2014 Fiscal Year Research-status Report
実海域での運航を考慮した船体疲労強度設計のための設計海象・設計荷重に関する研究
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26420829
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
深澤 塔一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80143171)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 船体疲労強度 / 設計海象 / 応力頻度分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
船体疲労強度設計に設計海象という考え方を導入する場合,船体最終強度のように1つには定まらないため,複数の海象を設計海象として考慮しなければならない。したがって,本年度は,まず,疲労強度に有意であると考えられる短期海象をモデル海象として抽出するための準備作業を行った。 すなわち,Post-Panamaxコンテナ船を供試船として,北大西洋でこれまでに発生したすべての短期海象において,波浪の非線形性やスラミング衝撃,船体の弾性を考慮できる波浪中船体応答計算プログラムTSLAM を用い,短期海象の継続時間である3時間程度の船体応答シミュレーションを行い,船体構造応答を求めた。船体構造部位としては,強度的に重要であり,かつ比較的簡便に応力を計算することができる甲板の縦強度部材を対象とし,船体応答計算より得られた波浪中の縦曲げ応力の時系列に,部材における応力集中などを考慮して,その部材での変動応力の時系列を求め,約1000回程度の繰返し応力の時系列を得た。この変動応力時系列に対して,rain-flow法を用いて応力範囲のカウントを行い,この頻度分布をヒストグラムに作成した。得られたヒストグラムにWeibul分布近似を施し,短期海象を応力の発現頻度ごとに分類した。 得られた結果より,船体疲労強度に重要となると考えられる発現頻度の海象がある程度特定することができるので,これらをもとに,疲労強度に有意であると考えられるモデル短期海象を設定した。次年度以降は,これらのモデル海象を用いて,き裂伝播解析などを行い,き裂伝播挙動を特徴づけるパラメータについての考察を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の1年目で,疲労強度に重要となる設計海象のモデルが抽出できたので,以降,これをもとに,既存の解析手法等を駆使して,パラメータの検討を行うことができる。本研究の一番重要な土台ができたので,研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,まず,本年度設定したモデル海象において疲労き裂伝播シミュレーションを行い,それぞれの海象におけるき裂伝播挙動を特徴づけるパラメータの整理を行う。また,同じくマイナー則による疲労被害度の計算も行い,パラメータの比較を行う。これらより,疲労き裂伝播を特徴づけるパラメータを,より一般性のあるものとして,抽出する。 さらに,これらの疲労き裂伝播を特徴づけるパラメータを用いて長期予測を行い,長期にわたる疲労き裂伝播解析結果を整理する。この場合,船がどのような航路を取って,どの海域を航行するかが重要なポイントとなるが,これにはウェザールーティングや嵐モデルに関する知見を援用する。これらの長期予測結果を整理することによって,それぞれの短期海象における疲労き裂伝播に対する寄与度を組み合わせ,実海域での運航を考慮した船体疲労強度評価のための設計海象・設計荷重を提案する予定である。
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Causes of Carryover |
当初,「船体疲労強度設計法の精密化のための研究委員会」という勉強会を日本船舶海洋工学会に立ち上げる予定であったが,設置が遅れ,平成27年度に連れ込んだ。そのため,これの開催と出張に関する費用として見込んでいた約10万円が未使用額として残ってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述の「船体疲労強度設計法の精密化のための研究委員会」という勉強会を日本船舶海洋工学会に立ち上げることができたので,平成27年度に,これの開催と出張費として支出する予定である。
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