2014 Fiscal Year Research-status Report
船上排ガス浄化システムのための固体吸着剤に関する基礎研究
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26420836
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Research Institution | National Maritime Research Institute |
Principal Investigator |
高橋 千織 独立行政法人海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (40399530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安達 雅樹 独立行政法人海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (20415805)
安藤 裕友 独立行政法人海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (70462869)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Na系乾式脱硫剤 / 熱処理 / 結晶水 / NO2酸化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は、CO2の固体吸着剤に関する調査と、SO2の固体吸着剤(乾式脱硫剤)の試作、指定海域でのSOx規制が始まった欧州・北米を中心とした地域の湿式EGCS搭載実績について調査を行った。 CO2の固体吸着剤に関しては、舶用エンジンディーゼル排ガスの温度・成分範囲(特にCO2分圧と温度)で適用の可能性のある脱硫剤候補を選定した。また、乾式脱硫剤については消石灰およびソーダ系原料を用いて試作し、模擬排ガスによる予備の脱硫試験を行った。実験後の脱硫剤断面について電子顕微鏡観察を行った結果、SO2との反応領域は、消石灰では限定的なのに対し、ソーダ系では脱硫剤表面から約0.5mm程度までほぼ90%以上の反応率で均一に反応していた。この結果よりソーダ系原料を採用し、脱硫剤のサイズを1mm厚さにすることで、反応率の良好な脱硫剤ができると考え、直径約1mmの円柱状の脱硫剤と、壁厚が約1mmのハニカム状脱硫剤を試作した。これらの脱硫剤に対し、温度を180℃~250℃の範囲で変えて熱処理を行い、ガス温度200℃で再度脱硫試験を行った。この結果、以下のことがわかった。(1)同じ質量で比較した場合に、ハニカム状の脱硫剤より粒子状の脱硫剤の方が良かった。(2)熱処理温度によって脱硫率が変わり、220℃が最も良好であった。この結果は、X線回折分析による結果から結晶水の存在によると考えられた(220℃では脱硫基剤に含まれる結晶水がはっきりと残っていたが、250℃以上ではみられない)。(4)脱硫試験中のガス分析の結果から、脱硫剤とSO2ガスの反応には、NO2の酸化反応が関係しており、NO2がNO3へと転換することで、SO2と脱硫剤の反応が促進されるものと考えられた。 湿式EGCS搭載実績については、現在160隻程度が運航・受注されているが、特に装置のコンパクト化が課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脱硫に関しては、当初予定に比べかなり進んでおり、今まで一般的に使われてきているCa系脱硫剤に比べて反応率の高い脱硫剤の試作とその反応メカニズムについて検討が進んでいる。CO2吸着剤については、脱硫剤に比べて高価であり、かつ素材選定が実験システムの設計と関係するため、価格、使用温度、分圧、湿度などの条件調査を慎重に行った。このため、26年度は、予算を繰り越し、27年度に素材購入と実排ガス実験システムの製作のために使用する予定とした。
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Strategy for Future Research Activity |
実排ガスを用いての脱硫・脱CO2実験を行うため、要素試験とともにプロトタイプの実排ガス試験装置を製作し、実験を行う予定である。脱硫剤に関しては、反応率を向上させるための形態などが明らかとなってきたので、量産可能な製作方法を検討し、排ガス組成・温度条件を系統的に変えた実験が行えるようにする。CO2の吸着剤に関しては、吸着効率が不十分な場合には、CO2を一度ガス中にトラップするなどの前処理システムを検討する予定である。また、EGRへの利用効果をみるためガスボンベを利用したガス組成による模擬的なEGR効果の検討を行う予定である。 EGCS搭載シミュレーションについては、乾式脱硫・CO2吸着剤の実験結果から、内航船搭載を想定した検討を行う。
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Causes of Carryover |
脱硫剤は条件を変えた複数種類の試作を、原料を購入し自作で行った。また、CO2吸着剤に関しては、調査の結果、基剤の種類によって実排ガス試験装置の設計に直接関わる可能性があったため、原料の調達を先送りし、聞き取り調査などを行った。予定より試験装置の構成が複雑で、ガス成分計も精度が必要となると判断されたため、次年度に持ち越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
持ち越し分の予算については、製造条件が決まった脱硫剤の製造効率化のための金型制作費とCO2固体吸着剤の原料購入費とする。また、実排ガス試験装置(プロトタイプ)の作製については、NO2ガスの酸化反応が非常に大きかったため、排ガス計測装置の見直しを行い、必要であれば購入を検討する予定である。
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