2015 Fiscal Year Research-status Report
人工鉄さび粒子を用いた耐候性鋼のレアメタル代替元素の探求および高耐食性鋼材の開発
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26420739
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
田中 秀和 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (70325041)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人工さび / 耐候性鋼 / 合金金属 / 大気腐食 / 保護性さび粒子層 / レアメタル代替金属 / 形態制御 / 分子吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,鋼材の腐食生成物である「鉄さび」について,「さびでさびを防ぐ」機能を付与し,さらにレアメタル使用量を低減した新たな高耐食性鋼材の開発を目的に,以下の研究を予定している。 ① 耐候性鋼の合金金属(Cu,Cr,Niなど)の詳細な働きを調べるため,人工鉄さび粒子の生成,構造,形態,腐食寄与分子の吸着特性に及ぼすCu(II),Cr(III),Ni(II),Ti(IV)などの単独または複合添加効果を調査し,それぞれの合金金属の役割をナノ-ミクロ-マクロレベルで解明する。 ② 実環境下でのさび粒子と人工鉄さび粒子の相関をナノ-ミクロ-マクロレベルで解明する。 ③ 微細で緻密な保護性さび粒子層の形成に有効な金属あるいは元素を人工鉄さび実験で探求し,耐候性鋼のレアメタル使用量を低減した新たな高耐食性鋼材を開発する。 平成27年度は上記①,③について,人工マグネタイトさび粒子の生成に及ぼす耐候性鋼の合金金属イオンの影響および耐候性鋼のレアメタル代替金属の探求を主に検討した。沿岸部で生成するマグネタイトさびの結晶化,粒子成長に対する金属イオンの影響はCr(III) > Cu(II) > Ni(II)となった。とくに,Cu(II)はマグネタイトの生成を抑制し,安定さびであるα-FeOOHの生成を促進した。Sn(II)添加もマグネタイトさび強く生成を抑制し,その効果はCu(II)より高く,Snは耐候性鋼のレアメタル代替金属となることが示唆された。また,鋼材-γ-FeOOH粒子界面でのマグネタイトさびの生成はCu(II) > Ni(II)は促進するが,Cr(III)は抑制するとわかった。一方,上記②について,実環境で生成したさび粒子について,窒素および水吸着等温線測定で調査したところ,水吸着等温線は窒素吸着等温線と比べ,より高い精度で鉄さび粒子層の緻密性・保護性を評価できると明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工鉄さび実験により,各暴露環境で生成する鉄さび粒子の微細化に有効な耐候性鋼の合金金属の役割,働き,動きがナノ-ミクロレベルで明らかになり,さらに耐候性鋼に合金化されているレアメタルの代替金属の選定条件が解明されつつあることから,研究目的の達成度を「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成28年度の研究計画では,平成26,27年度の研究の継続を行うとともに,下記の課題を行う。 (1)これまで解明してきた耐候性鋼の各暴露環境での腐食による鉄さび粒子の微細化に有効な合金金属イオンの詳細な働きについての知見を基に,耐候性鋼に合金化されているNiやCuのようなレアメタルと同等あるいはそれ以上の働きをする,合金金属の探求を人工鉄さび実験で行い,レアメタル使用量の低減策を開発する。 (2)実環境で生成するさび粒子の構造,組成,形態を詳細に調査し,鋼材の暴露環境の大気組成に対する構造や形態の違いの要因をナノ-ミクロレベルで解明する。さらに研究協力者が有している実さびの経年変化についての知見を基に,実環境での鉄さび粒子の生成および耐候性鋼に合金化されている個々の合金元素の役割を調査,解明する。 (3)平成26-28年度の研究の総括を行う。
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Research Products
(9 results)