2014 Fiscal Year Research-status Report
レーザー照射実験用高精度ダイヤモンドライクカーボン組成制御技術の開発
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26420853
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
古賀 麻由子 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40403969)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ダイヤモンドライクカーボン / 高速点火核融合 |
Outline of Annual Research Achievements |
高速点火核融合実験や電子加速実験など、高強度レーザーを用いた実験においてターゲットとしてダイヤモンドライクカーボン(DLC)が注目されてきている。DLCは水素含有量、結晶度といった組成パラメータが変わるとその性質が全く異なるため、正確なレーザー照射実験を行うためには、用いるターゲットの組成を制御する必要がある。しかしながらレーザー照射実験用ターゲットに要求される条件を満たしつつ、組成まで制御する技術はまだ確立されていない。そこで本研究ではDLCの組成制御技術を開発し、レーザー照射実験の要求を満たす高精度DLCターゲットを製作することを目的としている。本研究ではプラズマイオン注入成膜法と呼ばれる方法によりDLCを製作する。これは電極に基板を取り付け、直接負パルス電圧を印加して炭素イオンを注入する方法である。そのため、印加電圧、印加パルス長なども組成制御パラメータとなるのか確認する必要がある。平成26年度は成膜装置パラメータによるDLCの組成変化について調べた。印加電圧、印加パルス長などを変化させてDLC膜を作製し、吸収端近傍X線吸収微細構造法によりその性質を計測した。その結果、印加電圧や材料ガスによる組成変化は見られなかったが、トルエンを材料ガスとして使用し、パルス繰り返し周波数を1キロヘルツから2キロヘルツに増加させると、よりグラファイトライクなDLCが出来ている可能性を示唆するデータが得られた。この時炭素と水素の結合ピークも上昇しており、水素結合が増えたことでグラファイトライクな組成に変化したのではないかと考えられる。これは外部パラメータによる組成制御の可能性を示す重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
外部装置パラメータによるDLCの組成変化については研究を進めることができ、トルエン使用時に繰り返し周波数を上げることで通常の場合よりグラファイトライクなDLCが出来る可能性を見だした。しかしながら水素含有量計測は学外施設で行うために思うようにマシンタイムが得られず、有用なデータを得られなかった。これについては平成27年度中に、再度計測を行うことでデータを得たいと考えている。またプラズマパラメータ計測は装置改造の時間がとれずに実行できなかったが、平成27年度は行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に見出した組成変化について、再度ラマン計測でクロスチェックを行う。また水素含有量の計測を行う。分光法によるプラズマパラメータの計測を行う。研究結果を踏まえ、実際にレーザー照射実験用ターゲットを製作する。また製作したターゲットを用い、高出力レーザーによる照射実験を行う。ターゲットへのレーザー照射で発生した電子を電子スペクトロメータで、X線をX線フレーミングカメラ、X線ストリークカメラで計測する。
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Causes of Carryover |
計画時には中古の電子顕微鏡を購入する予定にしていたが、販売業者が動作保証出来ないとのことで安定した運用は出来ないと判断し、購入を断念した。代わりに新品でデジタルズーム顕微鏡制御ソフトを購入することとしたため、当初予定よりも物品費の支出が減少した。なおデジタルズーム顕微鏡を運用することにより研究への支障は最低限に抑えられた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
プラズマパラメータ測定のために装置を改造する費用としたい。また水素含有量の計測は当大学では行えないため、学外で計測を行うための旅費としたい。
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