2015 Fiscal Year Research-status Report
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26420710
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
白鳥 世明 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (00222042)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 撥水 / 耐摩耗 / 耐久 / 撥液 / 架橋 / 微粒子 / 凹凸構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究目標は架橋構造の形成と耐摩耗性との相関を明らかにすることであった。親水性SiO2微粒子をDip法やSpray法により薄膜形成する手法は、薄膜の表面積を上昇させるために有効な薄膜作製法である。この薄膜の表面微細凹凸構造は、シリカナノ微粒子から成る球状構造が連なって構成されたμmスケールの柱状構造によって構成され、極めて高い撥液性能を実現すると考えられる(西澤、白鳥、Applied Surface Science 263 (2012) pp.8-13及び J Mater Sci (2013) 48,pp.6613-6618)。また、この超撥油性薄膜作製技術は常温常圧で作製可能、過程が簡潔、低コスト、といったメリットを持つが、微細凹凸構造の外力に対する機械的耐久性に大きな課題がある。そこで、平成27年度は前年度作製した超撥油性薄膜の機械的耐久性の向上を検討し、耐摩耗性向上の要因を解明した。具体的には、微粒子薄膜の機械的耐久性を向上させるため、接着剤として一般的に使用されているシアノアクリレートを使用した。この有機化合物は最初濃度が小さい場合には低粘性であるが、乾燥過程で溶媒が蒸発すると水飴状で大きな粘性を持ち、接着剤として利用されていることから、SiO2微粒子同士の結合の効果が期待され、耐摩耗性向上に起因すると予想されたが、実際に綿繊維状に塗布したところ、5Kpaの圧力でも40回の摩耗試験に耐えることが確認できた。特にX線光電子分光法(XPS)による解析によって、架橋構造の形成が耐摩耗性の上昇の要因であることを見出した( Kaichi Sasaki, Mizuki Tenjimbayashi, Kengo Manabe, and Seimei Shiratori*,ACS Appl. Mater. Interfaces 2016, 8, pp.651-659)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究分野で著名な国際学術雑誌(ACS Appl. Mater. Interfaces , Impactofactor =6.7)に成果発表し、掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに 布地など不透明な基材に関して現状品にない撥水性と耐久性を付与することができた。しかしながら、透明な基材にコーティングしても基材の透明性をある程度維持するためには、コーティングする薄膜の膜厚を光散乱が抑えられる膜厚に調整する必要がある。すなわち撥水性と透明性は背反の事象であり、撥油に関してはさらにその背反する性質が顕著になる。最終年度は 電子顕微鏡により正確な表面構造観察を行い、UV-VIS分光分析法を用いて広範囲な波長に対して光透過率を測定することで、撥水撥油特性と耐摩耗性さらには可視光透明性を維持する構造および膜厚に関する知見を得ることを目的とする。
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