2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26420852
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永島 芳彦 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (90390632)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイアス / レイノルズ応力 / トカマク / 鋸歯状振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、基礎実験や核融合プラズマ実験など広範な規模の実験データ及び数値プラズマデータに適用可能な、プラズマ乱流中における局所乱流統計量の大規模構造との相関に関する知見を得るための、乱流プラズマデータ解析法の開発を目的とする。本研究の骨子は、網羅する空間スケールの異なる複数の揺動データを組み合わせ、片方のデータの確率密度関数に従ってもう一方のデータを条件付き平滑化・サンプリングし、乱流状態(スペクトル、確率密度関数、特に大偏差統計など)の規則・不規則な変動を明らかにする。 本年度は、基礎実験装置の多チャンネルプローブのさらなる整備とそのデータの解析を昨年に引き続き行った。遷移現象の制御のしやすさから、エンドプレートバイアス実験を中心に行うこととした。バイアス電圧のトリガータイミングで条件付き平滑化を行い、乱流レイノルズ応力のトリガー時の応答を観測した結果、半径5cmのプラズマ境界を境にレイノルズ応力の立ち上がり時間が異なることが見出された。同時に、浮遊電位の測定精度を高めるため、プローブに新規に静電シールドを施してリーク電流を減少させ、異なる空間点における浮遊電位情報の重畳をできるだけ抑制することに成功した。一方、本解析手法をトロイダルプラズマ実験解析に応用した。JFT-2Mトカマクにおいて、大域的な鋸歯状振動のタイミングに合わせて浮遊電位パルスが発生するが、浮遊電位パルスに重畳している浮遊電位揺動の振幅の時間変化を解析した。解析には、複数の鋸歯状振動イベントを条件付き平滑化によって重ね合わせて、ノイズレベルを低減した。その結果、鋸歯状振動発生直前と比較して浮遊電位パルス発生後には乱流浮遊電位揺動の振幅が増大する結果が得られ、鋸歯状振動時の周辺プラズマへの熱パルスによる乱流揺動の増大と矛盾しない結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究計画は3ステップを想定しており、第一に基礎実験プラズマにおける多チャンネル計測を基軸とした大域的輸送の条件付き平滑化の解析、第2に数値実験プラズマに本解析法を適用すること、第3に本手法をトロイダルプラズマに応用することである。 第一については、現在順調に進捗している。まず、本解析を本格的に実施するに当たり、多チャンネルプローブの空間分解能の精度検証を実施した。多チャンネルプローブに静電シールドを追加し、電極先端以外からのリーク電流による、異なる空間点の揺動信号の重畳レベルを実験で評価し、リーク電流が極めて小さいことが実測できた。この結果は、現在査読付き論文誌の速報記事に投稿中である。次に、確率過程の研究の前哨として、エンドプレートバイアス実験のように、外部電圧印加のタイミングが明確な実験条件において、条件付き平滑化を行い、乱流揺動の動的応答を解析した。その結果、プラズマ境界を境に乱流レイノルズ応力の動的応答の速度に違いが生じることが判明し、本成果は会議発表された。 一方、第2の課題に先んじて、第3の課題を先行して実施した。当初は最終年度に行う予定であったトロイダルプラズマに対する応用を行った。JFT-2Mトカマクでは安全係数分布に従い鋸歯状振動が発生する場合があるが、その時鋸歯状振動に同期した浮遊電位パルスが周辺で発生している。そして、浮遊電位パルスの前後で乱流揺動の振幅の変動を解析した結果、パルス発生後に有意に乱流揺動振幅の増大が観測された。このことは、鋸歯状振動時の周辺熱パルスが乱流振幅を増大させる可能性があることを示唆している。本研究は日本物理学会英文誌に掲載が決定した。 以上の成果から、最終年度に実施すべき課題について既に論文発表まで実施できたことは、本研究の進捗が予定よりも進んでいることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の研究計画は3ステップを想定しており、第一に基礎実験プラズマにおける多チャンネル計測を基軸とした大域的輸送の条件付き平滑化の解析、第2に数値実験プラズマに本解析法を適用すること、第3に本手法をトロイダルプラズマに応用することである。 第3については、研究が予想以上に進捗し、論文発表に至った。そこで、本年度は第1と第2の課題に注力する。第1については、多チャンネルプローブの測定精度を高めた点について、速報記事以外にフルペーパーにまとめる予定である。また、エンドプレートバイアス実験時の時間応答に関する成果については、投稿論文を執筆中である。また、確率過程の研究については、さらに適切な放電条件を探査して行く予定である。 一方、第2については、現在直線プラズマの数値実験結果が得られているが、軸方向対称性などの実験との整合性が取れない項目があり、数値実験プラズマを解析対象とするためにその問題の解決を図る。
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Causes of Carryover |
測定器の消耗品や電気回路部品の支出が想定よりも少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品について、破損を考慮して数の余裕を持って購入する。
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Research Products
(5 results)