2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26420722
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
冨田 靖正 静岡大学, 工学部, 准教授 (50303532)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 正極活物質 / 二次電池 / フッ化物 / 高エネルギー密度 / 固溶体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,リチウムイオン二次電池の正極活物質として高い性能を示すことが期待されるフッ化物系化合物について,高エネルギー密度化を目指している。その中で高容量を示すFeF3系化合物は,化学式中にLiイオンを含まないことから,既存の電池システムに直接使用できない。また,Liイオンを含むフッ化物系活物質であるMFx(M = Mn, Ni, Co;x = 2, 3)とLiFの複合フッ化物では,導電性の低さから,高いエネルギー密度を得られていない。そこで,導電性の改善を目指しLiF-NiO系化合物を合成したところ,放電電圧3.6V,200mAh/gを超える高い充放電特性が得られた。LiF-NiOにおいては,その充放電メカニズムの解明,および,さらなる高エネルギー密度化が求められることから,それらの課題解決に向けて,LiF-MMx'Oy(M,M'= Ni,Mn,Co,Fe)の合成・電池作製評価を行うとともに,含有元素と充放電特性の関連および充放電プロセスにおける化合物の変化について解析を進めている。 今年度は,LiF-NiO系化合物を合成し,組成や合成条件の変化と充放電特性との関連および,充放電前後の変化をXRD,XPSにより評価した。粉砕の長時間化により,LiFとNiOが固溶体となり,充放電容量が大きくなること,充放電前後では,Liが脱離挿入され,それに伴いNiの酸化数が変化することが示され,正極の作製法を最適化することで230mAh/gを超える放電容量を得た。また,活物質の導電性向上を目指しLiドープNiOを用いたところ,充放電レートの改善が見られた。 さらに,NiO以外の酸化物として,MOやMM2O4を原料として,LiFとの複合化を行い,電池を作製・評価したところ,LiF-MgMn2O4において,LiF-MM2O4系において最も高い250mAh/gの放電容量を得ており,さらなる高容量・高エネルギー密度化を目指して,新規化合物の開発を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたフッ化物の合成・評価を一通り行った。フッ化物に関しては,研究計画に沿って,微粒子化や表面修飾を行った結果,化合物を得ることができたが,導電性の飛躍的な改善には至らず,期待したほどの容量を得ることができていない。 一方,上記に加え,昨年度後半に着想した新たな化合物系であるLiF-NiO系活物質の合成評価に取り組み,既存の材料を超える放電容量を得ている。この充放電前中後の化合物を取出し,評価することで,充放電プロセスを一部解明しており,当初の予定よりも早い進度で評価を進めている。 LiF-NiO以外にもいくつかの化合物を合成しており,現時点の最大で,本研究課題で達成を期待していた放電容量の9割弱の値を得ており,さらなる高エネルギー密度化が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
LiF-NiO系化合物については,合成法の最適化や充放電特性との関連がある程度進んでいるため,継続して進める。特に充放電前・中・後の各状態における活物質中の各元素の配位状況などを詳細に分析する。その解析に加え,Niを他の金属に部分的に置換し,それらの変化と充放電特性の関連などから,充放電メカニズムのさらなる解明につなげる。 NiO以外に,遷移金属酸化物やLi含有遷移金属酸化物を用いて活物質を合成し,合成条件の最適化などにより,高エネルギー密度化を目指す。 現在は,長時間粉砕による合成であるが,得られた物質の結晶性が悪いため,結晶性向上を目指した合成方法を検討する。
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