2015 Fiscal Year Research-status Report
機能性高分子/金属ナノ粒子複合体の作製とその有害物質吸着特性解析
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26420764
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
後藤 健彦 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10274127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯澤 孝司 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60130902)
迫原 修治 新居浜工業高等専門学校, その他部局等, その他 (80108232)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高分子ゲル / 磁性微粒子 / 吸着剤 / 無機/有機複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
感温性高分子/磁性ナノ粒子複合体を作製し、複合体中の磁性ナノ粒子を磁場印加により発熱させて感温性高分子の相転移を引き起こすことが可能かを検証した。まず、複合体の合成条件として塩化鉄イオン溶液中で膨潤し塩化鉄溶液を取り込むことが可能なゲルの合成条件、塩化鉄溶液濃度を検討し、濃度が高いほどゲルが膨潤しにくくなりゲル内に取り込まれる塩化鉄溶液量が減少することが明らかになった。一方、塩化鉄溶液濃度が低いと粒子含有率も低くなるが、FeCl2/FeCl3 = 0.2/0.4 mol/Lを超えるとゲル内に溶液が取り込まれなくなり、粒子含有率が急激に減少した。そのため、0.05/0.1 ~ 0.2/0.4 mol/Lの溶液濃度で合成することが適していることが判った。 また、ゲル内に取り込まれた塩化鉄溶液から磁性粒子(マグネタイト)の生成に適した外部アルカリ溶液の濃度や反応温度を検討し、NaOHを単体溶液で用いるよりも、NaOHとNaBH4の混合溶液を用いた方がマグネタイト粒子の生成が促進されることが判った。さらに NaBH4の濃度が高くなるほどマグネタイト粒子の結晶子径が大きくなることが判った。 また実際に複合体に交流磁場を印加して、その発熱特性を検討し、磁性粒子を内包すると交流磁場印加によって温度が上昇しており発熱していることが確認できた。磁性粒子直径と発熱量の関係を検討し、10 nm付近の粒子の発熱量が大きいことが分かった。そこで、ゲル中で磁性粒子を作成する際に磁性粒子を最適な粒子径まで成長させることによって、発熱量が大きくなる傾向が得られたが、粒子径が発熱量に及ぼす明確な影響はさらに検討を重ねる必要がある。 また、粒子含有率が大きいほど温度上昇が大きくなることが明らかになった。さらに粒子含有率がほぼ同じ複合体でも、含有される粒子の特性によって発熱量が異なることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
機能性高分子/金属ナノ粒子複合体の合成条件の検討:複合体についてXRD測定を行い、内部にFe3O4粒子が生成していることを確認した。また、ゲル内の粒子含有率は塩化鉄濃度の増加とともに大きくなるがFeCl2が0.2 mol/L付近で極大となり、それ以上の濃度で急激に減少した。これは溶液濃度が高いほどゲルの膨潤が低下し、ゲル内に取り込まれる溶液量が減少したため取り込まれる鉄イオンの量が制限されたためと考えられる。従って、0.05~0.2 mol/Lの溶液濃度で合成することが適していることが判った。さらに、アルカリ溶液が磁性粒子生成に及ぼす影響を検討し、NaBH4を加えることで粒子含有率が増加し、NaBH4濃度が高くなるほど結晶子径が大きくなり、NaBH4 = 0.1 mol/L以上で合成するとマグネタイトの結晶ピークが強くなるため、0.1 mol/Lで合成するのが適していることが判った。以上、高分子ゲルと磁性ナノ粒子複合体の合成に関して最適な条件が明らかになったので、本項目に関する目標は達成できた。 複合体の機能発現性の検討:ゲルに磁性粒子を内包した場合でもゲル本来の感温性を示すかどうかを検討するために、円柱状ゲルと磁性粒子内包円柱状ゲルの膨潤径を比較した結果、どちらも転移温度付近でその体積を大きく変化させており、親疎水転移を引き起こしていることが判った。また、転移温度にも変化は見られず、ゲルのみの場合と同様に親疎水転移を引き起こすことが確認できた。従って本項目に関する目標は達成できた。 複合体の吸脱着特性吸脱着特性/最適操作条件の検討:磁性粒子を内包した複合体に800kHzの磁場を印加すると交流磁場印加によって温度が上昇しており、発熱が確認できた。具体的な、吸脱着実験は実施できていないが、ゲルの親疎水転移は確認できたので、本項目に関しても、ほぼ目標は達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.複合体の吸着特性/最適条件の検討:高分子ゲル内で塩化鉄溶液を還元することにより作製したゲル/磁性粒子複合体を、内分泌撹乱化学物質である疎水性のビスフェノール(BPA)溶液中に分散させる。100~900kHzの高周波電流をコイルに流しコイル内に磁場を形成し、複合体を懸濁したBPA溶液を入れた容器をコイル内に設置する。 外部より磁場を与えることで磁性粒子を発熱させて、NIPAゲルを疎水転移させてBPAを疎水性相互作用で吸着させる。その際に、外部磁場の周波数、出力および複合体濃度が、BPAの吸着特性に与える影響を調べ、最適な出力、周波数などの操作条件を明らかにする。外部溶液を直接加熱した場合とエネルギー消費量を比較、検討することで、複合体の吸着剤としての特性を検証する。 2.連続操作が吸着性能に及ぼす影響の検討:1と同様に溶液中にゲル・磁性粒子複合体を懸濁し、コイルを用いて外部磁場を印加、停止を繰り返すことによる複合体へのBPAの吸着・脱着特性を検討し、連続操作が複合体の吸着特性に与える影響、および安定操作条件を明らかにする。連続操作を繰り返すことにより複合体内部から磁性粒子が脱落あるいは複合体が崩壊する場合は、ゲルの耐久性を上げるためにゲルの架橋方法の改良や複合体のゲルによる二重被覆などの手法を用いて複合体の強度の向上を試みることを検討する。 3.ゲル中での磁性粒子以外の金属ナノ粒子の作製と応用:これまでに得られた知見に基づき、NIPAを含む種々の高分子ゲル中で磁性粒子やその他の金属ナノ粒子(酸化銅、酸化亜鉛、酸化マンガン)の合成を行う。さらにそれらの高分子ゲル/金属ナノ粒子複合体を用いて、それぞれの金属ナノ粒子と特異的に吸着する重金属、有機酸、ヒ素などを吸着させて、その吸着剤としての応用を検討する。吸着等温線を実験により作成し、それぞれの吸着モデルを検討する。
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Causes of Carryover |
磁性ナノ粒子複合ゲルを発熱させるために使用する、高周波磁場電源と整合機の価格が増税等により申請時よりも高額になった結果、当初予定していた科研費では全てを購入できなくなったため、整合機を科研費で購入し、電源の購入を使途に制限のない運営費交付金で支払ったため、当初電源購入に予定していた科研費の一部が来年度に繰り越された。また、成果発表を海外で行う予定であったが、より内容を充実させてから発表を行うために来年度に延期した結果、旅費の一部が使用されず来年度に繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越額、656,900円のうち消耗品費を\200,000、旅費を\400,000、その他56,900とする。消耗品の内訳は、試薬に\100,000、ガラス製器具、装置部品にそれぞれ\50,000とする。試薬を増額することで多様な種類の金属ナノ粒子の合成実験が可能となり、それらを用いた吸着実験を新たに研究計画に加えた。装置部品は金属製コイルの大きさを変えることで、試験管で行っている、加熱実験をサイズの大きなガラス器具でも行えるようになり、操作条件検討の幅を広げることが可能になり、より有益な試験結果を得ることができるようになる。旅費は、今年度使用しなかった海外旅費であり、来年度、ストックホルムで開催される、Polymer Networks Group meeting 2016に参加して成果発表を行う予定である。(発表承認済)。
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Research Products
(10 results)