析の結果、Ni添加量によって地鉄/スケール界面に生じるCu濃化層中のFe濃度が大きく変化していることを見いだした。また酸化時間によって濃化相中のCu, Ni, Feの成分割合の変化していくことを見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)Ti-6Al-7Nb合金表面に形成したCa含有酸化皮膜にリン酸イオンを取り入れリン酸カルシウム含有表面酸化皮膜の完成を目指す。アルカリ溶液のリン酸アンモニウム液を用いて、アパタイト含有酸化皮膜を作製する。 (2)TiAl耐熱合金表面の耐酸化シリサイドコーティング被膜を1000℃で100hの大気酸化を行うとTiAl/Nb/NbSi2各界面間で拡散反応が進行し、10種類ほどの傾斜界面へと発展していることをSEM/EDX分析で見いだしたところである。各界面構造をSTEM-EDXで明らかにするため、FIBによる界面観察試料のピンポイントピックアップを行っている。酸化された後の傾斜機能界面を明らかにしていく。 (3)1%Cu-0.15%Sn含有鋼の地鉄/スケール界面に生じるCu濃化層中の成分元素濃度、特にFeの溶解度は赤熱脆性抑制作用を持つNi添加量によって大きく変化し、さらに酸化時間によっても変化することを見いだした。これらの実験データを用いて熱力学計算を行い、Cu濃化層と地鉄、ウスタイトなどの酸化スケールとの界面エネルギーを熱力学計算し、Cu濃化層が分断されスケール中に排斥される条件を見いだしていく。 (4)これら界面のEELS分析及び電子状態計算を行い、化学状態の検討を行う。
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Causes of Carryover |
備品として購入した自動試料埋込プレス機一式の納入価格が、当初見積りより僅かに安価だったので、その分の残額相当分が次年度使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)