2015 Fiscal Year Research-status Report
大腸菌への機能集約によるバイオ燃料電池に最適な微生物触媒の開発
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26420797
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
東 雅之 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (20285282)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微生物燃料電池 / バイオ燃料電池 / MFC |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度より、バイオ燃料電池の性能向上に向け微生物触媒の開発を進めている。大腸菌を用い電池に適した機能を一つの細胞に集約し、電池用のスーパー微生物触媒の開発を目指している。平成26年度には、「大腸菌に適した電池構成成分」「代謝阻害剤や窒素源の添加が出力に与える影響」「大腸菌の電極上でのバイオフィルム形成」について検討した。大腸菌用の電池負極溶液の組成は大旨決定された。さらに、電極となる炭素材料上でのバイオフィルム形成条件を検討したが、電極上に付着したバイオフィルムだけでは顕著な出力は得られず、さらなる改善が必要であった。平成27年度は、このような結果を踏まえて計画通り各種遺伝子の破壊と過剰発現から、出力向上につながる遺伝子改変情報を収集した。遺伝子改変株を用いてグルコースからの発電を行った結果、その多くは野生株の出力やクーロン効率とほぼ同等であった。それらの改変の中には、1遺伝子の改変では出力やクーロン効率に変化はないが、代謝の流れを考慮すると遺伝子改変によりそれらの向上につながると考えられる場合もあった。それらについては、今後遺伝子導入箇所として利用する。また、いくつかは出力やクーロン効率の向上が見られた遺伝子改変もあった。それらの機能からTCAサイクルの活性化が出力向上に繋がることが分かった。計画にはなかったが、木質系のバイオマスから得られるキシロースを燃料にした発電評価についても進めた。今後は、継続して出力向上につながる情報を収集するとともに、有用情報を組み合わせた株の構築について検討を進める。細胞から電極への電子の流れについては、導電性と磁性を有する酸化鉄の利用を検討する。負電極の炭素繊維を微生物と結合させた酸化鉄に埋め込み、細胞から電極への電子の流れを構築する系を考えその予備検討を進めており、平成28年度も継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、次の①から③を今後の推進策として設定し研究を進めた。①解糖系やTCAサイクル(中央代謝)に関わる遺伝子の改変によるグルコース代謝速度の向上、②中央代謝から分岐する経路の抑制、③細胞膜上の電子伝達系から電極への電子伝達能力の向上からの大腸菌の育種。①に関連する遺伝子については、種々の検討からTCAサイクルの活性化に関わる遺伝子が出力向上に重要であることがわかった。②に関わる遺伝子については、多くの場合、出力やクーロン効率に変化が見られず、1遺伝子の改変だけでは影響がなかった。今後、それら遺伝子は染色体への過剰発現遺伝子の導入箇所として利用する。③に関しては、Shewanella属で報告されている細胞表層電子伝達体遺伝子の導入について準備を進めており、今年度も継続課題となる。出力やクーロン効率の向上に繋がる遺伝子改変については、染色体上での改変の重ね合わせまでは進めていないが、①から③については概ね計画通りに進んでいる。前年度からの課題である電極上のバイオフィルムを利用した発電に関しては、大幅な出力改善が難しいことから、新たな検討を始めた。導電性で磁性のある酸化鉄を利用し、酸化鉄に大腸菌を結合させ、電極の炭素繊維を酸化鉄中に埋め込みことで、細胞から電極への電子の流れを考えた。本年度は、その準備として大腸菌と酸化鉄の結合条件について検討した。今年度は出力評価まで行う。また、予定にはなかったが、燃料にグルコースではなく木質系バイオマスから得られるキシロースを用い、その出力評価も進めた。キシロースの積極的な利用にはXylAとXylBの高発現が重要であることがわかった。以上、これらを総合して、計画はほぼ順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、継続して各種遺伝子の破壊と過剰発現から、出力やクーロン効率の向上につながる遺伝子改変の情報収集に努める。それと同時に、TCAサイクルの活性化に関わる遺伝子改変など、出力やクーロン効率がわずかでも改善された遺伝子改変についてその改変を重ね合わせる。1つの株の染色体上にそれら改変を順次導入し、この操作を繰り返すことにより、高出力で高効率に発電できるスーパー触媒微生物を構築する。遺伝子改変の重ね合わせは、これまでまだ取り組んでいないが、計画通りP1ファージを用いた系で進める。また、Shewanella属で報告されている細胞表層の電子伝達体の遺伝子導入を進める。この導入と導電性で磁性のある酸化鉄と大腸菌の結合を組み合わせることにより、大腸菌での細胞表面→酸化鉄→電極への電子の流れを構築する。それにより、メディエーターレスタイプもしくはメディエーター使用量の少ない微生物燃料電池の開発に繋げたい。上記の研究は、グルコース代謝を中心に検討を進めるが、最終的にはグルコースとキシロースの混合燃料からの発電を目指しており、平成27年度から始めたキシロース代謝の効率化に関する研究についても継続する。
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