2014 Fiscal Year Research-status Report
貴金属と低次元酸化物のナノ界面制御による低温酸化触媒の構築
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26420790
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
冨田 衷子 独立行政法人産業技術総合研究所, 無機機能材料研究部門, 主任研究員 (70392636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多井 豊 独立行政法人産業技術総合研究所, 無機機能材料研究部門, 研究グループ長 (20357338)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 貴金属 / ナノ界面制御 / 低温酸化触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、水賦活処理を利用した界面制御方法を発展させて、低温酸化活性の高い貴金属触媒を構築することを目的とする。そのために、H26年度には、これまでの研究において低温酸化活性を発現した、白金-酸化鉄-アルミナ系における界面構造解析を行うとともに、触媒処理方法が構造や触媒活性に与える影響を調査した。これらはH27年度以降の材料設計の指針となる。 1.白金-酸化鉄-アルミナ系触媒の界面構造解析 研究を発展させるためには界面構造解明が必要不可欠である。これまで、酸化鉄成分の構造が不明確であったので、γ-アルミナ上に担持した酸化鉄の構造をX線吸収分光法(XAS)、X線回折(XRD)等を用いて解析した。Fe K吸収端のEXAFS解析には、単散乱パスによるフィッティングの他に、構造モデルを仮定したEXAFS振動のシミュレーションを導入し、アルミナ担体の影響を詳しく検討した。その結果、低担持量(鉄量9wt%まで)の酸化鉄は、モノマー状でγ-アルミナ表面に存在していると考えられた。これ以上の鉄量の場合にはα-酸化鉄が三次元に形成していた。以上の結果より、低温酸化活性の発現には、白金粒子とモノマー状に分散した酸化鉄種の相互作用が重要であることが分かった。 2.酸化反応活性試験 白金-酸化鉄-アルミナ系触媒を用いて、白金と酸化鉄の比率や調製条件を変え、触媒構造やCO酸化活性への影響を調べた。その結果、120℃以上の高温域でのCO酸化活性には、白金と鉄との合金形成が、また、室温域でのCO酸化活性には、白金ナノ粒子と酸化鉄種の界面形成が重要であることが分かった。助触媒成分の種類を検討したところ、遷移金属の中では鉄、コバルト、ニッケルが低温酸化活性向上に効果があった。また、得られた触媒を用いてVOC酸化活性試験を行ったところ、ホルムアルデヒドおよびギ酸の酸化に活性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、水賦活処理を利用した界面制御方法を発展させて、低温酸化活性の高い貴金属触媒を構築し、最終的には大気中のVOC浄化を常温で達成することを目的とする。そのために、H26年度には、開発に必要な材料設計の指針を得るための研究を計画していた。具体的には、これまでの研究において低温酸化活性を発現した、白金-酸化鉄-アルミナ系における界面構造の詳細を明らかにすることと、これを用いた触媒活性試験を行うことである。この2テーマについて、おおむね目標を達成できた。 触媒活性試験では、調製条件の影響をCO酸化反応で検討するとともに、基準となる触媒を用いてVOC分解試験評価方法を確立した。開発触媒はホルムアルデヒドやギ酸に対して活性があることがわかった。これらはH27年度の触媒活性の向上に向けた研究につなげることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
H26に得られた知見および確立した評価法をもとにして、VOC低温酸化活性向上のための触媒構造最適化を推進する。VOC低温酸化活性を向上させるために、それぞれのVOC種に適した触媒構造(貴金属-助触媒-担体)を探索する。具体的には、水賦活処理によって界面制御可能な貴金属-助触媒-担体系を広く探索し、そのVOC酸化性能を評価するとともに、触媒の微細構造や反応分子の吸着状態、反応メカニズム等を解析する。研究要素は(1)担体の最適化、(2)貴金属の最適化、(3)助触媒の最適化、の3点である。H27年度は(1)の研究を進める。 (1)担体の最適化 水賦活処理により界面形成する担体は、貴金属および助触媒との結合力のバランスが重要と考えられ、CO酸化を用いた予備実験ではアルミナ以外の複数の担体で活性が向上することを確認している。これらの材料を中心に、H26年度に確立した方法を用いてVOC酸化性能評価を行い、最適な担体を選定する。VOC酸化触媒反応では、反応分子はまず担体に吸着し、また、分解生成物であるCO2や部分酸化副生成物も担体と相互作用するので、それぞれのVOC分解に適した酸・塩基度を有する担体が存在するはずである。触媒構造解析には走査透過型顕微鏡観察(STEM)およびエネルギー分散型X線分析(EDX)、分子の吸着状態観察には赤外吸収分光(IR)および昇温脱離、貴金属および助触媒の酸化還元特性にはXAFS測定等を用い、反応機構解析を行う。これらの研究は当初は白金-酸化鉄系で行うが、担体最適化の後には酸化鉄以外の助触媒を使用した検討へと進める。
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Causes of Carryover |
H26年度は、構造解析及び反応性解析のために、依頼分析および外部装置の利用、及びそれに伴う装置利用料と旅費の使用を予定していた。しかしながら、研究を進めていく過程で、まず初めに所属研究機関所有の装置を使用したスクリーニングを行った後に、より高分解能な分析が可能な外部への依頼等を行うことが妥当であると判断した。そこで、所属研究機関所有の装置を使用した測定の比率が当初予定より増加した。次年度以降には順次外部での測定を行う予定であり、これらは当初予定より増加するため、H26年度残額を次年度使用額とする。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由で、H26には所属研究機関所有の装置を使用した測定を中心に行ってきたが、次年度以降には順次外部での測定を行う予定である。このため、依頼分析、外部装置利用に係る利用料、及び旅費として、繰り越し分を使用する。その他のH27年度の使用計画は提出済みの交付申請書の通りである。
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Research Products
(6 results)