2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26420822
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
井関 俊夫 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (70212959)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 省エネルギー / 燃料消費量 / 地球温暖化ガス排出削減 / ベイズ波浪推定 / 離散ウェーブレット変換 / 多重解像度解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、船舶の省エネルギー運航を実現する操船支援システムの開発を目的とし、3つの具体的研究を行っている。平成27年度の研究実績は以下の通りである。 (1)船体動揺から波浪状況を推定する簡易計算法の確立:船体応答統計値の偶然的不確定性に基づく短期変動に関する研究成果を本年度初期に論文としてまとめ、日本航海学会論文集第132巻に掲載された。さらに、非定常時系列データ解析のために、離散型ウェーブレット変換を導入し、通常のフーリエ変換とは異なった知見が得られることをSTAB2015で発表した。さらに、離散型ウェーブレット変換に基づく多重解像度解析を船舶主機関の非定常な応答に適用し、燃料消費量削減のための操船支援情報として利用できることをANC2015で発表した。 (2)燃料消費量データベース構築のための模型実験法の開発:小型模型船に搭載するためのトルク計測システムを開発した。この方式は従来のシャフトの捩れ量からトルクを計算するものとは異なり、シャフトの「すべり量」からトルクを推定する全く新しい原理に基づいている。本研究では、ディファレンシャル・ギアと発電ブレーキの組合せによって、充分な精度でトルクを計測できる事を確認した。本発明は事業性の見通しが立たないので発明申請は行わず、その内容を学会で発表することとした。 (3)実船実験による燃料消費量データベースの有効性の検証:本学附属練習船汐路丸では燃料消費量(燃料流量計)の出力が計測システムに接続されていなかったため、昨年度において汐路丸共同利用プロジェクトと連携し、汐路丸の計測制御LANの構成機器の改修を行った。本年度においても調整中である。一方、デンマーク工科大学のニールセン准教授との共同研究で行っている、9,400TEU型コンテナ船による実船実験結果を論文にまとめ、第5回世界海事技術会議 (WMTC2015)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、本研究課題では、船舶の省エネルギー運航を実現する操船支援システムを開発するために3つの具体的目標を定めている。平成27年度におけるそれぞれの達成度は以下の通りである。 (1)船体動揺から波浪状況を推定する簡易計算法の確立: 船体動揺解析における偶然的不確定性の短期変動については、本課題の採択後、デンマーク工科大学のニールセン准教授との情報交換から検討を開始した項目であるが、本年度においてかなり進展し、WMTC2015においてその成果の一部を発表した。離散型ウェーブレット変換の導入については、多重解像度解析結果の利用法に着目し、フーリエ変換に基づくバンドパス・フィルタよりも非常に有益であることが分かった。この結果はPRADS2016で発表予定である。よって、本目標に関しては順調に進展しているといえる。 (2)燃料消費量データベース構築のための模型実験法の開発: 小型模型船に自航システムと本研究で開発した小型トルク計測システムを搭載し、水槽実験が可能な段階にまで進展している。最終年度である平成28年度において予定通り波浪中水槽実験を実施する予定である。 (3)実船実験による燃料消費量データベースの有効性の検証: 当初の予定では、本年度に燃料流量計信号をデジタルデータとして外部に取り出す方法を検討することになっていたが、共同利用プロジェクトとの連携により、汐路丸の計測制御LANシステムの改修が行われたため、当初の計画以上に進展しているといえる。さらに、デンマーク工科大学との共同研究により、実航海中の超大型コンテナ船のデータが取得可能になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)船体動揺から波浪状況を推定する簡易計算法の確立: 引き続き、偶然的不確定性の短期変動を考慮した計算アルゴリズムを開発し、推定精度の向上を行った上で計算法の簡略化を行う。さらに、離散型ウェーブレット変換と、その多変量時系列解析結果の利用法について、新しい提案を行う予定である。 (2)燃料消費量データベース構築のための模型実験法の開発: 模型船内で完結したエネルギー消費量計測システムならびに自航システムはほぼ完成したので、今後は波浪中水槽実験を行うのみである。オートパイロットシステムはワンボードマイコンとサーボモータを利用して独自に開発するが、水槽建屋内ではGPSが受信不可能であること、磁気方位は曳航電車の強電界の影響を受けること等の問題点を解決する予定である。 (3)実船実験による燃料消費量データベースの有効性の検証: 本年度までに汐路丸の計測制御LANシステムの改修が行われたため、今後、実験航海に参加し、動揺データと燃料消費量データの計測プログラムを作成する。
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