2014 Fiscal Year Research-status Report
ケイ酸塩廃棄物及び未利用資源からの新規規則型細孔質環境浄化材料の創製
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26420845
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山崎 淳司 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70200649)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アルミノケイ酸塩ポリマー / ジオポリマー / 細孔質 / フライアッシュ / メタカオリン / シネレシス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主にフライアッシュ(石炭灰)およびメタカオリンを出発物質としてジオポリマー硬化体を調製し、(1)Si/Al比とアルカリ種による固相形成、および(2)シネレシスの調整による細孔形成の制御、について検討を行い、さらに(3)熱的安定性について調べた。その結果、今回の条件で作製したジオポリマーは、基本的に微粒子の結合・集積組織をなし、アルカリ種にKを用いた系ではSi/Al比が1.2~2.0の間で微細構造の構成粒子の径がμmからnmオーダーで変化し、微細化したものでは平均細孔径が約30nmであった。アルカリ種にNaを用いた系では、Kを用いた系に比べて構成粒子径が概して大きく、細孔分布の広がりも大きくなった。 また、ジオポリマーの形成において、シネレシスが細孔形成とそれに伴う微細構造の構成に大きな影響を与えることがわかった。すなわち、作製時の水量を増やすと固相と共有する水の領域が増え、シネレシスで脱水することにより約100 nm径の細孔形成によって多孔質化するが、逆に水量を減らすと粒子同士が凝着して構造が密になった。また、養生温度を低くして長時間養生すると、シネレシスが緩やかになって粒子同士が凝着しやすくなり、構造が緻密になった。ただし、水量を増やすとポリマー化が阻害され、ポリマーが本来持つ微細構造が形成されず、ゼオライト相が生成した。また、さらに酸処理等の2次処理を施すことによって、ポリマー構造を維持したまま1~2 nmのマイクロ孔が形成し、かつ比表面積が500 m2/g 以上の多孔質構造を形成することがわかった。 これらのジオポリマー試料は加熱処理実験によって、550 ℃以上ではポリマー構造中にアルカリイオンを含有すると溶融するが、酸処理物では800 ℃以上までポリマー構造が維持されて熱的安定性が上がり、1000 ℃以上でムライトと石英が結晶化することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フライアッシュ(石炭灰)および低品位メタカオリンなどのケイ酸塩原料を主原料として様々な条件(固相/水比、アルカリ/水比、Si/Al比、混合・混練条件、pH、養生条件(温度、時間)など)を設定してナノ細孔質ジオポリマーを作製し、その微細構造がおもに出発物質のSi/Al比とアルカリ種およびシネレシスの調整条件に大きく依存することを見出し、これによって、ジオポリマー物質のアルミノケイ酸塩ネットワークによる細孔構造・組織の形成機序を基本的に解明することができた。また、ジオポリマー物質について500℃以上の高温領域での熱的安定性と相変化機構についても基本的に明らかにできた。また、活性が大きく異なるJIS2種相当フライアッシュおよび市販の各種メタカオリンは、適当な酸・アルカリ処理、とくにポッドミル等により事前に表面改質処理を施すことによって反応活性の向上と安定化が図れることを見出した。本研究の基礎となる、廃棄物および未利用資源鉱物を出発物質とするナノ細孔質ジオポリマー(アルミノケイ酸塩ポリマー)の作製プロセス、および微細構造制御の因子が明らかになったことで、本研究の全目的の50%程度を達成したと判断している。 しかし、さらなる本研究の目的とする有害イオンの交換・固定や固体酸活性などの機能性の発現機構の解明と制御(調製)方法、ジオポリマー物質のSi/Al比の調整や交換性陽イオンを水素イオン交換する等により表面固体酸性(触媒活性)を付与することによる有害重金属化合物の分解・不溶化やVOCガスの触媒分解素材としての利用について検討については、まだ十分とは言えない。さらに、ジオポリマー物質および諸反応処理物の熱的挙動の解明、とくに1000 ℃以上での相変化挙動と溶解・溶出挙動を検討し、環境浄化システム構築の可能性の検討は、試料(作製条件)の選定の段階で未着手である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果を基に、有害イオンの交換・固定や固体酸活性などの機能性の発現機構の解明と制御(調製)方法、固体酸活性の付与、1000 ℃以上での相変化挙動と溶解・溶出挙動の検討を進めていく。 具体的にはまず、有害金属イオン種としてセシウム、ストロンチウム、バリウム、コバルト、鉛、亜鉛、銅などを選択し、0.1М程度の溶液中における吸着・固定(溶出)挙動、イオン交換選択性(選択係数)を検討し、さらに対応の可能性がある実排水について吸着カラム試験を行い、イオン交換・吸着・固定性能の評価を行う。また、粉砕した粒状ジオポリマーを酸処理またはアンモニウムイオン交換した後に加熱処理することで、基本構造の改質を行い、有機化合物やホルムアルデヒド等のVOCガスに対する低温接触分解性能の付与についての検討を行う。次に、適当なモールド形状のジオポリマーおよびプロトンイオン置換体の硬化体の粉砕、粒径調製物をカラムにセットし、模擬排水または模擬VOCガスに対する吸着性・透過性・触媒分解活性の試験を行い、有効性を検討する。必要に応じて、各種ゼオライトまたは粘土鉱物等との組み合わせで、多相複合材の試験体を試作し、建材・建設用素材としての基本特性と機能性発現について検討・評価を試みる。さらに、ジオポリマー物質および諸実験でイオン交換・吸着反応生成物については、1600 ℃までの各温度での相変化挙動と溶解・溶出挙動を検討し、ジオポリマー硬化体の加熱処理による結晶化や溶融処理等による有害物質の不溶化についての評価を行う。以上の検討によって、最終的には既に利用されているゼオライトや粘土鉱物等と比較して、環境浄化システムへの利用の有効性を検討する。 今後の研究について、計画の変更や研究を遂行する上での新たな課題は生じていない。
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Research Products
(3 results)