2015 Fiscal Year Research-status Report
高精度な加工硬化特性評価に基づく高強度電縫鋼管の二次加工法の確立
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26420737
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宅田 裕彦 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (20135528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜 孝之 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (10386633)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロール成形 / 高張力鋼板 / 電縫鋼管 / 加工硬化特性 / 環境材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度に得られた成果を以下に箇条書きに示す. (1)被加工材の板幅中央部の内外表面にひずみゲージを貼付して単スタンドのロール成形装置を通過させることで,ロール成形中のひずみ履歴を調査した.その結果,幅方向に生じるひずみは長手方向よりも大きいこと,また幅方向ひずみは外表面が内表面よりも大きいことから,ロール成形によって被加工材が受ける主たる変形は幅方向の引張曲げであることが明らかとなった.一方長手方向には,ひずみの大きさは幅方向よりも小さいものの,二度の曲げ曲げ戻しを受けることが明らかとなった.以上の傾向は,弾塑性有限要素法解析でも定性的に再現することができ,また最終的に被加工材の外表面に生じる相当塑性ひずみは約6%であると解析により見積もられた.この結果から,ロール成形後の鋼管の材料特性を予測するためには,平成26年度に明らかとなったエッジ部における複雑なひずみ経路だけでなく,上記のような板幅中央部でのひずみ経路依存性も考慮する必要があることが示唆された. (2)平成26年度および上記(1)の結果を受けて,変形中のひずみ経路変化が加工硬化特性に及ぼす影響をモデル実験により調査した.ここでは,エッジ部で見られるひずみ経路を模擬したいくつかの2段階ひずみ経路パターンを被加工材に与えることで,その加工硬化挙動の違いを調べた.具体的には,IF鋼板を対象として,被加工材に引張もしくは圧縮の変形を与えた後に,負荷角度を変化させて引張変形を与える実験を行った.そして負荷角度が二段階目の加工硬化挙動に及ぼす影響を調査した.その結果,ひずみ経路は降伏応力に非常に大きな影響を及ぼし,特に交差効果経路においてその影響が顕著であった.その一方で,ひずみ経路が引張強さに及ぼす影響は降伏応力に比べると小さいことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今後の研究の推進方策に挙げた,①ロール成形中のひずみ履歴を調査する,②ひずみ経路を模擬したモデル実験により,ひずみ経路が加工硬化挙動に及ぼす影響を検討する,という2項目を順調に遂行することができた.以上の結果を総合的に鑑みて,【おおむね順調に進展している】と判定した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究が順調に進展していることから,平成28年度も当初の予定通り,電縫鋼管の加工硬化特性を主として実験的に取得する方法の検討と実験の実施を行う.以下に具体的な研究計画を示す. (1)平成27年度までの研究により,ロール成形中にはエッジ部および板幅中央部ともに複雑なひずみ履歴を受けること,またそれが加工硬化特性に影響しうることが明らかとなった.そこで平成28年度は,実際の変形履歴により近い負荷経路を想定したモデル実験を行うことで,変形中のひずみ履歴が加工硬化挙動に及ぼす影響をより詳細に調査するとともに,モデル実験により実際に鋼管で生じる加工硬化特性をどこまで再現できるか検討する.この際,実際のひずみ履歴は非常に複雑なため,忠実に再現しようとすると極めて困難な実験になる可能性がある.そこで,使用しうる実験装置を用いて現実的な時間で評価可能な実験方法を検討する.また,異なる材種での同様の実験を行うことで鋼種による変形特性の違いやモデル実験の汎用性を検討する.それにより,本研究題目でもある高精度な加工硬化特性の評価方法の確立を目指す. (2)弾塑性有限要素法解析を用いて(1)で確立した加工硬化特性のモデル実験の解析を行い,高強度鋼管の加工硬化特性を計算機上での再現を目指す.具体的には,平成26年度で確立した一要素による加工硬化特性の評価手法を用いて,上述のモデル実験解析を行う.それにより,計算機上で加工硬化特性を再現するために必要な材料モデルを検討し,またそれを解析に取り込むことで,高精度な加工硬化特性の再現を目指す.ここで重要となるのは,平成27年度の研究で明らかにした交差効果およびバウシンガー効果の影響である.解析でのこれらの取り扱いに焦点を当てて検討する. 最後に本研究を総括し,今後の課題を抽出する.
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Causes of Carryover |
元々試験機の改良を行う予定であったが,年度途中で生じた試験機の故障などの影響で,改良箇所が当初の予定より多くなる見込みにあった.そのため,分割して発注するよりもまとめて発注する方が時間的かつコスト的に有効と考え,平成28年度にまとめて発注することとした.ただし,試験機の故障等は軽微であり,研究計画には大きな影響を及ぼしていないことを申し添える.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試験機の改良で新たに製作する治具や供試材,ひずみゲージなどの消耗品を予算に計上している.出張旅費としては,2回の国内会議,1回の国際会議に参加すると試算して必要経費を計上した.
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