2014 Fiscal Year Research-status Report
三次元培養モジュールを用いたヒト肝細胞への化学物質の毒性評価法に関する研究
Project/Area Number |
26420804
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
松下 琢 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (10209538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 誠一 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 室長 (10270505)
古水 雄志 崇城大学, 生物生命学部, 助教 (80735829)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 胎児肝細胞 / 成人肝細胞 / 化学物質 / 毒性評価 / 三次元培養 / 動物実験代替法 / 安全性試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国では、国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿って、2020年までに、約3万種類ある既存化学物質の安全性評価を行うことが閣議決定されている。しかし、この安全性試験を動物実験で行うには膨大なコストと時間を必要としてしまい、2020年までの評価には困難を伴う。そこで、本研究では、化学物質の中心的代謝臓器である肝臓について、研究代表者が開発してきた三次元培養モジュールと、研究分担者の石田博士と行ってきたヒト胎児および成人肝細胞の三次元培養に関する知見を組み合わせて、種々の化学物質のヒト胎児及び成人肝細胞への低濃度長期暴露による毒性評価(亜急性毒性)に関する知見を得ようとするものである。26年度は、以下の3点の知見を得た。 1)胎児の成長上影響の大きい神経系への毒性が考えられる化学物質リストから4種類の化合物を選定し、各細胞へのIC50値を測定した。その結果、アセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)・トリブチルスズ(殺菌剤・塗料)・バルプロ酸ナトリウム(抗てんかん剤)では胎児肝細胞が成人肝細胞に比べ感受性が高く、逆にパーフルオロオクタンスルホン酸カリウム(殺虫剤)は成人肝細胞の方が感受性が高い結果が得られた。これらの結果から、ミトコンドリアの活性への影響を介して、胎児肝細胞への毒性が発現される可能性が示唆された。2)化学物質を暴露する前段階の対象実験として、胎児肝細胞と成人肝細胞の遺伝子の網羅的解析を行い、胎児肝細胞ではミトコンドリア機能の一つである尿素回路酵素の遺伝子発現量が相対的に低いことが明らかとなった。3)三次元培養モジュールを用いた上記化学物質の長期暴露実験に備えて、モジュール内の生細胞数の評価方法の構築を試み、いくつかの知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の研究計画は、次の3点であった。1)尿素回路・グルクロン酸抱合で代謝される化学物質に対するIC50値の測定。2)化学物質暴露細胞のトランスクリプトミクス解析。3)三次元培養モジュールを用いた化学物質のIC50値以下の低濃度での長期暴露実験。 これに対し、1)では、計画通り尿素回路・グルクロン酸抱合で代謝されるアセトアミノフェンやバルプロ酸での静置培養での暴露実験を行い、さらに他の化学物質の暴露実験の知見からも、胎児肝細胞と成人肝細胞の毒性の感受性の違いが、ミトコンドリアの活性の違いとその影響にある可能性が示唆されたため、おおむね順調に研究は進展しているものと思われる。また2)については、トランスクリプトミクス解析の基礎となる暴露前の細胞からDNAとRNAを抽出し、遺伝子発現の網羅的解析が行えデータが得られた。またその解析結果から、上記の1)の可能性を支持する知見が得られたため、おおむね研究は進展しているものと思われる。3)についても、三次元培養モジュールを用いた化学物質の低濃度暴露実験(亜急性毒性試験の動物実験代替法)が最終的目標であったが、その前段階として、モジュール内の細胞の生細胞数の評価が重要となるため、その分析方法の確立に関する知見が得られたので、若干の進展の遅れはあるものの、おおむね順調に研究は進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、26年度の結果を踏まえて、1)暴露する化学物質を増やすことで、胎児肝細胞と成人肝細胞に対する化学物質毒性の感受性の違いのメカニズムの解明を目指す。2)化学物質暴露後のトランスクリプトミクス解析を行い、化学物質の暴露によって変化するマーカー遺伝子の探索を行う。3)三次元培養モジュールを用いた化学物質の低濃度長期暴露実験(1か月程度)を実施するとともに、モジュール内の肝細胞の量と灌流速度の比を、生体内の肝臓の細胞量と血流速度の比に合わせることで、肝クリアランスのin vitroでの測定を試みる。これらを国立医薬品食品衛生研究所の石田博士(研究分担者)との連絡を密にしながら実行する。
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Causes of Carryover |
この金額では、実験に必要な物品の購入ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H26年度未使用額は、H27年度実験計画の中で、物品の購入、旅費として使用する。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Inflammatory cytokines promote the retrodifferentiation of tumor-derived hepatocyte-like cells to progenitor cells2014
Author(s)
H. Dubois-Pot-Schneider, K. Fekir, C. Coulouarn,D. Glaise, C. Aninat, K. Jarnouen, R. Le Guevel, T. Kubo, S. Ishida, F. Morel, A. Corlu
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Journal Title
Hepatology
Volume: 60
Pages: 2077-2090
DOI
Peer Reviewed
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