2014 Fiscal Year Research-status Report
超臨界二酸化炭素を利用した新規ポリイミド微細加工技術の基盤構築
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26420765
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
春木 将司 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90432682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝嶌 繁樹 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10188120)
木原 伸一 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30284524)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ポリイミド / 蒸着重合 / 超臨界二酸化炭素 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度はフッ素系モノマーとカプトン系モノマーを組み合わせた場合の微細空間内への超臨界蒸着重合について検討した。まず、可視窓付き高圧重合装置で中間体であるポリアミド酸生成時の相挙動観察を行った。その結果、ジアミンならびにテトラカルボン酸二無水物ともフッ素系モノマー(ジアミン: TFDB、テトラカルボン酸二無水物: 6FDA)の場合は、カプトン系同士(ジアミン: ODA、テトラカルボン酸二無水物: PMDA)に比べ重合速度は小さく、重合開始からポリアミド酸の析出までの反応器内が均一相に保たれる時間はカプトン系同士に比べて長かった。また、TFDB-PMDAの組み合わせの場合もカプトン系同士に比べ均一相を長時間保持できたが、ODA-6FDAの場合にはカプトン系同士の場合と同様に重合開始直後にポリアミド酸が析出し相分離状態となった。さらに、フッ素系モノマーTFDB、6FDAを用いて微細なトレンチ(幅5マイクロメートル、深さ30マイクロメートル)を付したシリコンウエハへの蒸着重合を行った結果、微細孔深部までポリイミドを埋め込むことができた。 実験においては、さらに、反応速度ならびに蒸着速度の詳細な解析のためのマイクロチャネル型反応器の設計を行い、モノマーを溶解させたCO2の流速を限られたポンプ吐出量の中でも大きく変化させることが可能とするものとした。また、蒸着されたポリイミドの絶縁性を評価するため、誘電率を測定するシステムを現在構築中である。 シミュレーションにおいては、市販の流体・伝熱シミュレーションソフトウェアを用いて、まず現在蒸着に使用しているcold-wall型反応器内の温度分布ならびに速度分布の検討を試み、現在シミュレーション結果の妥当性について評価を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験においては、モノマー種による超臨界二酸化炭素中での反応性の違い、ならびに微細な空間への埋め込み性の違いを明らかにすることができた。この結果より、フッ素系モノマー(特にジアミンであるTFDB)の反応性がカプトン系モノマーの反応性に比べ超臨界二酸化炭素中においても小さいため、基板表面のみを高温で加熱するcold-wall型反応器で蒸着を行った場合、フッ素系モノマーの方が、よりモノマーの状態で基板表面に到達しやすいことが予想された。これに基づき、フッ素系モノマーによる超臨界蒸着重合を行った結果、微細な空間へのポリイミド充填量はカプトン系モノマーを使用した場合に比べ大きく増加し、また、モノマー種により蒸着挙動が大きく異なることが明らかとなり、当初の目標に比べ多くの知見を得ることができた。今後は蒸着挙動の操作条件ならびにモノマー種依存性について詳細に検討する予定である。 一方、シミュレーションによる蒸着挙動の解析や薄膜の誘電率測定法の開発については、高い精度を確保するため、手法の妥当性評価を次年度以降も継続して行う必要がある。したがって、課題全体として、おおむね順調に遂行できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
実験に関しては、これまでの高圧蒸着重合において使用してきた反応器、ならびに現在作製中であるマイクロチャネル型反応器を用い、蒸着条件ならびにモノマー種と微細空間への蒸着特性および得られるポリイミドの熱的、電気的特性の関係について詳しく検討する。特にマイクロチャネル型反応器では、CO2流速を大きく変化させることによって反応器内の対流の影響についても検討する。微細孔への埋め込み特性はモノマー種によって大きく変化することがこれまでに検討で明らかになったが、今後はこの違いがモノマーのどのような特性に依存するのかを明らかにすることを目指す。 さらに、シミュレーションによる反応器内の速度分布ならびに温度分布の解析では、これまでに進めている現反応器内でのシミュレーション結果の妥当性の評価を行った後、マイクロチャネル型反応器においても同様の解析を行う。モノマーから中間体のポリアミド酸への反応は比較的低温でも進行するが、ポリアミド酸からポリイミドへの反応は高温での脱水反応であるため、シミュレーションにより得られる蒸着中の反応器内の情報は、本技術を解析する上で必要不可欠となる。
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Causes of Carryover |
マイクロチャネル型反応器の設計を詳細に行ったため、26年度中に購入できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度初期にマイクロチャネル型反応器購入のため使用する。
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Research Products
(3 results)