2014 Fiscal Year Research-status Report
錯体反応場の精密分子設計による均一系および不均一系選択酸化触媒の創製
Project/Area Number |
26420788
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
引地 史郎 神奈川大学, 工学部, 教授 (10282857)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 選択酸化触媒 / 錯体触媒 / 固定化錯体触媒 / 過酸化物 / 酸素分子活性化 / ニッケル / 鉄 / コバルト |
Outline of Annual Research Achievements |
炭化水素類への位置および立体選択的な酸素添加反応に活性な人工酸化酵素の創出を最終到達目標として、均一系及び不均一系錯体反応場の開発を行っている。2014年度は、均一系錯体反応場の構築を中心に研究を推進した。 不均一系錯体反応場への展開を視野に入れて、オキサゾリニル基を基軸とするキレート配位子の設計・開発およびその錯体触媒における金属支持配位子としての適用性を検討した。市販のキラルオキサゾリン配位子を用いたニッケル錯体が、有機過酸化物を酸化剤とするアルカン水酸化活性に活性を示すことを確認した。そして活性を示した金属支持配位子に対して、固体担体上に固定するための連結基となるトリアゾリル基を組み込んだ新規配位子を設計・開発し、これをニッケル錯体に誘導したところ、液相均一系において酸化触媒として機能することを明らかにした。 また2種類のキレート配位子を組み合わせることで、酸素分子を結合・活性化するサイトを持つ単核鉄およびコバルト錯体を合成し、これらが酸素分子を可逆的に結合・解離することを明らかにした。そして各種分光法により、鉄およびコバルトに付加した活性酸素種は酸素分子の1電子還元種であるスーペルオキシドであることを各種分光法により明らかにした。また鉄スーペルオキソ錯体は、水素原子供与体と反応してヒドロペルオキソ錯体に変換されることを明らかにした。ポルフィリンを支持配位子とはしない非ヘム鉄錯体において、配位不飽和な低原子価鉄中心に酸素分子が酸化的に付加して生じたスーペルオキソ錯体種と、これが水素原子供与体と反応して生じたヒドロペルオキソ錯体種の双方を同定できた例はこれまでになく、本研究が初めての達成例である。またこれら活性酸素錯体の同定は、鉄中心の電子状態と反応特性の相関を解明する上で重要な知見であり、今後酵素反応の機構解明や触媒設計にも活用されることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に沿って、均一系錯体触媒と不均一系固定化錯体触媒の開発が同時に進行している。 過酸化物を酸化剤とする炭化水素酸化に活性な錯体触媒については、立体選択的な反応への展開を視野に入れ、数種類のキラル配位子について、ニッケル錯体触媒としての適用性について予備検討を実施し、モデル基質として用いたシクロヘキサンに対する酸素添加触媒活性の発現を確認している。そして固体担体との連結基を組み込んだ配位子の開発にも成功し、この配位子によるニッケル錯体がアルカン酸化触媒として機能することも明らかにしている。さらにこの配位子が期待通りメソ多孔性担体上に固定できることも予備的検討により明らかにしており、精密な分子設計が施された錯体反応場が固体担体上に構築できる可能性が極めて高い。 酸素分子活性化能を有する単核金属錯体のうち、鉄およびコバルト錯体については、酸素親和性の支配因子や活性化された酸素種の電子状態と金属支持配位子の構造及び電子的特性の相関を明らかにしてきた。さらにこれらの単核錯体が酸素分子を酸化剤とするアルカン酸化触媒の前駆体となることを見い出しており、錯体化学的なアプローチに加えて化学反応論的な観点からの検討も開始している。 また固定化錯体触媒に適用することを目的として新たに設計した多官能基化金属支持配位子の合成経路も確立できつつあり、さらに単一担体表面を2種類の異なる官能基で化学修飾する手法も確立した。したがってこれらの成果を活用していくことで、固定化錯体触媒についても多様な活性点構造の構築可能であると見込まれる。
|
Strategy for Future Research Activity |
過酸化物を酸化剤とする炭化水素酸化に活性な錯体触媒については、立体選択的な反応への展開を視野に入れ、数種類のキラル配位子について、ニッケル錯体触媒としての適用性について予備検討を実施し、モデル基質としてシクロヘキサンを用いた場合に触媒活性の発現を確認している。今後は不斉酸化触媒活性を検証していく計画である。 酸素分子活性化能を有する単核金属錯体については、鉄およびコバルト錯体に関する研究成果を配位子の分子設計にフィードバックし、さらに中心金属種をマンガンに拡張していくことで、中心金属の特性に応じた触媒開発を推進していく。 固定化錯体触媒については、引き続き多官能基化配位子の合成経路の確立とそれを用いた固定化錯体触媒の開発を進める。さらにすでに開発に成功している2種類の有機官能基で修飾したメソ多孔性シリカ担体に対し、代表者らが以前に開発した配位子を適用することで、異なる触媒活性点が共存した固定化錯体触媒を開発していく。
|
Causes of Carryover |
当初計画通りに実験が進行しているものの、当初見積もっていた修理費や論文校閲等の費用の支出が少なかったため、次年度使用額が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は不斉酸化反応に着手することから、実験用試薬類に加えて分析用カラムなど、これまで以上の物品費の支出が見込まれる。したがって翌年度分助成金に次年度使用額を加算して、物品費に加えて成果発表のための旅費および論文校閲費や修理費として使用する計画である。
|
Research Products
(10 results)