2015 Fiscal Year Research-status Report
酸化物ナノ粒子によるナノテルミット反応を利用したMMCの自発的複合化技術の開発
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26420752
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
水本 将之 岩手大学, 工学部, 准教授 (90325671)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金属基複合材料 / 金属ナノ粒子 / テルミット反応 / 自発溶浸 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究成果から,アルミナボールの表面に導入されたNiナノ粒子の分布状態が,その後の自発溶浸過程に影響を及ぼすことが示唆された.また,大気雰囲気中での高温保持によって,Niナノ粒子が酸化してNiOに変化したことがわかったことから,NiOとAC3A合金溶湯とのテルミット反応によって自発溶浸が生じたと考えられた. そこで,Niナノ粒子の酸化過程と自発溶浸過程の関係について調べるために,Niナノ粒子の分布状態のことなるアルミナボールを用いて,自発溶浸完了までの高温保持途中の試料を作製することにより,AC3A溶湯のアルミナボール層中への自発溶浸過程を詳細に観察した.その結果,密な皮膜状にNiナノ粒子が分布したものを用いた場合には,約100minまではAC3A溶湯はアルミナボール層中に非常にゆっくりと溶浸していたが,その後急速に溶浸が進行し,約120min後に溶浸が完了していた.一方,疎な粒子状にNiナノ粒子が分布したものを用いた場合には,約120min後においてもほとんど溶浸していなかったが,約720min後には溶浸が完了してした. これらの結果から,Niナノ粒子を用いた自発溶浸のプロセスは,溶浸速度が非常に遅い第1段階とその後の非常に速い第2段階からなることが示唆された.第1段階では,アルミ合金溶湯表面の酸化被膜によって,NiおよびNiOナノ粒子とアルミ合金溶湯の接触が妨げられるため,溶浸がほとんど進行しないと考えられる.しかし,高温保持によりNiナノ粒子が酸化され,そのためアルミナボール層中の酸素が消費される結果,減圧が生じて酸化被膜に外力が加わり,破壊されると考えられる.その結果,アルミ合金溶湯とNiO粒子が接触し,第2段階のテルミット反応による迅速な自発溶浸が進行すると考えられる. 以上のように,酸化物ナノ粒子を用いた際の自発溶浸機構を明らかにすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究で,アルミナボールの表面に導入されたNiナノ粒子の分布状態が,その後の自発溶浸過程に影響を及ぼすこと,Niの酸化物であるNiOとアルミ合金溶湯とのテルミット反応によって自発溶浸が可能になることがわかったが,詳細な自発溶浸過程については不明であった. 本年度は,Niナノ粒子の分布状態を変化させたアルミナボールを用いて自発溶浸実験を行い,自発溶浸過程の解明を行った.その結果,高温保持中にもほとんど溶浸が進行しない第1段階と,その後の急速に溶浸が進行する第2段階の2つの段階で自発溶浸が進行することがわかった.第1段階は,Niナノ粒子の酸化によるプリフォーム中の減圧に必要な時間と考えられ,この減圧によってアルミ合金溶湯表面の酸化被膜に外力が加わり,破壊されることで,第2段階に移行することがわかった. 従来の自発溶浸に関する研究に,酸化や窒化などの反応によるプリフォーム中の減圧が自発溶浸の開始に必要であるとの報告があるが,本研究の結果も基本的にそれに一致するものであり,本研究では,耐酸化性の高いNiを反応性の高いナノ粒子状にして導入することで酸化が迅速かつ容易になったと考えられる. また,第2段階は発熱反応であるテルミット反応による迅速に進行する反応であることから,従来の金属-金属接触に起因する濡れ性の改善による自発溶浸とは異なり,自発溶浸速度が非常に速いことがわかった. 以上のように,金属酸化物を利用したテルミット反応による自発溶浸が可能であることを明らかにするとともに,金属ナノ粒子を利用した自発溶浸の進行機構および進行過程を明らかにすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
解析が容易なアルミナボールに替えて,実際のMMCで使用されているAl2O3およびSiCのセラミックス粒子に,これまでの研究で得られた条件を用いて無電解めっきによりそれらの表面にNiナノ粒子の導入を行う.表面改質したセラミックス粒子を用いてMMCを自発溶浸により作製し,ヤング率および熱伝導率などの諸物性を測定して,本研究で開発する技術によって作製するMMCの特性評価を行う. また,これまでは無電解めっきを応用してアルミナボールの表面にNiナノ粒子を導入して表面改質を行ってきたが,無電解めっきをする際には種々の処理工程が必要とされ,大量のセラミックス強化材の表面改質には,高コストとなり,迅速性および安定性に欠けることが問題となってきた.そこで,より低コストな表面改質技術の開発を目指すために,メカニカルミリングを応用して,セラミックス強化材表面へのナノスケールの金属の導入を試みる.具体的には,セラミックス粒子とCuやNiなどの活性な金属を同時にメカニカルミリングすることにより,セラミックス粒子の表面にCuやNiなどの金属を塑性変形により機械的に導入する.その際に,メカニカルミリングの諸条件を変化させて,セラミックス粒子の表面に導入される金属の量および形態を観察し,ミリング条件との関係を明らかにする.それらの結果から,昨年度までの研究で得られた自発溶浸のために必要な金属の分布が得られるようなミリング条件の最適化を行う. さらに,最適化されたミリング条件によって表面改質したセラミックス粒子を用いて自発溶浸実験を行い,無電解めっきにより表面改質したセラミックス粒子を用いた場合との比較を行う.また,MgやCaといった,より活性な金属を用いてミリング実験を行い,濡れ性の改善効果の高い表面改質技術の開発を目指す.
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Research Products
(3 results)