2014 Fiscal Year Research-status Report
希土類の生体への影響:希土類の新規機能(抗菌)材料化に向けた生物学的アプローチ
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26420718
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
若林 篤光 岩手大学, 工学部, 助教 (30332498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 歩 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (60523800)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レア・アース / 抗菌活性 / 低毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
実施計画にしたがい、26年度は以下の2点に関する研究を行った。 1)レア・アースの種々の菌類、細菌類に対する毒性(抗菌性)の評価:抗菌性の評価に用いられる一般的な方法であるペーパーディスクハロー法により、クロコウジカビ、アオカビ、大腸菌、黄色ブドウ球菌の生育に対するレア・アース塩の影響を検討したところ、大腸菌および黄色ブドウ球菌に関しては、抗菌金属として広く認知されている銀や銅とおおむね同等の抗菌活性が観察された。またクロコウジカビ、アオカビに関しては重希土類元素では銅よりも強い抗菌活性が観察されたが、軽希土類ではアオカビに対して弱い抗菌活性が認められ、クロコウジカビに対しては抗菌性が見られなかった。以上の結果より、レア・アース塩が細菌類に対しては充分に強く、真菌類に対してやや弱い抗菌活性を有することが明らかとなった。 2)レア・アースの哺乳類培養細胞に対する細胞毒性、遺伝毒性の評価:ヒトリンパ芽球由来の培養細胞、TK6の培養液中にレア・アース塩を添加して哺乳類細胞の生育に与える影響を検討した。レア・アース塩は、銀や銅の塩が細胞の生存を強く阻害する濃度域において、上記細胞の生存率に全く影響を与えなかった。また同細胞を培養後に固定し、細胞核の形態観察により遺伝毒性(発がん性)を検討した結果、レア・アース塩には遺伝毒性が認められなかった。 以上の結果はレア・アース塩が、従来から抗菌金属として用いられてきた銀や銅と遜色ない抗菌性を有し、かつ哺乳類細胞に対する低毒性という観点からはより優れた材料である可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りにレア・アースの抗菌性、抗カビ性に関する検討を実施し、また哺乳類細胞に対する毒性の評価を行った。レア・アース塩は、高い抗菌性、低い細胞毒性という抗菌金属材料として望ましい性質を有するという期待通りの結果が得られた。27年度の研究を実施するための準備もおおむね整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、当初の計画に従って、産業廃棄物である製鉄スラグ中のレア・アース含量を測定した後に酸によるレア・アース塩の抽出条件について検討する。酸抽出の後に中和し、当初の計画に従って、粗抽出物を用いて26年度同様の抗菌抗カビ活性の検討と細胞毒性の評価を実施する。
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Causes of Carryover |
昨年度末において、1900円の試薬の購入を計画していたところ、諸般の事情から急遽購入を取りやめた。科研費の有効かつ適切な使用という観点から、不要不急の物品ではなく次年度に使用すべきと考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として使用する。
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