2014 Fiscal Year Research-status Report
リチウムイオン電池負極材料を指向した新規ナノポーラス型Geの創製
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26420727
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
仲村 龍介 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70396513)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナノポーラス構造制御 / ゲルマニウム / アモルファス / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
モルファスゲルマニウムには潜在的に多量の点欠陥が含有される.アモルファスの構造変化および結晶化に伴う点欠陥の集合化を利用するとナノポーラス構造を制御できる可能性があり,リチウムイオン電池の電極材料への適用も期待できる.そのための基礎研究として,スパッタリングにより作製したアモルファスゲルマニウムの構造変化および結晶化とナノ孔形成挙動を透過型電子顕微鏡により観察した.具体的には,(1)加熱による結晶化挙動の観察,(2)アモルファスの初期構造の電子線動径分布解析,を行った.(1)550~600℃付近で結晶化し,10nm程度の微細なナノ結晶粒の生成とともに3nm程度のナノ孔が高密度に生成した.(2)アモルファスゲルマニウムは室温での時効によって構造が変化する特異な挙動が見い出された.作製直後から時間の経過に伴い二体分布関数のピーク強度は低下していき,約半年後には構造変化は飽和する.作製直後の薄膜中には規則性の高いクラスターが含まれ,時効によってそれが崩壊して一様にランダムなアモルファス構造へ変化すること示す結果である.作製直後および時効後(半年以上経過)のアモルファス薄膜に125keVの電子ビームを照射すると,異なる結晶化組織が出現した.後者は微細なナノ結晶組織となり加熱結晶化と同様であるのに対して,前者には微細なナノ結晶マトリックスに粗大なナノ結晶粒子が出現した.電子照射結晶化組織の違いはアモルファス構造の違いを反映するものであり,時効による構造変化の結果を支持するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた,(1)TEM内でのその場加熱およびその場照射実験,のための予備実験を順調に終え,アモルファスゲルマニウムの加熱および照射結晶化の条件を把握することができた.この基礎データをもとに,(2)アモルファス構造の電子線動径分布解析,のための予備実験も滞りなく進展した.結晶生成とナノ孔の生成挙動の関係性についても,加熱および電子照射のそれぞれについておおむね把握できた.開始当初は予想していなかった「室温時効による構造の変化」を見い出したのは,基礎研究の成果のひとつである.アモルファスの初期構造は結晶化組織に大きく寄与するため,本研究計画に組み入れて解明すべき課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」に記した成果に基づいて,次年度はアモルファスから結晶に至るまでの構造変化の追跡に焦点を絞って研究を進める.電子照射結晶化の条件(電子エネルギー,照射速度,照射量)は昨年度の実験により把握済みである.基礎データに従って,構造の連続的変化の追跡に挑む.上述の「室温時効による構造の変化」の解明をさらに進めるべく,放射光X線を使った二体分布解析も実施し,0.1nm~5nmの範囲での配置の情報を取得する.アモルファス構造中に含まれる規則的な領域の存在を明らかにするべく研究を進める.
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Causes of Carryover |
昨年度予定していた高額のスパッタリングターゲットの購入を次年度に延期することにしたために物品費に余りが生じた.予備実験の計画が若干遅れたためで研究の基本計画には支障はない.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の計画では新たにターゲットを作製し,残額を執行する.
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Research Products
(2 results)