2015 Fiscal Year Research-status Report
「補酵素A再生系」に基づく高光学純度ヒドロキシ酸の高効率生産
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26420791
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大井 俊彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40223713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 謙一郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80360642)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒドロキシ酸 / 3-ヒドロキシ酸 / 高光学純度 / キラル / 微生物生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
キラル化合物の化学合成をおこなうためには、高光学純度の出発物質を使用することが必須となる。そのために我々が新規に開発したCoA転移酵素の特性を利用した高光学純度の(R)-ヒドロキシブタン酸(3HB)生合成システムを基盤に、代謝工学と酵素進化工学の両面から生合成経路を強化することで、バイオマス由来の主要糖質であるグルコースから、高効率に(R)-3HBの生産を可能とする微生物工場の創生を目指した。本年度は代謝工学的観点から、3HB合成経路にある生合成中間体の各CoA体(アセチル-CoA、アセトアセチル-CoA, 3HB-CoA)の細胞内蓄積量を定量比較し、細胞内蓄積量からどの酵素反応が律速となるのかを代謝フラックス解析を中心に検討した。昨年度グルコースの消費速度と(R)-3HB生産性の両面から選抜された大腸菌JM109株を生産宿主として、生合成中間体の3種のCoA体の細胞内からの定量的な抽出方法について検討した。不安定なCoA体は、集菌後素早く冷アセトニトリルを加える抽出法を開発することで、LC-MSによる分析が可能なレベルになった。その結果、細胞内にはアセチルCoAのプール量が最も多く、それ以外のCoAの蓄積量は非常に少ない結果となった。そのためアセチルCoAをアセトアセチルCoAへの変換を触媒するPhaA(β-ケトチオラーゼ)および次の反応を触媒するPhaB(アセトアセチルCoAリダクターゼ)が可逆的にも酵素反応が進行するため、生産量を向上させるためには、グルコースの効率的な消費によってアセチルCoAへのフラックスを上昇させることで、結果的に(R)-3HBの生産量が向上すると考えられた。一方、本生合成系で利用しているCoA転移酵素であるPCTも同様に可逆反応であるため、生合成最終中間体の3HB-CoAのCoAをエネルギーロスなく受容しアセチルCoAを再生産するための酢酸濃度のバランスによって3HB生合成量が大きく増減することが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画であった(R)-3-ヒドロキシブタン酸(3HB)の生合成経路にあるアセチル-CoAからの3つの酵素反応について、どこの反応が律速になっているかを検討するために、アセチル-CoA, アセトアセチル-CoA, 3-HB-CoAの細胞内の蓄積量を定量を行うことで代謝フラックス解析をLC-MSで解析し細胞内蓄積量から推定した。細胞からのCoA対抽出に関しては冷アセトニトリルを利用することでCoA体の再現性よく回収可能となり定量分析が可能となった。次年度に向けて、最終的に高光学純度の(R)-3HBの効率的な生産のための培養条件の検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、効率的な高工学純度(R)-3HBの効率生産を目指し、培養条件の検討を中心に行う。特に炭素源とするバイオマス由来グルコースの培地への添加量を高めるとグルコースの浸透圧のためだ宿主大腸菌の生育が大きく阻害されることから、培養初期には添加量を抑える逐次添加培養を検討し、グルコースの消費量の最適化を検討する。加えて、CoAを受容する酢酸も同様に高濃度となると宿主大腸菌の生育を阻害することが分かっているので、添加時期と添加量を最適化する培養方法を3HBの生産速度と生産量を指標に確立する。 加えて培養液中に生成した(R)-3HBの濃度が上昇すると、アセチルCoA以降の生合成に関わるすべての酵素反応が可逆反応と考えられるので、培養中に生成された3HBを系外に除去するための方法を検討する。一方、P(3HB)を高蓄積可能な生産系をすでに確立しているので、細胞内蓄積にされたP(3HB)を新規に分離した酵素により分解し、高光学純度の3(HB)の生産方法も並行して進める。
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Causes of Carryover |
H27年度はCoA体の抽出方法の検討が中心となったため、計画当初想定されるほどの支出が少なくなったほか、予定していた国際会議の参加を取りやめたことから支出が大幅に減った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度には昨年度に参加しなかった国際会議に参加するとともに、新しく追加する実験のための支出が必要となるので、遺伝子操作実験や培養実験を中心に必要な機材や消耗品の購入に支出する計画としている。
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Research Products
(3 results)