2014 Fiscal Year Research-status Report
光エネルギー駆動型液相反応用カプセル型マイクロリアクターの開発
Project/Area Number |
26420777
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
古澤 毅 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50375523)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カプセル型マイクロリアクター / BDF合成反応 / 触媒 / 光熱変換物質 / 光触媒 / 液相反応 / 光エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
1. BDF合成反応 当研究グループは、CaO触媒/光熱変換物質内包型カプセルを用いた光エネルギー駆動型BDF合成反応の可能性を世界で初めて示したが、カプセル破損等の課題が残っている。本プロジェクトでは、様々なカプセル膜改質を施すことでカプセル強化を図ると共に、これによって生じる反応物・生成物の透過速度の低下やBDF合成反応速度の低下を解決し、十分な透過速度およびBDF合成速度を有し、カプセル破損を抑制した「光エネルギー駆動型BDF合成反応用カプセル型マイクロリアクター」の構築を目指した。今年度は、CaOと活性炭粉末を内包し、様々な膜改質を施したカプセルを調製し、カプセル内外での反応物(油)および生成物(BDF)の透過性を検討した。その結果、CaOあるいは活性炭粉末を内包することで透過量(粉末なしでの透過量を100%とした場合)が40~80%へと低下し、透過速度が減少することが分かった。また、膜改質の種類によって透過量および透過速度に変化が生じ、カプセル破損率を40%から10%へ低下させることが可能である一方で、透過量が70%まで低下することが分かった。これらの結果より、ある程度の透過量・透過速度を有するカプセルを選択して、光エネルギー駆動型BDF合成反応へ用いた結果、BDF収率の大幅な減少を観測した。この点に関して、BDF合成反応中のカプセル内外の液相分析および固相分析を行い、原因を究明すると共に対策を講じる必要があると考えた。 2. 光触媒内包型カプセルを用いた分解反応 平成27年度の計画ではあるが、市販TiO2触媒を内包したカプセルを試作し、メチルオレンジ水溶液の分解反応へ適用した結果、カプセル化することで大幅に活性が低下することが分かった。現在、反応物・生成物の透過阻害や触媒構造の変化などを原因として考え、改善方法を模索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2つの理由によって達成状況にやや遅れが生じている。1つは「カプセル膜改質の再現性」についてである。既に当研究グループでは数種類の膜改質を施した結果、カプセル破損率が大幅に低下する知見を得ていたが、別の研究者による再現性を確認していなかった。そこで、本件について平成26年度着手した結果、予想以上に時間を取られることとなった。もう1つは、適切な光照射量(光量)の設定に時間を要したことである。本プロジェクトで用いているカプセルは反応中に大きく分けて2つの理由で破損する。1つめは撹拌等の機械的・物理的応力による破損であり、カプセル膜を改質して強化を図ることで破損を低減することが可能である。もう1つはカプセル内へ透過した低沸点化合物が光照射下でカプセル内部で揮発し、内部から破損する。従って、照射する光量を制御することでカプセル内部温度を沸点よりも低い温度に制御する必要があり、適切な光量の設定が重要となる。本年度は膜改質による機械的・物理的応力に対する耐久性の向上を目的としていたため、揮発によるカプセル破損の影響を出来る限り抑制する必要があり、光量の設定に時間を要してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
BDF合成反応に関しては、カプセル内外の液相分析および固相分析を行ってBDF合成反応速度を算出し、透過速度・BDF合成速度・カプセル破損率の観点で有望なカプセル型マイクロリアクターを開発する。つまり、遅れているが計画書通りに遂行する予定である。 一方、光触媒内包型マイクロカプセルを用いた液相反応については、市販品をカプセル化することで、粉末のまま利用するのに比べて大幅に活性が低下している点について改善を講じる必要がある。既に様々な方法でカプセルの作成を試みたが、いずれの場合も十分な光触媒活性を得ていない状況である。この理由として、(1) 反応物・生成物の透過阻害が、膜内あるいはカプセル内で生じている可能性、(2) カプセル内部の光触媒へ光が到達していない可能性、が考えられる。(1)に関しては従前の方法ではカプセル膜改質=膜中の孔径の縮小・膜厚の縮小であったが、今までの検討結果から膜厚の縮小と膜中の孔径の維持が可能な膜改質方法を新たに開発する必要があると考えられる。また、反応物(特に、溶存酸素)のカプセル内部への透過が困難であると判断され、予め酸素を溶解しやすく、反応に全く寄与しない物質をカプセル内部に内包しておくことが望ましいと考えられる。一方、(2)に関しては、メチルオレンジ・メチレンブルー等の染料溶液は着色があり、可視光を吸収するので、カプセル内部の光触媒まで光が到達していない可能性が示唆される。そこで、反応基質として溶液が透明な酢酸水溶液等を用いて光触媒特性を検討すべきと考える。以上のような対策(一部、研究計画の変更)を講じて、2つ目のカプセル型マイクロリアクターの成功例を成し遂げたいと考える。
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Causes of Carryover |
研究概要、および達成状況において記載したように、研究計画はやや遅れており、次年度以降に計画の一部を繰り越しているため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
BDF合成反応におけるカプセル内外の液相分析および固相分析に必要な物品費、および選択したカプセルを調製するための試薬費として利用する予定
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