2015 Fiscal Year Research-status Report
正常時運転履歴データを活用した化学プラントの状態監視およびソフトセンサーへの応用
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26420781
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柘植 義文 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00179988)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 化学プラント / 運転監視 / 正常状態予測 / ソフトセンサー / データベースモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 酢酸ビニル製造プラントのダイナミックシミュレータを利用して,季節変動や原料の変動によって状態が揺らぐ程度の正常運転データを作成し,データベースモデルを利用してそのような揺らぎの状態を適格に認識できるかを検討した.その結果,想定した季節変動や原料の変動範囲内では,正常状態揺らぎをほぼ適格に認識することはできた.ただし,現実には不確定な要因での状態の揺らぎがあることをシミュレータで考慮することは困難であったため,当初の予定を変更して,某石油精製会社から頂いた4年間の運転実績データに基づく検討を前倒しして実施することにした. (2) 某石油精製会社から頂いた4年間の運転実績データには,最初のスタートアップと最後のシャットダウンの他に,トラブルでの部分停止なども含まれている.また,測定器の不調などによる外れ値の存在も予想された.そのため,データベースに格納する履歴データを選定するための前処理(正常状態として採用すべきデータであるかの判定,測定器の不調などによる外れ値の処置など)についての事前検討を行った.その結果,4年間の運転実績データから,正常運転期間と思われる3期間(正常運転期間1,正常運転期間2,正常運転期間3)を抽出した.なお,それぞれの期間内で外れ値も存在したが,外れ値前後の正常値の線形補間による推定値に置換した. (3) ソフトセンサーとしての有用性を検証するために,最も良く用いられているソフトセンサーであるPLSモデルやLassoモデルとの比較検討を行った.比較検討項目としては,推定性能への外れ値処理結果の影響および学習データ選定結果の影響に着目した.その結果,データベースモデルの有用性を示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,データベースモデル(DBモデル)を利用した正常状態予測システムをソフトセンサー用に改良し,某石油精製会社から頂いた4年間の運転実績データに適用した結果,以下に示すような有用な知見が得られた. (1) 7つの目的変数(y1,..,y7)に対して,107個の説明変数が存在した.正常運転期間(Normal1,Normal2,Normal3)をそれぞれ学習データと検証データに分けて次の3通りの推定を行った.<case1>Normal1の前半3ヶ月を学習データ,残り2ヶ月を検証データ,<case2>Normal2の前半3ヶ月を学習データ,残り5ヶ月を検証データ,<case3>Normal3の前半11ヶ月を学習データ、後半11ヶ月を検証データ.DBモデルは比較手法(PLS-VIP,PLS-BetaおよびLasso)と同程度の推定精度を示した. (2) DBモデルではDB内に蓄積されていない値が検証データにあった場合,DBモデルの推定精度が悪くなる.逆に,比較手法で推定精度が悪くなる原因としては,外れ値や学習データ選定の影響であった.例えば,case1の場合で,y2の学習期間の実測値を確認すると,約10時間かけて実測値の値がパルス状に小さくなっている部分があった.この期間を外れ値とみなして削除し,比較手法のモデルを再構築すると推定精度が向上した.一方,DBモデルはパルス状の時刻を類似レコードとして選んでいなかったため,推定精度がパルスの削除前後で変化しなかった. (3) case2の場合でDBモデルの類似レコードを確認すると,学習データ中に約1ヶ月推定に用いられていない期間があった.比較手法はこの期間を考慮してモデルを構築したため精度が悪くなったと考え,DBモデルの類似レコードを参考に比較手法の学習データを選定し直してモデルを再構築すると推定精度は向上した.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 前年度は連続した運転実績データを学習データと検証データに分けて検討を行ったが,運転停止期間を挟んでも推定が可能かどうかを検証する必要がある.例えば,Normal1を学習データ,Normal2を検証データとした場合,あるいは,Normal1~2を学習データ,Normal3を検証データとした場合の推定を行い,H27年度の結果と比較検討する.
(2) H27年度に検討したDBモデルでは全ての説明変数を利用して,7つの目的変数の値を個別に推定した.しかし,時間が一緒であれば同時に推定することが可能のはずである.そこで,7つの目的変数の値を個別に推定する場合と同時に推定する場合の比較検討を行う.
(3) 比較手法であるPLS-VIP,PLS-BetaおよびLassoでは,推定精度の良いモデルを作成するために,モデルに導入する説明変数を選択する機能を有している.今回もその機能を利用して説明変数を選択している.DBモデルでも説明変数を選択することによって精度向上が期待できる.そこで,DBモデルのための変数選択法について検討する.例えば,重回帰モデルでよく用いられているstepwise法や遺伝的アルゴリズム(GA)を利用した組合せ最適化法の応用が考えられる.
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