2015 Fiscal Year Research-status Report
微粒子プロセスにマイクロ波加熱を適用した新規なナノ粒子材料合成反応場の構築と利用
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26420763
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
福井 国博 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60284163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 英人 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30116694)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロ波 / 粉体ハンドリング / 誘電率 / 熱重量分析 / 電磁界強度分布 / 温度分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロ波加熱はヒートスポットやスーパーヒートの形成などにより各種反応の進行を著しく促進する反面、不均一な温度分布に起因する反応ムラを生じるという問題がある。本研究では、この問題点を克服しつつ利点をより一層生かした高効率かつ迅速な機能性粒子合成プロセスを開発する。すなわち、流動層, 乾式・湿式粉砕, マイクロ流路輸送などの微粒子プロセスにマイクロ波加熱を組合わせた新規な連続式の反応場を構築し、複合酸化物ナノ粒子やバイオマス由来水分解触媒の合成、廃棄物の放射性物質吸着剤への再資源化などに利用することを目的とする。 また、電磁界と伝熱の連成シミュレーションに基づいてマイクロ波加熱式熱重量分析装置を開発し、マイクロ波加熱が各種反応に与える熱的・非熱的効果の影響に関する機構解明を行うことを第2の目的とする。 本年度はマイクロ波加熱式熱重量分析装置の開発を中心に行った。すなわち、マイクロ波加熱式熱重量分析装置を新たに開発し、その性能評価を実験と数値計算によって行った。一定温度上昇速度下における吸収マイクロ波と試料質量変化を同時に正確に実測できる構造とし、反応の進行の関係を従来の加熱法と比較する手法により、学術的に重要なマイクロ波加熱の熱的・非熱的効果や反応促進メカニズムを解明することを目指した。 特に今回は、酸化銅ペレットの誘電損失や誘電率の温度依存性を測定し、文献との比較を行った。その結果、ペレットの温度分布を3次元数値シミュレーションで再現できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、マイクロ波加熱式熱重量分析装置の開発を開発できた。本装置により資料が吸収したマイクロ波エネルギー量を正確に測定できることを、数値シミュレーションとの比較によって、検証できた。また、異なる温度域においても精度よく吸収マイクロ波量を測定できた。さらに、マイクロ波吸収量と質量と温度の同時測定も可能にし、硝酸銅水溶液からの脱硝過程における3者の関係を計測した。その結果、脱硝反応に要するエネルギー量を測定でき、従来のTG-DTAと類似した値が観測できた。 また、反応場の最適化や分析装置の設計指針を与えるために、反応場内の電磁界強度・伝熱3次元連成シミュレーションを行った。このシミュレーションで求められる被加熱原料の吸収エネルギー(電力密度)がすべて熱に変換されるとして、熱伝導や自然対流なども考慮した熱流体シミュレーションから温度分布を算出した。算出した温度における誘電損失などの物性を再計算し、再度電磁界シミュレーションを行う。このステップを収束するまで繰返す連成シミュレーション法を確立できた。 よって、上記の通り判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度には、以下の2つの項目を検討する予定にしている。 超音波振動細管粒子輸送場を利用したマイクロ波加熱反応器の連続化・大規模化 すでに構築したマイクロ波加熱流動層型反応場のスケールアップを行う。この際に、反応装置を単純にスケールアップするとマイクロ波の浸透深さの影響で反応の不均一性が顕著となる。この問題を解決する手法として多数の細管を並列に配置し、超音波振動を利用して粒子を輸送させながら固相反応などを行える装置を開発する。また、パルス状のマイクロ波照射法を導入することで熱的な非平衡状態を作り出し、輸送障害の防止や新規な効果の発現を試みる。 粉砕併用型マイクロ波加熱反応場の構築と水熱処理・還元反応への利用 マイクロ波加熱と乾式粉砕を併用する場合は遊星ボールミル粉砕を、湿式粉砕を併用する場合はビーズミル粉砕をそれぞれ利用した反応装置を開発する。装置形状、粉砕媒体材質の改良を行い、機械的エネルギーの付与効率を実験的に最適化する。乾式粉砕を併用した装置では、グラファイト系やLi-Mg-N-H系の水素吸蔵材料の効率的な短時間合成, コア-シェル型の複合化粒子の創製を試みる。一方、乾式粉砕を併用した装置では、水熱処理によるチタン酸バリウム粒子ナノ粒子の合成や水熱処理によってバイオマス焼却灰を放射性物質吸着剤として利用できるゼオライトに再資源化するプロセスの効率化に応用する。
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Causes of Carryover |
今後も当初の計画に沿って研究を実施していく予定にしている。前年度と今年度に予定していた項目のうち、十分な検討が行えなかった項目を重点的に検討し、その検討結果を踏まえて、最終年度である今年度の研究を完了し、総括できるようにする。すなわち、超音波振動細管粒子輸送場を利用したマイクロ波加熱反応器の連続化・大規模化の実験を完了させる予定であったが、予想外に粉体の流動化が困難であったために若干の研究の進捗の遅れが見られた。このために、この検討項目で使用予定であった経費の執行ができなかった。このために、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画に加えて、昨年予定していた検討項目「超音波振動細管粒子輸送場を利用したマイクロ波加熱反応器の連続化・大規模化」に関する設備と消耗品の購入で経費を執行する。特に、多数の細管を並列に配置し、超音波振動を利用して粒子を輸送させながら固相反応などを行える装置を開発する。また、パルス状のマイクロ波照射法を導入することで熱的な非平衡状態を作り出し、輸送障害の防止や新規な効果の発現を試みる。これに加えて、今年度予定の経費も着実に執行することで、研究成果を挙げて本研究全体を完成させる予定にしている。
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