2014 Fiscal Year Research-status Report
気相中熱酸化プロセスによるハイブリッドナノ粒子の創生と形態制御
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26420716
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
古賀 健司 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 主任研究員 (30356969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平澤 誠一 独立行政法人産業技術総合研究所, 製造技術研究部門, 主任研究員 (30321805)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 合金 / 酸化 / 相分離 / 接合 / 結晶成長 / 透過型電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ粒子の機能高度化のためには、異種材料のナノ粒子間で接合を作ることが重要であり、接合の形成によって、触媒活性等のシナジー効果が期待される。 気相中に生成したNi80Au20合金ナノ粒子の急峻な熱酸化によって、NiOナノロッドの端部にAuナノ粒子が接合したAu-NiOナノロッドが生成する。この生成機構解明のために、900 ℃の酸化温度で、酸素分圧を1.6~16 Paの間で制御し、酸化速度を遅延させることで、酸化途中過程での粒子を得て、どのように酸化が進行するのかを調べた。TEM観察の結果、Ni80Au20粒子表面の一部にNiOの島が出現し、それが隆起することでNiOナノロッドとなり、その端部にAuが濃縮して残存する酸化プロセスが明らかとなった。EDS局所分析の結果、Au部分にはNiの残存は認められず、完全酸化していることがわかった。 次に、急峻酸化条件において、900→300 ℃へ段階的に温度を下げた結果、500 ℃以上でのみAu-NiOナノロッドが生成し、その温度未満では、NiO膜に覆われたNi-Au粒子が得られたが、これは通常の表面酸化プロセスである。同プロセスは、酸素とともに室温から加熱する緩慢酸化条件でも確認されたが、900 ℃以上の高温ではNiO膜が破れることがわかった。 Ni-Au粒子中のAu組成を5~80 at.%に段階的に変化させた結果、すべてで急峻酸化によりAu-NiOナノロッドが得られ、AuとNiOの相対サイズ比を段階的に変化させられることがわかった。また、Ni-Pt合金の急峻熱酸化によって、Pt-NiOナノロッドの生成も確認できた。HAADF-STEM観察およびEELSによる局所組成計測により、Auは半球状でNiOナノロッドのNiO(001)端面に接合していたのに対し、Ptは球状で、その半分がNiOナノロッド端部に潜り込んで接合していたことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
貴金属とNiの合金ナノ粒子の気相中での熱酸化では、酸化条件によって酸化機構自体に大きな変化が起こることがわかった。この変化を利用することによって、並列接合型とコアシェル接合型の2種類を簡単に作り分けることが可能であることがわかった。以上から、当該年度の進捗はおおむね順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、以下の2つの研究を進展させる。1つは、卑金属と貴金属との合金ナノ粒子の熱酸化による引き起こされる酸化誘起相分離現象、および、それにより生成される、酸化物と貴金属が接合して出来上がるハイブリッドナノ粒子の形態について、より深い理解を目指すことである。もう1つは、ハイブリッドナノ粒子が現す物性と、それらの形態との相関関係を明らかにすることである。 平成26年度は、ニッケルと貴金属との合金のナノ粒子を高温に加熱した状態で、急激に酸素に曝すと、合金ナノ粒子表面に生成した酸化物の島が隆起成長するような、特異な「酸化」が起きることが明らかとなった。それによって、酸化物と貴金属との異方的な分離を効率よく達成させることができたため、貴金属-酸化物接合のハイブリッドナノ粒子の全く新しい生成法を与える結果となった。しかしながら、この特殊な酸化モードが、他の卑金属の合金でも起こるのかどうかは予想が出来ない。そのため、より多くの系で現象の本質を探る必要がある。 酸化物には、p型またはn型半導体の性質を示すものがあり、それらの粒子膜はガスセンサの特性を示すが、その検出感度は、貴金属を付与した複合化によって著しく向上することが報告されている。しかしながら、これまで、薄膜を構成する個々の酸化物粒子の形態、および、貴金属と酸化物との接合構造を制御したハイブリッドナノ粒子によって薄膜を作成し、ガスセンサ特性とハイブリッドナノ粒子の形態および接合構造との関係について研究した例はほとんど存在しない。そこで、Au-NiOおよびPt-NiOの異なる形態(マッチ棒型、コアシェル型)を作り分けて、水素等のガスのセンシング特性について研究を行う。 以上の研究によって、簡便なプロセスによって機能性のハイブリッドナノ粒子の製造を行い、ガスセンサなどのナノデバイスの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度は、貴金属-NiOハイブリッドナノ粒子の生成機構解明のための実験データ取得、結果と議論のまとめ、論文発表等でかなりの労力が必要となったために、計画していた、貴金属-Al酸化物ハイブリッドナノ粒子の生成に関する研究は、データ取得までで留まった。結果に対する議論をまとめた後に行う予定であった、論文投稿、学会発表に使用予定の研究費が若干余剰となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、貴金属-Al酸化物ハイブリッドナノ粒子の関連論文の投稿と学会発表のための費用、今年度開始の新たな粒子生成実験のための消耗品等費用、ガスセンサ特性を調べるために必要となる実験システムの構築のための部品類購入費用などに使用する予定である。
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Research Products
(5 results)