2014 Fiscal Year Research-status Report
応力緩和性能に優れる高温ダイアタッチ用Agナノ粒子焼結接合材料の開発
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26420712
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
苅谷 義治 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60354130)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | パワーデバイス / ナノAg粒子接合 / マイクロ接合 / 低サイクル疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
低温で焼結接合が可能であり,かつ高耐熱性なAgナノ粒子を用いた接合法が注目されている.本年度は,焼結条件の異なるAgナノ粒子焼結体の低サイクル疲労試験を行い,疲労寿命におよぼす焼結界面および焼結体内部のミクロ構造の影響について検討し,以下の成果が得られた. 焼結条件(423Kおよび573K)を変えても,低サイクル疲労寿命線図(Manson-Coffin則)の傾きは延性金属材料で得られる0.5よりも小さい0.1となり,脆性的な特徴を有する結果が得られた.また,焼結温度が上がることで寿命則の切片である疲労延性係数が1/2となり,疲労寿命が低下する予想とは逆の結果が得られた.疲労延性係数は静的な破断延性と比例関係にあり,焼結温度上昇により破断延性が低下したことを意味している.Agナノ粒子焼結体内部のミクロ構造に着目すると,焼結温度の上昇により,平均結晶粒径は約2倍に増加し,空孔率が約1/2に減少する.しかし,疲労寿命は低下している.静的試験の結果からは,焼結温度の上昇により降伏強度は増加しており,ミクロ構造の緻密化とともに,強度が増加している.しかし,空孔率を考慮して簡易的に弾性率を算出すると,バルクAgの弾性率と比較して極めて低い値を示し,焼結温度が上昇しても焼結界面が低品質であり,焼結界面の強度増加は顕著ではない. FEMで焼結体内部の応力を計算すると,焼結温度の高い焼結体の方が高応力側に分布している.焼結温度が上昇しても焼結界面の品質は依然低いため,焼結温度の高い焼結体では界面破壊による脆化が顕著となり,これが疲労寿命の低下を招いたと予想される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Agナノ粒子焼結接合材料では,微細なポーラス構造を有し,また,低温クリープを発現することから,高温環境での疲労特性が懸念される.このため,疲労特性を調査することが重要となるが,計測方法が確立されておらず,調査されていない.本年度は,高温使用環境における疲労特性評価に成功し,また,焼結条件の違いにより疲労特性が変化する傾向をつかむことが出来たことは,今後の材料およびプロセス開発に重要な意味を持つ.この点から現時点まで,概ね順調に研究が進んでいると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
疲労特性評価方法(き裂発生寿命)が確立されたため,焼結条件と疲労寿命則の関係を導くことを今後推進する.ただし,パワーデバイスの接合においては,き裂進展による放熱特性の劣化が問題となるため,疲労き裂進展について検討を進める.これには,Ag焼結体のき裂進展方法を確立する.また,有限要素法解析による実際の製品での疲労寿命検討のための,状態方程式(弾塑性特性,クリープ特性)の構築を進め,さらに,有限要素法を用いた疲労き裂進展解析の手法について検討を行う.
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Causes of Carryover |
疲労損傷組織解析用の精密研磨が困難である.当該年度の予定成果を得るための最低限の研磨は行えたが,予定量の精密研磨をこなせてない.このため,精密研磨用の消耗品に関して未執行が生じたため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,残りの精密研磨を行うため,当初の予定どおり,精密研磨用の消耗品購入に使用する.
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Research Products
(3 results)