2015 Fiscal Year Research-status Report
プラズマ熱パルスによるタングステン表面への熱流入過程と溶融・蒸発の効果
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26420855
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
高村 秀一 愛知工業大学, 工学部, 教授 (40023254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上杉 喜彦 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (90213339)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プラズマ・核融合 / タングステン / 溶融 / 蒸発 / ダイバータ / プラズマ運動量注入 / 重水素 / 希ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) プラズマ発生装置AIT-PIDの金沢大における整備: ヘリウムやアルゴン放電はもちろん、重水素放電高熱流プラズマの生成に成功し、現在標準的に稼働している。加えて、ネオン放電を行うことができ、高融点金属(タングステンとモリブデン)へのネオン照射効果を得ることができた。また、ややも不安定であったパルス電源トリガー系の安定化を実現した。 (2) 重水素プラズマ熱パルスによるタングステン表面へのプラズマ運動量注入の観測と理論構築: プラズマ熱パルスはプラズマ対向壁に熱負荷を与えるのみならず、運動量すなわち力も及ぼすことをタングステン箔を用いることで実験上定量的に示した。固体壁ではその効果は限定的であるが、溶融表面の場合には全く異なることも指摘した。更に昨年までに明らかにしたパワー伝達係数に加えて、プラズマ運動量注入の定式化を行い、新しい物理量である、運動量反射係数を定義した。運動量の定量化には片持ち梁の理論を用い、また実験的にはダイヤルテンションゲージを用いた評価を行った。更にはこの運動量注入に続くタングステン箔の振動現象も観測し、その周期を片持ち梁のダイナミクスと比較した。 (3) 高融点金属への希ガスプラズマの効果: ダイバータ表面には熱負荷のみではなく、新たな損傷前駆過程があることを明らかにした。それは希ガスプラズマによる高融点金属表面における皺構造の出現である。発生原因を座屈モデルと比較している。 (4) タングステンのヘリウム照射効果の一つである、繊維状ナノ構造形成の物理機構の解明: 繊維状ナノ構造形成過程の先躯体としてループ構造があることを提唱、さらにヘリウム原子内蔵する金属の剛性率と金属内のヘリウムの移動性の二つの観点から種々の高融点金属におけるナノ構造形成を統一的に論じた。国際誌Applied Surface Scienceの論文として公表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的は「プラズマ熱負荷に力点を置き、タングステン材料表面からの電子放出に注目し、ヘリウム損傷やタングステン製造法の相違の影響を勘案しつつ、静的には熱伝達係数のシース電圧依存性の理論構築と実験遂行を、また動的には重水素プラズマのパルス熱負荷応答をシース電圧の時間変化に注意を払いつつ溶融に近い3000 ℃以上の昇温に至る素過程を、更には高速カメラで得られた蒸発タングステンの時空パターンからPWIに及ぼす反作用や溶融に及ぼす効果等を学術的に明らかにする。」である。既にパワー伝達係数の実測と理論に関してはそれぞれ国際誌Journal of Nuclear Materialsと同Contributions to Plasma Physicsで公表した、並びに溶融に迫るタングステンへのパルス熱負荷効果に関しては、国際誌Nuclear Fusionの論文として発表済みであり、、元来の目的の80%以上得られたのではないかと自己評価している。加えてプラズマ熱パルスのタングステン板への反作用(運動量注入)の実測と理論定式化や、原型炉で周辺プラズマ冷却に必須の希ガスプラズマの効果としての高融点金属表面における微細皺構造の出現も本研究の成果と位置づけしたい。加えて、高温タングステン表面の放射冷却にて重要な全放射率への繊維状ナノ構造の影響も定量的に明らかにした。得られた成果をさらに発展させ、次の新しい段階に研究を飛躍的に持ち上げ、ITERに代表される核融合研究において、基礎的観点から先取りする研究、すなわち、タングステンの融点を十分超える昇温を実現し、この場合のプラズマ-壁相互作用を基礎過程から明らかにする。例えば、タングステンのプラズマ中への異常浸透過程や蒸気遮蔽効果の解明など。このように当初の目的を超えて新しい段階に進める素地ができたため、上記の達成度の評価を行った次第である
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 重水素プラズマ熱パルスに対する高融点金属表面の応答: 既設パルス電源によりパルス幅50ms以下、100kWの追パワー投入が可能であり、背景の定常プラズマ放電も放電電流として2倍まで可能である。このようにして、タングステンのみならず種々の厚みの他の金属箔で融点をはるかに超える状況を実現し、溶融表面形態観察やその飛散の様子を運動量注入の観点から明らかにする。 (2) 熱パルス発生法として、対向陰極法と放電陰極法の2通りを比較し、最適化を図る。 (3) パルスプラズマのパラメータ評価を三探針等を用いて明らかにする。 (4) パルス印加陰極と容器壁間のアーク放電を確実に避ける方策を安全抵抗挿入以外に模索する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に投稿した論文のうち2編については投稿料が不要であった。年度末に近かったためため、その一部が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度予算は金額も多くなく、物品費、旅費が十分でない可能性があるので、その補填に有効活用したい。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Molecular dynamics and Monte Carlo hybrid simulation for fuzzy tungsten nanostructure formation2015
Author(s)
A.M. Ito, A. Takamyama, Y. Oda, T. Tamura, R. Kobayashi, T. Hattori, S. Ogata, N. Ohno, S. Kajita, M. Yajima, Y. Nojiri, Y. Yoshimoto, S. Saito, S. Takamura, T. Murashima, M. Miyamoto, H. Nakamura
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Journal Title
Nuclear Fusion
Volume: 55
Pages: 073013(11p)
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Hybrid simulation research on formation mechanism of tungsten nanostructure induced by helium plasma irradiation2015
Author(s)
A.M. Ito, A. Takamyama, Y. Oda, T. Tamura, R. Kobayashi, T. Hattori, S. Ogata, N. Ohno, S. Kajita, M. Yajima, Y. Nojiri, Y. Yoshimoto, S. Saito, S. Takamura, T. Murashima, M. Miyamoto, H. Nakamura
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Journal Title
Journal of Nuclear Materials
Volume: 463
Pages: 109-115
DOI
Peer Reviewed
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