2014 Fiscal Year Research-status Report
燃料作物ジャトロファの安全性評価に基づく抗発がんプロモーション活性物質の取得
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26420801
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
梶山 慎一郎 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (20243496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳原 格 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, その他 (60314415)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Jatropha curcas / phorbol ester / tumor promotion / anti tumor promoter / molecular probe |
Outline of Annual Research Achievements |
中南米原産の落葉低木であるジャトロファ(Jatropha curcas)は,その種子中にバイオディーゼルの生産に適した流動性の高い中性脂質を50%以上含み,病害虫に強く,半乾燥地や貧栄養土壌でも栽培可能であることから,次世代のバイオ燃料としてすでにEU や東南アジア・アフリカなどで,その試験栽培と生産性や経済性の実証研究が開始されている。しかし、本植物は,次世代バイオ燃料植物として多くの利点を有する一方,実用化するにあたっては留意すべき問題点も併せ持っている。すなわち,本植物の種子には油脂以外に,発がんプロモーション活性を有するホルボールエステル類(PEs)を含み、生産者や消費者の健康に与える影響が懸念される点である。申請者はジャトロファの安全な普及に資するため,ホルボールエステル類の毒性の詳細な検討や安全性の評価を行ってきた。この過程でジャトロファの代謝産物中には,強力な発癌プロモーション活性を持つことが知られるPMA(phorbol-12-myristate-13acetate)の作用を逆に抑制する作用を持つ代謝産物が存在することを示唆する結果を得た。本年度はこの作用がジャトロファの産生するどのような代謝産物に起因するのかを調べる目的で,PE類を生産しないジャトロファ無毒株の抽出物を用いたアッセイを行うと共に,活性の標的を探るためのin vitroアッセイ系の構築を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度は,PMAの発癌プロモーション作用を抑制する活性が,ジャトロファのどのような代謝産物に由来するのかについて知見を得る目的で,PE類を生産しないジャトロファ無毒株の抽出物とPMAの混合物のマウス発がん2段階試験評価を行った。 その結果,PMA と ジャトロファ無毒系統抽出物の混合物において初めて腫瘍形成が確認された時期は 5 週目あり,これは、PMAのみ供与した場合とほぼ同時期であった。また,最終腫瘍形成率もPMA塗布群に近い結果であった。これはジャトロファ無毒系統抽出物がPMAの作用を抑制していないことを示すものであり,有毒株抽出物がPMAの作用を有意に抑制することを合わせて考えると,抑制効果がジャトロファのPE類に起因していることを示唆するものである。すなわちジャトロファのPE類はPMAの作用に対して拮抗的に働くことが示唆された。一方,マウス二段階試験を相補するin vitroアッセイ系の構築については,これまでの研究からマウス二段階発がん試験と高い相関を示すことが判っているRaji細胞のEBV-EA(Epstein-Barr virus早期抗原)誘導試験をより鋭敏に観測するとともに,PE類がどのようにEAを誘導するか探るため,EA関連遺伝子(BZLF1,BRLF1)のRT-PCRによる検出を試みている。このように研究はおおむね予定通りに進行しているが,in vitroアッセイ系の構築については未だ結果の再現性に問題があるため,来年度も引き続き検討することにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
化学発がんにおけるプロモーション過程は,数多くの研究から発がんプロモーターが,細胞内シグナル伝達に大きな役割を果たすPKC(Protein kinase C)の活性調節部位(Clドメイン)に強く結合し, PKCを無秩序に活性化させることにより進行することが示されている。一方,細胞内でのPKCの働きは多岐にわたっており, PKCの無秩序な活性化がどのように最終的に発がんに結びついているかについては未だ不明な点が多い。H26年度の研究結果よりPMAによるPKCの活性化をジャトロファのPE類が拮抗的に阻害することが示唆されたため,今後は,ジャトロファのPE類の単離を行い,この拮抗作用について詳細に検討してゆく。また,PKCの無秩序な活性化がどのように最終的に発がんに結びついているかについて知見を得るため,引き続きin vitroアッセイ系の構築とそれを用いた評価を行っていく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた旅費(学会発表)および謝金(実験補助)に関して,実験の進行状況から,来年度実施したほうが妥当と判断したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費に関しては当初計画通り執行する。旅費(学会発表)および謝金(実験補助)に関しては,昨年度分と合わせ執行する。
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Research Products
(1 results)