2014 Fiscal Year Research-status Report
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26420820
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
橋本 樹明 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (70228419)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 着陸脚 / Landing leg / 探査機 / Spacecraft / アクティブ制御 / Active Control / 月探査 / Moon Exploration |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、磁性流体ダンパを用いて印加電圧により減衰係数を可変にできるセミアクティブ制御方式の着陸脚を試作した。着陸脚の特性をモデル化し、様々な地面の傾斜角、着陸機の水平方向速度の大きさの場合について、着地運動の2次元および3次元数値シミュレーションを実施し、発生する着地時の衝撃、回転モーメント、転倒する/しないを評価した。その結果、着陸機の回転角速度の極性と着陸脚の延び縮み方向の極性に応じて4象現で減衰係数を高・低2段階に切り替えることにより、全てのケースにおいてパッシブ方式よりセミアクティブ方式が有利になることが確認できた。 さらに、これを実験的に検証するため、2脚の2次元着陸機モデルを作成し、平板斜面への落下試験を実施した。この結果、現実的な機体パラメータにおいて垂直落下させた場合、パッシブ制御では20degの斜面において全てのケースで転倒したが、セミアクティブ手法では多くのケースで転倒しないことが示された。 一方で、3次元のシミュレーションを実施したことにより、これまで検討していなかったロール軸回りの位相の影響が評価できるようになった。2次元の検討では、理論的に最悪条件となる位相のみを検討していたが、位相を制御できればさらに性能を上げることができること、4脚以外の場合への拡張が可能であることがわかった。研究協力者の前田孝雄氏はこれらの成果を博士論文にまとめ、平成27年3月に博士の学位を取得している。 また別途研究を行っていた荷重均等化滑車サスペンション機構を着陸脚に適用した場合、最初に着地する脚の剛性が弱く反対側の脚の剛性が強くなることから、提案するセミアクティブ制御方式と等価な効果が得られることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に予定していた、セミアクティブ着陸脚の試作と、3次元の着地数値シミュレーションは完了した。着陸脚の制御則については、探査機の姿勢角速度の極性と着陸脚の伸び縮み方向の極性のみに応じて切り替えることで、十分な転倒防止効果があることが示された。減衰係数は高・低の2段階の切り替えでよく複雑な演算は不要であること、磁性流体ダンパの応答速度である数msecは問題とならないことも確認された。 当初予定していなかった、着地時のロール軸回りの位相角の影響や、着陸脚数を4脚以外のN脚に拡張した場合の特性などについても知見を得ることができた。また、荷重均等化滑車サスペンション機構は、本研究のセミアクティブ制御と同等な効果を(最適ではないものの)パッシブな機構として実現できることが理論的、実験的に示された。 さらに、2次元簡易モデルではあるが、平成27年度に予定していた着地実験の一部を前倒しで実施した。3次元モデルの実験についても、模擬着陸機構体の作成と、火星表面特性を模擬した砂の購入、および砂を入れる模擬表面ケースの作成にとりかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、平成26年度に準備を開始している3次元落下実験モデルを完成させ、平板地面、川砂地面、火星模擬砂地面などへの落下実験を行う。着陸脚については、現在使用している磁性流体ダンパは大型であるため、実際の着陸機には適用可能であるが、地上で行う1/3(火星の場合)あるいは1/6(月の場合)スケールモデルにおいては大きすぎるため、小型のものを自作する、あるいは自動車用ブレーキ部品などを用いた減衰機構の検討を行う。制御則については、現状の2段階切り替え方式で十分に効果があることは示されているが、さらに高性能化する制御則がないか検討を行う。なお、平成26年度に行った予備的な2脚落下実験では、結果の各回毎のばらつきが大きく、また計算機シミュレーションとも完全には一致していない。これは落下装置に摩擦があり外乱が働くこと、ダンパ内部やリンク部での摩擦などが計算機シミュレーションではモデル化されていないことによる。平成27年度は、実験装置の再現性向上と、実際の着陸機に存在する要素について計算機シミュレーションでモデル化を行うことが必要である。 平成28年度は、平成27年度の実験結果をふまえ、着陸機構および実験装置の双方の改良研究を行う。また、他方式の着陸機構を研究している研究者、民生分野での衝撃吸収機構を研究している研究者、あるいはこのような機構を必要としているユーザとの情報交換を、学会などの場を用いて実施し、本研究の成果まとめと、成果の応用の促進を行う。
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Causes of Carryover |
物品費の購入の際、端数が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費の一部として使用する。(180円なので、単独で購入できる物品は無い。)
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Research Products
(8 results)